和泉歌夜(いずみ かや)

自由きままに物語を書いています。

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『最強姉妹の末っ子』第15話

「よし、そうと決まれば……」  ティーロはそう言って、三つあるうちの左側のソファをどかした。  床に金庫みたいなドアがあり、彼はギィと若干きしむ音を立てながら開けた。  中は薄っすらとハシゴが見えた。  これを見て、私はなぜ不自然にソファが多く配置されているのか、分かった。  この扉を隠すためだったんだ。 「どこに続いているの?」  私がティーロに聞くと、彼は「城の中までだ」と言って降り始めた。 「城の中? なんで、そんな所まで続いているの?」 「地道に掘っていったんです。い

    • 【お題:放課後ランプ】我ら、学校放課後お助け隊!

       よいか、諸君。  我々『学校放課後お助け隊』を数年やってきた訳だが、ある問題点を抱えていた。  何度も警察を呼ばれてしまう事だ。  確かに平均年齢46歳のおじさんが小学校や中学校に上がり込んで、告白や課題の手伝いをしたりするのは、傍から見たら不審者だ。  そこでこのランプを導入した。  名付けて……放課後ランプ!  これさえあれば助けが必要になった時にランプが光……むっ?! もう光った!  よーし、夜も遅いからしっかり防寒はしてくれ。  くれぐれも依頼人に暴漢だけはするなよ

      • 『最強姉妹の末っ子』第14話

         人混みを掻き分けて、また路地裏に入っていく。  奥に進むと、そこら辺に転がっていそうな空き箱が山積みになっていた。  ティーマスはそれを一個一個丁寧にどかしていた。  時間短縮のため、私もロリンもティーナも一緒に協力すると、入り口が現れた。  金庫みたいに小さくて頑丈そうな扉だった。  ティーマスがドンドンと強めにドアをノックすると、「誰だ」とたくましい声が聞こえた。 「俺だ。ティーマスだ」  剣士がそう言うと、「合言葉を」と返ってきた。 「人形と職人に永劫の平安を」  こ

        • 【お題:真夜中万華鏡】万華鏡ワールド

           深夜3時に万華鏡を覗くと、不思議な世界に連れて行かれる。  そんな都市伝説を僕は半信半疑でやってみた。  たまたま部屋にあった万華鏡の中を覗き込んでみると、僕の身体が吸い込まれるような感覚がした。  気がつけば、周囲がきらびやかになった。  赤、青、黄、緑の妖精達が僕の周囲をまわりながら歌を歌ってくれた。  歩く度に世界は変わっていった。  最初は砂漠だと思っていたが、一歩進むと都会になったり、もう一歩進むとジャングルになったりと目まぐるしく変わっていった。  僕は何だか気

        『最強姉妹の末っ子』第15話

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        • 最強姉妹の末っ子
          15本
        • 企画に参加した作品
          178本
        • 作品
          1本
        • ボカロにしたい曲を自分で作詞した
          292本
        • 【週刊少年マガジン】漫画原作応募作品
          0本
        • 恋愛小説部門応募作品【創作大賞2023】
          0本

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          『最強姉妹の末っ子』第13話

          「ぎゃああむぶぶぶぶ!!」 「シーー!!」  私が悲鳴を上げようとした所、ロリンに無理矢理口をふさがれてしまった。  そのちょうどに、魔機達が首なしボディの所に集まっていた。  何かを観察するようにジロジロと見た後、周囲を確認していた。  どうやら頭を探しているらしい。  見たくないけど、チラッと女の子の方を確認してみた。  小麦色の三つ編みをした可愛らしい顔立ちをしていて、ここの国民と同じく口元に黒い線があった。  もしこれが生首じゃなかったら、もっと魅力的に見えていたと思

          『最強姉妹の末っ子』第13話

          【#青ブラ文学部】永久欠番のあなたへ最高の名誉を

          永久欠番のあなたへ  あなたが私達に与えてくれた恩恵は計り知れません。  まず、人をぶん殴る事以外使い道がないと思われた木の棒をバッドという魅力的な道具にしてくれました。  次に水分補給や防具ぐらいしか価値の無かったヤシの実をボールという画期的な使い道がある事も教えてくれました。  他部族との抗争に疲弊しきっていた我々に野球という刺激的なスポーツを教えてくれたあなたに我々から永久欠番の名誉を送ります。  本当にありがとうございます。 かなり秘境にある村の村長より P.S

          【#青ブラ文学部】永久欠番のあなたへ最高の名誉を

          『最強姉妹の末っ子』第12話

           あんなに重たそうに背負っていたロリンのリュックがいつの間にか片手で持ち上げられるくらい軽くなっていた。  チラッと中身を見たが、空の瓶でいっぱいだった。  はたしてピグマリーオに着くまで持つかどうか不安だ。  辺りが明るくなったおかげで、周囲の景色を確認する事ができた。  出発する前は緑豊かな草原だったのが、いつの間にか枯れ木が多くなっていた。  不毛の地――とでも言うのだろうか、雑草一本すらも生えていない。  さらに不思議な事に、動物らしき声も聞こえなかった。  鳥のチュ

          『最強姉妹の末っ子』第12話

          『最強姉妹の末っ子』第11話

           まるでサウナにいるかのような室内に、なぜロリンが水着着用を強要させたのか、よく分かった。  カタカタ揺れているけど、動いているのかな?  私がキョロキョロ辺りを見渡すと、座席の後ろに窓があった。  入ってくる時に前の操縦席に気を取られて気づかなかった。  こんなに暑いのに割れたりしないのは、かなり分厚くしているのだろう。  だけど、曇ったりはせず外の景色はくっきりと見えた。  草花が見えたとかと思えば一瞬で遠くなっていった。  凄い、馬がなくてもちゃんと走れている。 「でも

          『最強姉妹の末っ子』第11話

          『最強姉妹の末っ子』第10話

           道標を失った私達は亡霊のように彷徨った。  いや、真っ直ぐに進んでいるけど、あの装置があるのとないのとでは、心理的な負担が全然違っていた。  覚悟を決めて転移ポーションを食べようかと話し合ったけれど、やはりムーニーと三ツ頭のドラゴンが気になって、徒歩を選ばざるを得なかった。  出来れば、戦闘は避けたかったからだ。  けど、どっちみち探してくるだろうから、奴が次なる手を準備する前に息の根を止めた方がいいのでは……いや、あのドラゴンを倒さない限り、ムーニーを仕留める事はできない

          『最強姉妹の末っ子』第10話

          【#シロクマ文芸部】大好きな子供の日

          子どもの日が大すきです。 その日はかならず、パパとママとおとうととおにぃちゃんと、みんなでゆうえんちにいきます。 ジェットコースターにのったりアイスクリームをたべたりします。 よるはパーティーをひらいて プレゼントをもらったり ケーキをたべたり 人生げーむであそびます。 いつもぼくがゆうしょうしちゃってつまんないけど、まけるよりはずっといいです。 子どもの日は、とてもとてもたのしくて、えいえんにつづけばいいのにとおもいました。 今は子供の日は嫌いだ。 両親は毎日喧嘩ばかりで

          【#シロクマ文芸部】大好きな子供の日

          『最強姉妹の末っ子』第9話

           なんて事を思って歩いていると、突然目の前にまた三ツ頭のドラゴンが前に立ち憚った。  え? なんで居場所がバレたの?  目をパチクリさせながら振り返ると、私達が歩いてきた道の後ろから魔機達が走ってきていた。  先頭に狼の魔物がいることを考えると、匂いで私とロリンの居場所を突止めたらしい。  クソッ、匂いまでは透明化できなかったか。  私が舌打ちをするご、ムーニーが「末っ子ぉおおおお!!!」と悲痛な声で叫んでいた。 「お前……うぅ……お前ぇぇぇ!!」  なぜか声が上擦っていた。

          『最強姉妹の末っ子』第9話

          【お題:トラネキサム酸笑顔】スマイル治療

           はぁ……はぁ……クソッ、撃たれてしまった。  すごい腹から血が……い、急いで救護班の所へ行かないと。  お、おぉっ! ちょうど良い所に!  頼む! 腹から弾丸を取り除いて縫ってくれ!  ……おい、どうした? なぜ満面の笑みで俺を見ているんだ。  なに? スマイル治療だと?  馬鹿野郎! 笑顔を見せるだけで傷口がふさがるか!  はぁ、はぁ……早く……し、止血剤を……わ、綿でもいいから早く!  お前、まだ笑っているのか!  いい加減……なに? 全部棄てた?  嘘だろ、なんで……

          【お題:トラネキサム酸笑顔】スマイル治療

          『最強姉妹の末っ子』第8話

           なんか変な旅立ちになってしまったが、兎にも角にも愛しの王子様を助けるため、私とロリンは草原を進んだ。  春の穏やかな気候だからか、小さくて可愛らしい花達が咲いていた。  そこら中に咲き乱れているというよりは、赤い花だったらその色限定が集まって群生している感じ。  まるで一つ一つが独自の街でも出来ているかのようだ。  青く茂っている草が境界かな?  彼らはどんな話をしているのだろう。  きっと隣の黄色の花がたくましくてタイプ……なーんてね……うーん、何だか詩人になった気分だ。

          『最強姉妹の末っ子』第8話

          【お題:ラムネ炭酸寝顔】路上ライブで披露する曲の音源テープ

          今日も私は早起きだ 隣にいるあなたの寝顔が見たいから アラームをこっそり消して いつまでも眺めていたい 淡く弾け飛ぶ シュワッとした炭酸みたいに ラムネみたいに爽やかな恋が…… はぁ〜〜〜〜〜〜!!!! よいとこさ! よいとこさ! べベン ベンベン べベン ベンベン はぁ〜〜〜〜〜〜!!!! よいとこさ! よいとこさ! べベン ベンベン べベン ベンベン 鹿が歩けば屍があるさ だけど、世の中そんにゃ 甘かねぇ 癖だらけの糞だらけ そんな時にオススメなのが 温泉だはぁ

          【お題:ラムネ炭酸寝顔】路上ライブで披露する曲の音源テープ

          『最強姉妹の末っ子』第7話

           私は待っている間、旅立つ準備の最終確認をした。  携帯食料とナイフとお金と着替え。  鞄は動きやすいポシェットに入れて首から掛ければ……うん、見た目は完全にピクニックに行くような感覚だけど、万が一戦いがおきてもいいように身軽な格好が一番だよね。  私は満足した様子で頷いたとほぼ同時に「できたー!」とロリンの声が聞こえた。 「何ができたの?」  私が駆け寄ると、机の上にピニーと同じ三角帽子を被った小人が乗っかっていた。  まつ毛が他より長いから女の子だろうか。  あれ? ピニ

          『最強姉妹の末っ子』第7話

          【#青ブラ文学部】かつて俳優だった男の話

           どうもどうも。  相席、大丈夫ですか?  どうもありがとう……あ、私はバーボンをロックで……えぇ、ツマミは適当にみつくろってください。  どうも……いや、なぜこんなにガランとしていくらでも席が空いている状態なのに、あなたと相席をしたかと言いますとね……こちらを見せたかったんです。  どうです? 綺麗でしょう。  一見、手の平サイズの小さい宝箱の置き物と思いますよね……ですが、フタを開けると……ほら、聞こえてきたでしょう。  そうです。オルゴールです。  まるで、天使が囁いて

          【#青ブラ文学部】かつて俳優だった男の話