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【感想】光る君へ  第5回「告白」

「告白」というと愛の告白とかそんな甘いことを考えてしまうけど、『光る君へ』がそんな甘っちょろいことをするわけがない。
というのを、これまでで分かってはいたのですが、吉高さんの演技を含めて壮絶でした。
そして今回はより多くの「呪い」について描かれていたように思います。


■ 病に伏せった。ならば祈祷だ。

まひろが倒れて全然起き上がらなくなってしまったので、あからさまに胡散臭い陰陽師を呼んできた乳母殿。
現代とは医学の考え方そのものが違うので、何かあったら祈祷です。
案の定、嘘くさいイタコ芸を見せて、乳母殿からお礼の品をたっぷりもらって帰った僧たち。
乳母はありがたがっていたけど、多分これが当時の当たり前の姿。
安倍晴明みたいな国家公務員型陰陽師を呼べるのは貴族の中でもトップクラス。
僧たちがアルバイトで陰陽師をしていたとのことなので、陰陽師の需要がそれほど高かったんだなと分かります。

陰陽師に頼むのは病気平癒の祈祷はもちろん、呪いの祈祷なんていうのもあったそうで。
ドラマでは安倍晴明は御簾の向こうから関白に右大臣左大臣たちからやりたくもない帝への呪詛を強要されました。
兼家だけなら突っぱねることはできたけど、政治の中枢にいる大部分の人たちから「やれ」と言われたらやらざるを得ません。
これで断ったら陰陽寮にいられなくなるでしょうし、そうなると市井のアルバイト陰陽師たちのようなことをしないとならないでしょう。
自分の立場や野心と天秤にかけたら、呪詛もやむなし。

■ 道長からの文

道長と紫式部がロマンチックな関係にあったのかどうかは分からないけど、ドラマの中ではこれまで少女漫画のようにドキドキするような展開がありました。
正体が知られた三郎こと道長からまひろに宛てて「家に行く」という文が届いた時には「これはもしや通うのか……!?」と、ドキドキしてしまいました。
当時の恋愛といえば通い婚。
身分違いとかあるけど、もしかして親に承諾を得た上でまひろのもとに通うのかな!? なんて、思ってました。

しかし家ではなく、廃屋で落ち合うことに。
そこでまひろは道兼に母を殺されたことと、原因は自分にあることを泣きながら告白。
「一生呪う」とまひろが告げたことで、このシーンが『源氏物語』の「夕顔」のオマージュであることが分かりました。
「夕顔」は生き霊となった六条御息所に夕顔が呪い殺されるエピソードが書かれています。

また、まひろは母の死は自分が三郎に会いたくて道に飛び出した自分のせいだと言います。
源氏物語は源氏の君の因果応報の物語だという見方があるので、まひろは幼いながらに身をもって、因果応報や悪因悪化を学び、それが源氏物語へと発展していくのかもしれません。

■ 一蓮托生の家族関係

まひろから兄・道兼の罪を告白されたものの、まひろは道長に会いたいから駆け出しました。
それはつまり道長のせいでもある。
兄の罪でもあり己の罪でもある。
そして兄の罪は父により揉み消されています。
人殺しという穢れを背負った父と兄、そして遠因ながら道長も人が死んだ罪を負っています。
道兼に殴りかかった道長を見て、父は「道長の熱い心を知った。我が家は安泰」などと笑って、心から嬉しそうでした。
1話の時点では道兼が悪役だなって思っていたけど、回を重ねるごとに道兼よりも兼元の方が悪役だし怖い。
けどそんな兼元の血を引き継いでいるんですよ、道長もまた。
史実として道長は最高権力を得ていくのですが、優しいだけではない、ヒールな一面を見せる予感があります。
血の繋がりや家族という連帯は、時に呪いにも似たようなものを生み出します。

■ 吉高由里子の号泣演技にもらい泣き

道長に道兼と自分の罪を告白した時、まひろは嗚咽しながら懸命に話をしました。
その泣きじゃくる演技があまりにもリアルで恐ろしかったです。
すごく身に覚えがある泣き方で、我ながら自分がああいう風に泣いた時のことを思い出さざるを得ないシーンでした。
だからこそ分かる。
過呼吸になる寸前の嗚咽で喋るのも大変。
けど押し寄せてくる感情を抑えることができなくて、相手に訴えようとせざるを得ない。
その泣き方があまりにもうますぎました。
吉高由里子さんは左利きなのに右手でくずし字が書けるように練習したそうで、もうそれだけで感服なのですが、今回のこの演技でさらに敬服です。

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