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ジャニーズ問題の何が問題か(3)


(1)ジャニーズはなぜ権力を持てたか。

 柳瀬 博一くんが、週刊朝日の表紙でジャニーズを使っていたことの理由を分析していて面白い。本文の中身は高齢者中心なのに、ジャニーズを表紙にすることで20代以下の女性の購読者が増えているのだ。表紙だけで部数が稼げるなら、出版社の営業も表紙にジャニーズ使うことを編集部にブッシュするだろう。

 一時期書店の雑誌売場で並んでいる雑誌がジャニーズばっかりで異常だった。雑誌の本文はプロマイドのおまけなのか。それを受け入れる編集者の矜持とは。

メディアの話。ジャニー喜多川と週刊朝日とAERAの表紙と国連と。/柳瀬 博一

(2)80年代バブルで何が起きたか

 のんちゃこと能年玲奈さんがレプロエンタテインメントを辞めたことで業界から干されていたのを見かねて、Speedy社の福田淳さんが面倒を見ることになった。福田さんはソニーピクチャーズでハリウッドの芸能界と仕事をしていたので、日本の古臭い興行師の世界で、タレントの人格を無視した横暴さに違和感を感じていた。テレビ局の現場からは「のんちゃん」を使いたいとオファーがあるのだが、上層部に企画があがると没になる。番組制作の現場では「のんちゃん」の魅力を理解しているが、政治的な判断で番組が作れないという。

 福田さんの話ではテレビ局の制作現場では一生懸命に良い作品を作ろうとしているのは昔も今も変わらない。ただ、80年代バブルの時代に、トレンディドラマが大流行して、脚本より人気タレントをキャスティングすれば番組はヒットするという方程式が確立してしまった。そのことによって、売れっ子のタレントを抱えている芸能プロダクションの権力がどんどん強くなったのだ、と。

 芸能事務所の有力度ランキングというのがある。

芸能事務所.com

 1位はバーニングプロダクション。2位は ジャニーズ事務所。3位は吉本興業。4位はホリプロ。5位はアミューズ。6位はエイベックス。7位はワタナベエンターテインメント。8位は オスカープロモーション。9位は スターダストプロモーション。10位はケイダッシュである。

 レプロエンタテインメントはバーニングの傘下になる。

 80年代以前は、テレビの制作は、企画と台本が中心にあり、その企画にあったキャスティングをしていたのだと思う。それが80年代バブルで、視聴率を取れるのは内容よりもキャスティングだという流れが起きたのではないか。それに合わせて有力タレントを抱えているプロダクションの権力が強まったのではないか。

 週刊朝日のジャーニーズ表紙のようなキャスティングが横行したのだと思う。タレントや芸人に興味のない私は、テレビ視聴から遠ざかっていった。

(3)出版社の80年代

 出版業界にも同じような流れが80年代に起きた。バブルまでの出版業界は、豪傑のような編集者がたくさんいて、自分の企画を押し通していた。優れた作家はだいたい簡単に原稿を書いてくれない。簡単になんか書けないのが文章である。編集者が惚れ込んだ作家には何度も何度も家に押しかけて原稿依頼をする。締め切りを守らない作家に、粘り強く付き合って原稿を書かせる。

 それが80年代バブルで大きく変わった。出版社が数値主義になった。それまで、それぞれの出版社は社風があって、自分のところで出す作家のトーンが決まっていた。しかし「売れた作家が正しい作家」になって、売れる作家に出版社が殺到する。良い編集者は、以前は、自分の出版社らしい本を出す作家を見つけてくることだったが、売れればそれが良い編集者になった。原稿締め切りを守らない作家は、切り捨てられた。

 書店の書棚にはたくさんの種類の書籍が並ぶようになったが、おなじような顔ぶれと、売れてる企画の二番煎じが多すぎるような気がする。

 テレビも出版も、80年代バブル以前の気持ちに戻って、新しいテレビ文化、出版文化を目指さないといけないのではないか。

(4)カレンダー問題

 出版業界でカレンダーは隠れたヒット商品である。季節商品なので売れる時期は限られるが、利益率は高い。そしてジャニーズである。ジャニーズファンであれば、暦が過ぎていても、写真欲しさに買うのではないか。

 これから次のような出版社が続々とカレンダーを発売する。アイドルごとに出版社を変えて、出版社への影響力を高めてきたのだろう。定価はすべて同じである。企業やテレビ局にジャニーズの起用を問うジャーナリストは、出版社のこうしたビジネスモデルにどう問いかけていくのだろうか。




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