不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

最近の記事

シシテル #魍魎

「狭間が……開いた…」 初老の男が驚きのあまり帽子を深く被り直しながら口をぽかんと開けている。 一葉「癒鬼…もう大丈夫…」 僕は背後にあるその闇に気付かなかった。 僕の背後から足音が聞こえる。 鉄と地面が擦れ合うような音が… その音に驚き振り返ると武装した一体の髪の長い鬼が癒鬼に視線を向ける。 鬼「癒鬼……貴様が名付け親か…」 一葉「えっ…鬼?」 鬼「ん?鬼とわかっているだろうに…なんだその顔は…まさか、魍魎道を初めて開いたのか?あぁ〜そうか…確かにお前とは会

    • 僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来③

      茂庭「上…どうしてここに…」 八咫「どうしてって…この状況…カミツカミにとっては最高の景色だと思うがね。ったく高みの見物決め込もうとしたらお前がこの有様…あの狭間の鬼たちはどうしたんだ?」 茂庭の心臓に痛みが走った。 それは心臓という心に干渉する痛みだ。 茂庭「何故ここに上がいるのかと…聞いているんだ…」 八咫は上目遣いで茂庭を見下ろしながら言った。 八咫「内通者がいる…とだけ言っておこう。」 その言葉を聞いた瞬間、茂庭の肩はがくりと落ち高嶺を抱きしめた腕が脱力し

      • シシテル #別世

        「おはよう。一葉君…」 絶句した…言葉が一切出てこない。 体が硬直し今まで体験したことがない金縛りに合っているような感覚を覚えた。 一葉「な…なんで…」 「私がここにいちゃ悪いのかな。」 初老の男性はワイシャツの襟元に人差し指を入れボタンを外したのちにネクタイを緩め口を開いた。 「単刀直入に言おう…私がこのエリアの担当でね…君のお母さんとお父さんを導いたものだ。あの世へね。」 初老の男性は話を続ける。 「双葉君も一緒にと思ったんだがどうやら君は一族の"それ"を継

        • シシテル #来会

          僕はポストの内側から見える得体の知れないものに絶叫した。 それはガタガタと歯を鳴らしながらペチャペチャと涎を垂らしながら音を立てている。 一葉「あ…あああ……」 玄関の向こうで初老の男性の声が聞こえた。 「何も怖がらせることはないのだよ。あーこれは酷い。漏らしておる。あんまりやりすぎるなとあれほど忠告しただろうに。」 うるると声にならない声を上げてその得体の知れないものは玄関先の見えない声のもとに去っていった。 「驚かせてすまないね。私は茂庭双葉君を迎えにきたものだ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来②

          あれからどれほどの時が経っただろうか… 僕は彼女と初めての唇を交わしている。 嬉しくて…切なくて…脆くて…暖かくて… その全てが僕と恭子の中を駆け巡る。 茂庭「大丈夫だ…恭子…」 泣き喚く恭子の姿に胸が痛む。 恭子「いや…いや…嫌…」 茂庭「僕はどこにも行かないさ…恭子の千里眼がそう見せたとしても僕は死なない。」 恭子「嘘…だって今まで一度だってこの力は未来を変えられたことがないもの。」 茂庭「それは嘘だ。」 恭子の流す涙を僕は親指で拭いとる。 茂庭「そう

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来②

          シシテル #彎曲

          自宅に帰ると母は無言で夕食の支度をし、父はテレビのリモコンと湯呑みを握りながら少し空いたカーテンの隙間をじっと見つめている。 一葉「お母さん、お父さん、ただいま。」 この後に続く言葉が返ってこなかった。 こんな日々がもう1ヶ月は続いている。 僕も黙って夕食の支度をして僕だけが大きなテーブルに一人で座りご飯を残さず食べる。 最近のご飯は何も味がない。 僕の味覚がおかしいわけではなく、塩や醤油といった調味料が一切使用されていない素の味が喉を通る。 昔からご飯は不味くても残さ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕の未来

          直人「姫花!ヒメコ!」 ヒメノ「2人とも…どうしてこんな…私が逃げろっていったせい?」 茂庭「酷いな…まずは家の中に!」 メイド「いけません…今戻っては…」 直人「お前は姫花の別荘の?」 メイド「はい…上空から降ってきたものに対して危険を感じ、護神会に連絡を入れようとした時…」 高嶺「何者かに襲撃されたってこと…」 姫花「ゴホ…ゴホ…そう…ヒ…メノ…おねえ…様……あいつらは…ゲホ…」 ヒメコ「姫花!姫花ーーーーーー!」 ヒメノ「よかった…2人ともまだ意識があ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕の未来

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜③

          2018年8月のある日 ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ!ヘカトンケイル!ハインツ!ヘカトンケイル!アビリティ!エリグモス……ハイ……ンツ……ヘカトンケイル……嫌だ…そんなの嘘だーーーーーーー」 ハインツはザブザブと波に打たれながら海面に倒れたヘカトンケイルの元へ走り出す。 ハインツ「ヘカトンケイル…ヘカトンケイル!神に抗う力じゃなかったのか…神の力を無効化する力じゃないのか……」 出流「今運天を使って治してやる!」 ハインツ「だからそれは意味がないって言

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜③

          シシテル #儚視

          「一葉兄ちゃん!」 「どうした?双葉」 「楽しかった!また明日も遊ぼ!」 僕は差し出された幼い手を握り返すことしかできなかった。 「どうしたの?一葉兄ちゃん?」 7歳の僕はこの時、葛藤というまだ聞いたことのない言葉と戦っていた。 「双葉あのな…お兄ちゃん…」 「どうしたの?」 だめだ…言葉が出てこない… 泣きそうになる表情を必死に笑顔で誤魔化しながら弟の幸せそうな可愛かった笑顔から目を逸らす。 「遅くなる前に帰ろうか。」 「うん!」 弟と会話を弾ませながら帰り道を2

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜②

          ?「ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふ〜ん、バンバン!ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふーん、ばんばん!ふふふーふーふーふーふーふふふーふふふふふーん、バン!いっちょ完了だぎゃーふふふ!喜んでくれると嬉しいにーーー!私のダーリン!」 ハインツ回想 業火を浴びて崩れる建物を僕はアンソロジーに抱かれながら見つめることしかできなかった。 子供達「ハインツ…詞華…お前達がやったのか?神父様は…神父様はどこいいるの…」 アンソロジー「神父様…?ハインツがこんな目に遭っているのに…?」

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜②

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①

          ハインツ回想 アンソロジーが地面にうずくまり鳴いている。 ここは東北の日本海に面する県… ハインツ「アンソロジー!アンソロジー!一体どうしたのさ…」 アンソロジーは何度も嗚咽を上げながら涙を流し続けた。 ハインツ「アンソロジー!答えてくれよ…僕は君の味方だから…」 アンソロジー「私…怖いの…私…神父様に…」 泣きじゃくるアンソロジーを見て僕は子供なりに抱きしめて寄り添うことしかできなかった。 現在 ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ。ヘカトンケイル。へ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙雲の矛先

          あの日と似た夜がまた始まった。 ?「そんな安っぽい影を出したところでこのヘカトンケイルには太刀打ちできないよ!」 巨大なロボットがダイダラめがけて空高く上げた拳を振り下ろす。 山がうなりをあげダイダラが動き出すもその大きな拳に一瞬にして飲み込まれ押し潰された。 茂庭「ダイダラを一撃で…一体この神は何者なんだ…」 ?「俺たちは王位と言ったはずだ。」 ならばと茂庭はすかさず空間の闇を切り裂きその中から鬼を出そうとする。 茂庭「魍魎…」 高嶺「ダメ!一葉!今鬼を出し

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙雲の矛先

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜 押し倒された俺は両腕両足を千鶴の手と尻尾に押さえつけられ身動きが取れずにいた。 千鶴「アホ…主…アホ…わしの気持ち…分からんか…阿呆…好きじゃ…わしは主が好きなのじゃ!」 ここまで顔を真っ赤にしてる千鶴を見たことがあっただろうか… 出流「あの…神様…ですよね?」 千鶴「無論!!!」 バシンとお尻から出ている3つの尻尾…と言うか、完全に蛇のそれだが…1つの尻尾を地面に叩きつける。 その時、千鶴はブルブルと体が震えた。 千

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回というやつ。①〜

          大きな貸切のリムジンバスに揺られていると海が見えてきた。 出流「あっ、海だ。」 海水浴で賑わう人々を眺めながら俺はバスの後ろで外を眺めていた。 姫花が最近の騒動で疲弊していた俺らの心を休ませるために別荘に案内してくれた。 千秋と千鶴はミチオと3人で楽しそうに話している。 直人が寝息を立てて爆睡している中、口元や首を舐め回しながらヒメノがハァハァと息を荒げている。 姫花と姫子は部屋についてからの段取りや買い出し等を常在のメイドと打ち合わせをしているようだ。 みつきは

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回というやつ。①〜

          僕と拠り所2あの日の君へ〜①再縁〜

          息子「そのほう、首を垂れよ」 山間に沈む夕日を見ながら一緒に散歩をする小学1年の息子が何度もそう口にする 父「何それ…学校で流行ってるの?」 そう聞き返すと違うよと言って首を横に振る。 テレビかゲームの影響かなと思いながら歩き慣れた畦道を解けそうな力で繋ぐ手にどこか懐かしい暖かみを感じる。 息子「夜寝てるとね!キラキラした部屋に黒と白の狐さんがいてね!あのね!いっつも笑ってくれるの!」 ニコニコ目を輝かせて楽しそうに話す子どもの姿を見てこの間までは赤ちゃんだったのにと

          僕と拠り所2あの日の君へ〜①再縁〜

          僕と拠り所〜百折不撓〜

          今まではあんなに賑わっていた部室も口数が減ってしまった。 順先生と周健先輩が亡くなって1週間が経った。 同じ階の廊下をバタバタと走る音がだんだんと近づいていることがわかった。 高嶺「はぁ、はぁ、はぁ…ごめんなさい…遅刻しちゃいました…」 息を切らしながら部室のドアを勢いよく開けた高嶺が俺たちとは違う制服で現れた。 高嶺は俺たちの高校とは別なのでそちらは学生服のデザインが違うものだった。。 直人「あっ高嶺……先輩…」 姫花「お疲れ様でございます。皆、お待ちしておりまし