『取り戻しつつある五感が教えてくれる』
窓を開けると雨のにおいがするとか、季節のにおいや気配がしてぞくぞくするとか。
あの感じをちゃんと覚えていた。わたしの五感は少しずつ息を吹き返している。
「母ちゃん、お外の風気持ちいいなあ」
ソファ横の窓を少し開けると、いつもまるはそこに来て、網戸越しに風や鳥や人の声に耳をそばだてる。
心地よさそうに目を細めたり、その場でごろんとくつろいだり。
たまに目先の電線にとまった鳥にクラッキングしたりもするけれど。
「気持ちいい?よかったねえ。わたしは今から顔面工事するからねぇ」
「