オーバーツーリズムの光と影。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:外国人観光客の行動が観光地の方々に迷惑をかけている、いわゆるオーバーツーリズム問題。しかし、ここから見えてくることがある。トップ画はhttps://qr1.jp/hqU5Zo
行動様式の違い
これはいい、悪いの問題じゃないんです。
横断歩道で信号が赤だったら、あなたは待ちますか、それとも気をつけて渡りますか。
統計をとったわけではありませんが、僕が欧米で体験した皮膚感覚では、欧米では後者が、つまり信号が赤でも自分で安全と判断したらGoという人が圧倒的に多いです。
オーバーツーリズムの問題の根幹には、この価値観があるのではないでしょうか。
つまり、at your own risk(やってもいいけれども、自分の責任でね)という精神のある、なしです。
下の標識はSwim at your own riskつまり、泳いでもいいけれど、自分のリスクでね、つまり「自分で判断しろよ」と言っているわけです。
自分で考えさせない日本
くどいようですが、これはいい悪いの問題ではありません。
ただ、このat your own risk(自分の責任でやれ)という表現には、ざっくり言って日本人と欧米人の根本的な価値の違いが現れていると思うんですよ。
つまり、欧米では、なんであれ「行動すること」が大事だという考えなのです。
これらのメッセージは、行動を表す動詞が最初に来ます。
僕に言わせれば、これは彼ら彼女らの社会が、基本的に行動することに価値を置いている証左です。
もちろん、「危ないからやめなよ」という危険の知らせ、というのがメッセージの目的ではありますが。
マナー違反ではない
オーバーツーリズム(over-tourism観光公害)の問題の一つに、彼ら彼女らがお行儀よく信号待ちをせず、英語で言うところのジェイウォーク(jaywalk交通規則を無視して道路を横断する、横断歩道のないところを横切る)の問題があります。
しかし、これは彼ら彼女らの性、なんです。
いい悪いじゃないし、むしろ正しい行動なのです。
「自分の行動には自分で責任を持つ」というのが、基本的な精神だからです。
だから、事故が頻発する場所に、信号をいくらつけても、外国人の信号無視は減る道理がないのです。
At your own riskの精神は、時に彼らにむちゃをさせます。
行動することが彼ら彼女らの”善”なので、信号を無視する代わりに、柵を乗り越えたり、遊泳禁止の海で泳いだり、踏切に侵入したりは平気です。
心配すべきは日本人かも
こうした一部の外国人観光客の行動様式に、日本人は老も若きも一様に眉をひそめます。
誰も、「自分の責任で自由にやれよ」などとは言いません。
でも、考えてみればそれのどこが悪いのでしょう。
信号無視して車にひかれても、自分の責任でしょ、ハイ終わり、極端に言えばそれが欧米人の価値観です。
日本は違います。
「規則なんだから守れ。規則は守るためにある。問答無用。」これが絶対的なルールなのです。
日本の社会の価値観はまず、これです。↓
・規則は守る
・常識は守る
・先生の言うことは聞く
・お上の指示には従う
行儀のよさがリスクテイクを殺す
上記4つが日本人の精神、行動に染み付いているものですから、日本人は
・自分で考えない
・自分で判断しない
・先生や権威のいうことに盲従する
・批判しない
のです。
こんなことをいうと、またおしかりをいただくかもしれませんが、僕は日本人に、日本の社会にat your own riskの精神がないことは、ここに来て日本の弱点になっていると思います。
株式取引が盛り上がらない理由
株式教育の必要が叫ばれていますが、小さいときから株取引を教えるバカいるかよ、ギャンブル礼賛してどうすんだ、との反論も多く聞こえます。
そもそも、リスクを取らないことが習い性になってる日本人に、そんな教育やってもムダ、という声もあります。
株をやる人がもともと少数派なのは、リスクを取りたがらないからではないでしょうか。
カジノで地域活性化などというと、「ギャンブル依存症が増える」などと、リスクテイクを即ギャンブルと結びつける方々がいるのも、リスク=悪という日本人がもつ抜き差しがたい心情にあるのではないでしょうか。
最初っからリスクを取らない精神は、自分で判断しないという行動を呼び込むのでは、と危惧します。
リスクを取るとは、経営学的に言えば、リスクを自分で計算することです。
リスクを冒すことにどんなプラス、マイナスがあるのか、どこを見極めればリスクを最小にすることができるのか。
リスクをとることはこうした訓練を知らず知らずのうちに自分に課すことになります。
考えてみれば、我々は子供の時から「あれをしちゃダメ、これをしちゃダメ」と教えられて「いい子」に育て上げられてきました。
しかし、どうやら世界を変えるのは、イーロン・マスクみたいなやんちゃ坊主のようです。
野呂 一郎
清和大学教授
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