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劇団 短距離男道ミサイル改め「MICHInoX(ミチノークス)」の本田です。
先日、2024年5月1日付けで、ついに劇団名が変わりました!

私たちは、震災直後の混乱のなか、パフォーマンスユニット「短距離男道ミサイル」として産声をあげたチームです。
(まさか、この劇団名で丸13年も続けることになるとは、当時の私は全く思っていませんでしたが・・・。)

この「男道ミサイル」という名称は、様々な方に応援していただき、愛して頂いていた名前です。
しかし、東北を代表する劇団として、より広く、より様々な方にお芝居を届け、笑顔になってもらえるチームとして相応しい名前かといえば・・・そうは言えない状況が増えてきていたのでした。

たとえば、地元のローカル局では「昨日、北朝鮮が撃っちゃったんで(劇団名)伏せてもらっていいですか?」と言われました。
海外の演劇プロデューサーからは「君たち面白かったし、呼びたいんだけど・・・名前がちょっとね・・・」と言われました。

そこで先日、結成記念日である4月30日を持って、この「短距離男道ミサイル」という名前とはお別れをし、より力強く、より幅広く活動していくために「MICHInoX」という名前に生まれ変わったのです。

今日は、この新しい劇団名について、少し書いてみようと思います。

もちろんお察しのことだと思いますが、まずは「みちのく」のチームであることが表現されています。
東北に根ざし、東北でしか作れない作品づくりを掲げて活動してきました。
「道の奥」とは中央の視点から見た呼び名ではないか?というご意見もあるかもしれませんが、私はこの「みちのく」という言葉に、どんな人間をも包み込んでくれる包容力のようなものを感じます。また、道の奥に何があるんだろうという期待感も感じます。
舞台芸術の世界は、まだ知らない道の奥へと進んでいくことに似ていると、そんな気もしております。

MICHInoXには「未知のX」という意味もあります。
数学では変数を表す文字としてXが使われます。「わからないこと」をわからないままに数式のなかに表現したことで、数学は劇的な進歩を遂げました。
舞台表現には無限の可能性があると信じています。まだわからぬ未知のXを作品創作に取り込み続けることで、まだ誰も見たことのない新しい景色を東北から創り出したい、そんな精神も込められています。

そして最後に、「みちのくのX」つまり「東北のポテンシャル」と考えても良いのかなと思っています。
私自身は新潟出身なので、厳密には東北出身者ではないのですが(大学進学と共に仙台に引っ越しました)東日本大震災を経験し、東北の文化や人、歴史に触れてきたことで、東北の可能性をとても感じています。

確かに、東北は決して恵まれた土地ではないです。
それは歴史を見ても明らかです。

また、東北ツアーを巡ることで、東北の豊かさや美しさだけでなく、それが失われようとしているのだということも肌身に感じます。
東北地方では、消滅可能性自治体が全国最多の165自治体にのぼります。
実際にツアーで巡ったことのある土地の中には、とても逼迫した状況にある場所もあります。(もちろん、これは東北に限ったことでなく、全国的に必ずこの20年~30年の間に目に見える形で衰退していくだろうことは自明です。)

そんななかで、何を次世代に残していけるのかと考えたときに、文化や歴史、芸術の力こそが重要ではないでしょうか。
東北地方には、豊かな伝統芸能や郷土芸能があります。
古いものではアテルイや田村麻呂のような古代から受け継がれてきたものもあります。
素晴らしい芸術は時を越えていく、ということです。

この豊かな文化や歴史を尊重し、様々な形で受け継ぎ、語り継いでいくことが、僕たちのような現代演劇を創っているチームにおいても、非常に大切な観点であると感じています。
むしろ、演劇という刹那の時間を共有する芸術であるからこそ、より重要なのだとも思うのです。

また、仙台の演劇界を例にとれば、80年代や90年代を振り返っても、非常に活発で活気に溢れた小劇場活動がありました。
今、現在の小劇場シーンに、そのエネルギーが受け継がれているかと問われれば、はっきり言って、世代間でほぼ完全に断裂していました。これは本当にもったいないことです。

今こそ、世代間の繋がりを強固にし、さらには活動分野の壁を乗り越え、
自分たちの地元の演劇、芸能、文化、芸術、エンターテイメント、これからもこの土地で、次世代に残していくべきもののために力を合わせる時なのだと思うのです。
(ここ最近になって、仙台の大先輩たちや若手と一緒に活動する機会が増えてきており、それはとても希望を持てることだと思っています。)
そして、MICHInoXが、東北において最も活発な演劇集団として、その先頭に立ち、日本中、世界中で力強く活動を展開していくのだという覚悟を改めているところです。
その先に必ず、東北の可能性は劈かれると信じています。

経清Xのツアーに際して、仙台演劇の父であり、10-BOX二代目工房長である八巻さんが力強く「東北は負けない。絶対に負けない。」と熱い言葉を掛けてくださったのが忘れられません。
東北は古代から現代に至るまで敗北の歴史を重ねてきましたが、それでも「絶対に負けることはない」のだという精神こそが、中央から畏れられ、かつて「蝦夷」といわれた東北地方の人々の精髄なのだと感じます。

ところで「蝦夷」とは元々「辺境の勇者」という意味であったという説があります。
「蝦夷」の志を持って、我々も決して諦めずに戦っていきたいと願います。
また、一方で、敗北した人々、傷つけられた人々、どうしようもなく逃げ込んできた人々、そんな人々を受け入れ、包み込んできたのも「みちのく」であると思います。

この「負けない土地」としてのポテンシャルを持って、「どこにも負けない演劇作品」を創作し、届けていくこと。
そんな願いを新たな「MICHInoX」という名前に託し、より一層、演劇の道に邁進して参ります。

皆様、ぜひMICHInoXに御期待頂ければ幸いです。
今後とも、宜しくお願い致します。

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