中西 茂

教育取材30年。大学教員と教育ジャーナリストの二足のわらじをはいています。元新聞社編集…

中西 茂

教育取材30年。大学教員と教育ジャーナリストの二足のわらじをはいています。元新聞社編集委員です。

最近の記事

【心の職員室・新聞綴り】407

朝日新聞の27日教育面は、大阪の高校授業料完全無償化の課題を3人に聞いていました。中嶋哲彦・名古屋大名誉教授が、制度上、私立学校は63万円いじょうの授業料設定ができず、教育のためなら行政が民間活動に制限を加えてよいとなると、私学の存在意義がなくなる可能性があること、生徒が私学に流れて公立が衰退することなどをあげていました。 実際に公立高校の定員割れは前年度と比べて20校以上に増えたというデータも別項で示されて説得力があります。ただ、新制度だけの影響ではないかもしれません。そ

    • 【心の職員室・新聞綴り】406

      読売新聞の「明日への考」にNPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんが登場。「加速する少子化」に対して「当事者でなくなっても声を上げよう」と訴えています。保育の分野での政策提言を続ける彼も40代半ばでしょうか。 「カタリバ」の今村久美さんとともに、「慶大SFC20年」という教育ルネサンスのシリーズで卒業生として取り上げたのは、2人が30歳のときでした。その後の2人の活躍ぶりは本当に目を見張ります。 朝日の「天声人語」に、札幌聾学校の児童の賠償訴訟のことが取り上げられていました。

      • 【心の職員室・新聞綴り】405

        高校生の政治活動の学校への届出について、愛媛県の話が朝日新聞社会面で大きく取り上げられていました。選挙権年齢が18歳に引き下げられた2016年、愛媛県では県立の全高校で、校外での政治活動参加を事前に届けるよう校則で義務付けたが、全65校中36校がすでに廃止しているというのです。 導入当時の県教委幹部は、暴力的、違法な活動に巻き込まれる可能性を考えたリスク管理で、思想信条の自由を制限する意図はなかったと説明しているようですが、届け出の例自体がなかったようです。。もはや18歳は

        • 【心の職員室・新聞綴り】404

          朝日新聞の「私の視点」で聖心女子大の永田佳之さんが、昨年11月にユネスコで採択された「平和、人権および持続可能な開発のための教育勧告」について書いていました。旧勧告は1974年。「ほとんど報じられていない」が「日本の教育の当たり前が国際的には当たり前ではないのかが分かる」とあります。 「世界の教育で今求められていることは何よりも<共に生きうることの大切さ>だ」そうです。「コンヴィヴィアル」(共生的、和気あいあい)という言葉が出てきて、「子どもにとっても先生にとってもワクワク

        【心の職員室・新聞綴り】407

          【心の職員室・新聞綴り】403

          カスタマーハラスメント防止のための条例を東京都が作るそうです。読売も朝日も取り上げていますが、読売には〈カスハラ防止「役所・学校も」〉と見出しがついています。学校に通う子どもや保護者も消費者と規定するなら、違和感があります。 読売都内版では、都教委が今年度全小学校で導入したエデュケーション・アシスントの評判を大きく扱っています。ただ、具体的に書かれているのが昨年度まで学習支援員をしていた江東区の女性の例で、支援員との違いがはっきりしない原稿です。すでに2022年度から江戸川

          【心の職員室・新聞綴り】403

          【心の職員室・新聞綴り】402

          自腹切る教職員、という大きな見出しが目立ちます。21日朝日新聞朝刊社会面トップは、千葉工業大学の福嶋尚子准教授らの調査でした。インターネット調査で昨年8月、1000人強の教職員に聞いた結果、自腹経験が76%とありました。こういう調査は珍しいです。ただ、自腹を切った人が回答すると思われるので、割合にどれだけ意味があるのかはちょっとわかりません。 。 教材や備品、自作の教材の材料費など授業に関わるものが多いですが、部活動で救護用具の購入の10万円という例や、修学旅行の下見や引率の

          【心の職員室・新聞綴り】402

          【心の職員室・新聞綴り】401

          <禁止予防へ 国語や算数も屋外で>という見出しの記事が朝日新聞教育面で。台湾の小学校の話です。休み時間にプラスして1日120分屋外活動をすれば近視の発症が抑えられるというのです。わざわざ校舎を建て替えて公邸に出やすくしたと聞くとさらに驚きます。 この学校では、休み時間には教室の照明を消して児童が外に出るよう促し、保護者にも説明会を開き、読書やゲームなどを30分行ったら10分は休ませるといいようです。近視は10歳以下で発症すると強度近視に至る、となると本気で考えたほうがよさそ

          【心の職員室・新聞綴り】401

          【心の職員室・新聞綴り】400

          公教育の内と外、とでも言えばいいのでしょうか。 読売新聞は「あすへの考」は、古沢由紀子編集委員が、簡素化が進んでいる内申書の見直し問題を取り上げていました。 たとえば埼玉県は2007年の高校入試から、部活動や生徒会活動の欄をなくし、9教科の成績評定を基本にするという。ただし全員対象の面接を導入し、中学生は中学生活で力を入れたことなどを「自己評価資料」にまとめて臨むそうです。 世の中の変化として、働き方改革や部活の地域移行もあります。文科省は細かいことを示していないので、都

          【心の職員室・新聞綴り】400

          【心の職員室・新聞綴り】399

          読売新聞の「The 論点」は<宿題って必要?>。賛否両論を並べる欄ですが、データとして、東大・ベネッセの調査で、ここ数年、小学校から高校まで、宿題にかける時間が減っていることに驚きました。 スマートグラス不正の受験生は、別の大学でも問題を撮影したとありました。決済アプリ数千円の報酬というのもすぐ足がつくでしょうし、そもそも早大の創造理工学部と商学部を受験していることも謎です。 神戸の教師間暴力問題(2019年)。カレーを食べさせる映像は何度もテレビで見せられましたが、この

          【心の職員室・新聞綴り】399

          【心の職員室・新聞綴り】398

          早大入試を巡るスマートグラス不正の対策について朝日新聞。電波遮断には費用がかかるとありますが、これこそ大学の先生がスタートアップ企業とうまく考えられないものか。スマートコンタクトレンズも開発が進んでいるそうで、コンタクトだと今回のように教室の監督者が気づくのは無理でしょうね。究極的には不正のできない問題を考えるしかないわけですが。 朝日教育面の「大学入学共通テスト問題から」というシリーズ、「思考力」を考えるという駿台予備校の生物講師の寄稿もじっくり読まないといけませんね。生

          【心の職員室・新聞綴り】398

          【心の職員室・新聞綴り】397

          読売新聞の教育ルネサンス「変わる担任制」5回目(最終回)は、神戸市立摩耶小学校の「学年担任制」。テレビでも取り上げられました。そして最後に名古屋市立八幡中学校の高橋幸夫校長が登場。筆者も取材した方です。八幡中の活動の面白さ、たくさんあるのに短いなあという印象でした。 読売の1面は、2月に早大創造理工学部で行われた入試で、高校生がスマートグラスを使って不正をしていたという特ダネです。入試問題を外部送信、Xで解答を求めていたとして、近く偽計業務妨害で書類送検されるようです。別学

          【心の職員室・新聞綴り】397

          【心の職員室・新聞綴り】396

          読売の教育ルネサンス「変わる担任制」の4回目は、京都市立岩倉北小学校が2022年度から取り組むチーム担任制。「今年度、各学年で原則一週間ごとに担任を替える」と記事にはありますが、期間は試行錯誤で、1年生はやらなかったりもするのが「チーム担任制」だと思います。 中教審特別部会の審議のまとめについては当然、各紙扱っていて、見出しを拾うと、読売は<教員残業代「10%以上」提言><若手支援体制充実も>、朝日は<給与の「調整額」増額 教科担任制拡大><教員処遇改善 財源捻出が壁>。朝

          【心の職員室・新聞綴り】396

          【心の職員室・新聞綴り】395

          「高田高校水泳部の12年」という連載が、朝日新聞の夕刊で始まりました。東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田。水泳部員11人と顧問2人のうち部員7人と顧問1人が亡くなりました。 記事は「生き残った方の顧問」が7か所の墓参りをするところから始まり、当時、室内プールで練習をしていた7人の姿が見えずないため、もう一人の顧問が車で生徒を呼び戻しに行くところで終わっています。2回目を読まないと、生徒たちがどうしようとしていたのかわかりません。 朝刊は休刊なので遡って5月3日の読売

          【心の職員室・新聞綴り】395

          【心の職員室・新聞綴り】394

          2人の元校長の話です。どちらも読売新聞。11日夕刊のほうは、佐世保の小6女児殺害事件から20年を迎えたタイミングで。発生直後に市教委の担当者として学校に駆け付けた人が、のちに自ら手を挙げて校長をやっていたんですね。児童に命の大切さを訴え続けたのは当然でしょう。 もう一人は12日の朝刊。東日本大震災で、妻と次男をなくした陸前高田の元校長が不登校の子らが集える施設を作ったという話です。震災当時28歳だった次男も中学生のときに不登校を経験、妻が親の会を作ったそうで、震災後にその活

          【心の職員室・新聞綴り】394

          【心の職員室・新聞綴り】393

          朝日新聞デジタルで人気だという「きょうも傍聴席にいます」が1ページを使って紹介されていました。2022年の大学入学共通テストの日に、東大前の路上で受験生らを包丁で刺した少年の裁判です。当時は高校2年生。東大の理Ⅲを目指していました。 記事によると、2年生の9月の三者面談で進路変更を促されていたといいます。妹に障害があり、弟が中学で不登校に。精神鑑定では、親に褒められたい、認められたい意識から「『成績』にのめり込んだ」という見立てです。強迫観念から勾留中も勉強を続けたといいま

          【心の職員室・新聞綴り】393

          【心の職員室・新聞綴り】392

          朝日新聞は日本版DBSについて2面で詳報しています。法案が審議入りしたタイミング。記事にあるように犯歴照会ですから、初版は防げません。せめて「朝会処分でも対象に」という被害者の声は当然ですが、文科省が整備したデータベースがあるので、その関係性について説明してほしいです。 読売新聞は社会面で<中高英語力 初の「50%」>と文科省の2003年度の調査を、都道府県政令市別の表も載せて。<地域差解消進まず>とあるように、中3で英検3級相当以上は、さいたま市や福井県が80%台、佐賀県

          【心の職員室・新聞綴り】392