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事の発端

彼はゴム成形機の前で迷っていた。「やることは全部やった。余った時間をどうしよう」2017年頃か、妻の強い意向で、彼は自宅から歩いて通え、かつ男ばかりの職場ということで地元のゴム成形工場のアルバイトをしていた。慣れた仕事とはいえ、真面目な彼は少しのスキマ時間もサボらずに暇さえあれば、次の仕事の準備、それも終われば材料や道具の整理整頓、それも終われば汚れた機械をウエスでひたすら拭いてピカピカにしようと虚しい労力を払っていた。しかしある日あまりに時間が余り何もすることがなくなってしまった。彼は機械の前に立ちすくみ考えた。どうしよう何もすべきことがない。それで彼は空想を始めた。円を素数で等間隔に分割していくと、分割線は決して重ならない。二分割すると円周の真ん中に線が、3分割すると左右対称両側に分割線が、5分割すると、7分割すると…そして出来た左右対称の分割線のパターンを眺めながら、色々考え始めたら止まらなくなって今に至る。工場の昼休みには作業台の上に置いたダンボールに、取り憑かれたようにひたすら色々な計算をしていた。p進数、ファレイ数列とゼータ関数、ボーア仮説から量子論、ローレンツ変換と四元数、ベクトルポテンシャル、相対論と興味が拡がっていき『一般ゲージ理論と共変解析力学』という本を辞書代わりに色々考え中。でも最近昼休み寝ないとやっていけないので、全然進んでいない。時間方向の電磁気力が、重力と等価かどうか誰か教えてください…

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