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SEOの名の下のクズ記事を書くライターが消える日【vol.39】

相変わらず、あちこちのWeb制作会社がコンテンツマーケティングの名の下に、SEO記事を大量生産しています。

きっと需要が大きいから供給も多いのでしょう。だからクラウドソーシングを使った激安のライティングの仕事も途絶えることはありません。1文字1円の激安ライティングの需要はうなぎのぼりです。

このSEO記事の大量生産のやり方は、どの制作会社も同じです。使うツールが多少違うことはあっても、基本的なやり方は変わりません。

まず、Googleキーワードプランナーやラッコキーワード、キーワードマップのようなSEOツールを使って、クライアントがアクセスしてもらいたいと思っているキーワードを可能な限りあぶり出します。

たとえばAGA関連のサービスであれば、「ハゲ、若い 中年 モテない 治療 薬 飲み薬、塗り薬、AGA、東京(地域)、薄毛、抜け毛、クリニック」など、出てきたキーワードの検索頻度の高い順番に並べます。

あとはそれをすべて組み合わせていくだけです。ビッグワードだけでは競争が激しすぎて、なかなか検索表示の上位に食い込むのは難しいです。だから、上位のキーワードをどれだけたくさん組み合わせられるかが勝負です。極論すれば、「AGA 治療」で100パターンの記事が作れればいよいわけです。

ここで文章の品質や面白さといった曖昧な基準は基本的に後回しです。SEO記事においてはキーワードが最優先ですから、内容は二の次です。これをコンテンツマーケティングと呼ぶのが今のWeb制作会社の実態です。

頻出キーワードに沿ってタイトルを決めたら、次は見出しの作成です。見出しも頻出キーワードに従わなければなりません。

見出しもタイトルと同様でキーワードの組み合わせになってきます。頻出キーワードでなければ検索してもらえないので、頻出度が上位のキーワードを使わなければ意味がありません。よって見出しの組み合わせも限界があります。

そして、たいていは「メリット・デメリット」という見出しを立てることもお約束となっています。記事を発注する企業は、本当は自社に都合のいいメリットだけを書いてもらいたいのですが、ここでデメリットにも触れることで「ユーザー中心主義の記事ですよ」と、コンテンツマーケティングであるという体にしているわけです。

見出しはWeb制作会社のディレクター(編集者もどき)が決めることが多いですが、ライターがやらされることもあります。

じつは見出し作成はライターがやったほうがいい場合がほとんどです。なぜなら自分で書かないディレクターが見出しを作ると、往々にして情報不足(ろくに下調べしない)で、ライターが深掘りして調べていくと、「そんなの膨らませられないよー」「それ文脈に関係ないだろー」ということが頻繁に起こるからです。

つまり見出しに沿って下調べをしていくと、そのネタはたいして重要でないとか、全体の主旨から考えたら触れる必要がないとか、そんな情報は根拠がないとか、いろいろ出てくるわけです。

さらには見出しごとの文字数を、一律に200字とか300字とかに指定してくるので、内容の濃淡も無視です。

実際に上がった原稿をチェックして、構成がめちゃくちゃでライターに書き直しをさせなければならない場合は、たいてい見出しを作ったディレクターがポンコツだからだったりします。

これは致し方ないことで、ディレクターはクライアントの要望に合わせて検索上位に来るような記事を作らなければならないので、頻出キーワード優先で見出しを作るわけですが、実際に詳しく内容を深掘りしているわけではないからです。

気の利いた(勇気のある?)ライターなら、ディレクターに軌道修正する理由を伝えて、自分で筋の通った原稿にしてくれるのですが、たいていのライターは「だってそういう見出しで指示してきたんだから、そう書くしかないだろ!」と逆ギレするわけです。無理もありません。ディレクターがポンコツなのですから。

でもディレクターは自分のポカを認めなくないので、しまった!と思ったらしらっとライターに書き直しをさせます(そういう経験をされたライターも多いことでしょう)。

このようにどの制作会社も「キーワード抽出➔キーワードを組み合わせてタイトルと見出し作成➔ライターに発注➔コピペチェック」と同じことをやっているので、似たような記事が氾濫するわけです。

当たり前です。

SEOツールでネット上の最も検索されているキーワードとその記事を見本にして二匹目のどじょうを狙う作業をしているわけですから、みんな同じような記事になるのは火を見るより明らかです。

よく読まれている記事を限りなく模倣する作業なのですから、オリジナルな記事を作るなんてどだい無理芸です。

それでもライターは構成がほとんど同じ何百とある金太郎飴状態の記事の中から、言い回しを変えて少しでもコピペにならない原稿に仕上げなければなりません。

かつてDeNAがコピペ&盗用の記事を大量生産して大問題となり、運営していた9つのメディアすべて閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しいところです。

さすがにいまは意図的にコピペ記事を書かせるWeb制作会社はないと思います。しかし、いまでもたまに魔が差してコピペに手を出すライターが現れるものですから、これを防がなければなりません。

そこでコピペチェックツールの出番になります。書かれた原稿がコピペされていないかチェックするわけですね。

ただコピペチェックツールはたいていコピペの含有度を調べるだけなので、文章を校正・校閲してくれるわけではありません。

世の中には校正・校閲ツールもたくさん出ていますが、これらも基本は誤字脱字や日本語の正しい書き方をチェックするだけなので、事実誤認や構成の不具合まではチェックしてくれません。

ただ、ちゃんと編集者や校正者をつけて原稿のクオリティチェックをするまともな制作会社(大手出版社など)もたまにあります。私はそういうお仕事をたまに手伝うこともあるのですが、これが非常に効率が悪いので、ほとんどのWeb制作会社はどこもやりたがらないのです。

たとえば校正者を雇う余力のある制作会社は、校正者が効率よくコピペチェックできるように、ライターに参考にした(パクった)記事のURLを明記するように指示します。ライターは記事作成の参考にした(パクった)元記事を一つひとつすべてセットで明記しなければなりません。校正者はそれをもとにライターがコピペしていないかをチェックします。

また、ライターに1文字1円で5,000字の原稿を書いてもらうとします。クラウドソーシングで集めたこの激安単価で書くライターのレベルはやはりそれなりなので、書き直しをすることがほとんどです。

ひどいときは構成からすべてやりなおさなければなりません。そうなると原稿料より校正・校閲料のほうが高くなってしまうのです。本末転倒ですね。

一方ライターの立場になれば、1文字1円の原稿料の場合、文字数はたいてい5000字〜10,000字が要求されるので、1本書けば、5,000円〜10,000円です。

まじめに5,000字の文章を書こうとしたら、丸一日はかかります。月20本書いて10万円。大卒の初任給の半分くらいでしょうか。これではさすがに食べていけません。しかし、そんなビジネススキームがSEO記事の大量生産の実態なのです。

なんだか勝者が誰もいないビジネスと思いませんか? どこにでもある同じような記事を「数打ちや当たる」の発想で、誰の役にも立たないコピペ紛いの薄っぺらい記事の大量生産・・・。

むなしい気分になります。

そこで注目されているのが、SEO記事の大量生産のフルオートメーション化です。

いまやキーワード抽出はもちろん、構成案も見出しもタイトルも自動生成が可能です。コピペチェックも校正・校閲も勝手にやってくるツールもたくさん出ています。

いずれAIの進化によって、ライターの仕事はなくなると言われてきましたが、ChatGPTの登場によって、ついにそれが現実になってしまいました。

ChatGPTに任せれば、キーワード抽出からタイトル、構成案、見出し、原稿作成まで簡単にやってくれます。たぶん1記事1時間くらいでできてしまうでしょう。

クラウソソーシングにあふれている下手なライターよりよっぽど文章力もあります。コピペチェックをしてもほとんど優良(20〜30%)で収まります。

ただ日本語のChatGPTは拾ってくる情報が古いのと、あくまで推測で記事を作成するため、事実と違ったことを平気で事実であるかのように書いてくることがあるので要注意です。ただこれも、Googleでファクトチェックすればある程度は検証できるでしょう。

いずれにしてもこういった弱点さえ克服されれば、ライター要らずの時代が来るのも近いでしょう。特にSEO記事のような誰が書いても同じになる金太郎飴記事は、ChatGPTのほうが得意だと言えるでしょう。

いつも原稿の書き直しをさせられて、「こんな安い原稿料じゃやってられない!」とお嘆きのライターの方は、いまのうちに試しにChatGPTに書いてもらうのも一手ではないでしょうか。少なくともコピペの心配をする必要はなくなります。
 

 

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