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ブレイバーン第1話を何度も何度も見ている理由

「沼」の中に浸る時、その対象によってさまざまな温度がある。
ここでいう「沼」というのはひとつのコンテンツに夢中になる時に使う意味で、私は目下のところ『勇気爆発バーンブレイバーン』の沼の住人となっている。
現状、この沼の全体的な温度は非常に高い。
少し冷めたかと思ったら火山溶岩を投入される。
沼の住人が「熱い! 熱い!」と言って、日々火傷を負っているのがこの沼だ。

巨大ロボ作品にハマる経験がなかったために、ロボアニメや特撮のセオリーなどは分からない。
しかしどうやらブレイバーンという作品は、私と同じように初めて巨大ロボアニメに触れる人が多くいて、一種のカルチャーショックを受けている人も多いようだった。
しかし巨大ロボ作品を普段から見ている人にとっても、ブレイバーンの異質さは困惑するレベルのようだった。
おそらくブレイバーンは巨大ロボアニメではなく、「ジャンル:ブレイバーン」という存在なのだろう。

実のところ、私が最も多く見返しているのは第1話である。
物語の起点でもあり、分岐点でもある。
なぜ分岐点かと言えば、第9話でまた第1話のブレイバーン登場時に戻るからだ。

第1話のプロローグとエピローグでスミスの「なりたかったもの」について語られる。
第8話でも同じようにスミスの「なりたかったもの」が語られる。
この作品を語る上で理解しておかないといけない、とても重要なパートだ。
第9話を見た後で第1話を見返すのは、スミスが「なりたかったもの」をどう語っていたのか、スミスが何のために、誰のために行動するのか、その動機づけが第1話にあるからだ。
この作品は「近未来SFループもの」だ。
作品と同じように、視聴者もまた第1話からループする宿命にある。


第1話を見る理由がもうひとつある。
物語がどんな世界観なのかが凝縮されているからだ。
第1話はアド・リムパック(先進的環太平洋合同演習)で、物語の主人公であるイサミとスミスがどういう人間なのかを表現するところから始まる。
人型装甲兵器「ティタノストライド(TS)」が軍用航空機よりも人気ポジションになった時代が舞台で、この演習はTSを主体にしたものだった。
簡単に言えばTSは全高6mあるロボットだ。
漫画やアニメでしかなかった世界が、作品世界では現実である。
そこに宇宙から9mの巨大ロボが襲来してくるのだ。

イサミの所属は「陸上自衛隊特殊機甲群」、スミスは「アメリカ海兵隊 第3海兵遠征軍 第3海兵師団 第3TS大隊C中隊」。
どちらも優秀なTSパイロットである。
自衛隊所属のイサミは実戦経験がなく、一方でスミスが所属する海兵隊は陸海空より先陣を切っていく部隊で、少なくとも自衛隊に比べたら実戦経験は豊富。
そのことを踏まえると、イサミに先行されたスミスは面目丸潰れということが分かる。
自衛隊や海兵隊のスタンスと同じように、使用されている所属名称や階級も現実のものに酷似している。
アド・リムパックは現実の「リムパック(環太平洋合同演習)」をモチーフにしているのは明らかだ。
砲弾や爆撃音もミリタリー映画でよく聞くのと同じ迫力がある。
生半可なことをしないと最初から決めていたようで、軍事考証もできる小柳啓伍さんをシリーズ構成と脚本家に迎えている。
現実的要素に少しの虚構を混ぜてあるこの作品は「本格ミリタリーもの」とも言えるのだ。

本格ミリタリーものの中に突然現れ、初対面であるにも関わらず「助けに来たぞ、イサミ」と、手を差し伸べてきたのがブレイバーンという巨大ロボットだ。
なぜか自分の中に入れと言い、入ったら突然コクピットが形成され、一緒に戦うことを強要されてしまうのがイサミとブレイバーンの出会いだ。
しかもコクピットの中では特撮などでお馴染みの勇ましいテーマソングが流れている。
しかしこのテーマソングが流れることにさえ意味があると、回を重ねていくと判明するため、これがただのコメディパートではないと分かってくる。


『勇気爆発バーンブレイバーン』第1話には、この作品のエッセンスが凝縮されている。
だからこそ物語が進むにつれて第1話を確認して咀嚼したくなる。
そしてその探究心こそ、沼の入り口でもあったのだ。

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