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【感想】光る君へ  第8回「招かれざる者」

今週はちょっと暗黒政治劇が繰り広げられることが多くて、全体的にはちょっと暗め。
ただその中でちょっと微笑ましいところもあってほっこりしたりドキドキしたりもしました。


■ 朗報:小麻呂、無事でした

実は猫好きの間で先週から心配事がありました。
逃げ出した猫の小麻呂は雨の中どうなってしまったのだろうか、ということ。
雨に濡れながら木陰でうずくまっていた小麻呂の姿は、猫好きにとっては「早く見つけ出してあげて!」と思ったシーン。
まひろは見つけ出すこともできず家に帰ってしまったような描写だったので、小麻呂を心配する声が多く上がっていました。
しかし冒頭で小麻呂が画面いっぱいに映し出されて、元気なことが確認されました!
風邪なども引いておらず、相変わらず土御門殿にいた姫たちの恋バナに耳を傾けていました。
良かった、良かった。

月耕『源氏五十四帖 卅五 若菜下』,横山良八,明治26.出典:国立国会図書館デジタルコレクション

■ 倫子様の乙女な表情にうっとり

俳優さんはすごい。
ひとつの表情で少女の恋の目覚めを理解させてしまう。
ちょっと良いなって思っていた殿方との間に持ち上がった結婚話に、1人部屋に戻ってうっとり顔。
いざ結婚という文字が頭を掠めると、ちょっと気になっているどころか、自分がかなり彼のことが好きなのだと自覚してしまったのでしょう。
それを表情ひとつで視聴者に伝えてしまう。
あんな恋する乙女の表情ができるなんてすごい、黒木華さん。
とても素晴らしい演技に脱帽です。

■ 似合わずとも巻き込まれていく政治劇

まひろが為時に「父上に政治は似合わない」と言っていましたが、実はとっくに巻き込まれていたし、大きな政変に関わることにもなります。
先週、為時は兼家に帝から頼られていると言って、間者としての任を解いてもらうことができました。
兼家は意外なほどにあっさりと認めて、感謝すら伝えてきました。
視聴者としてはむしろ怪しいと思ったシーンです。
今週はっきりと分かりました。
兼家は帝からの覚えめでたい為時に道兼を差し向け、帝に近づけることに成功してしまったのです。
花山天皇は道兼の腕にあるアザを見て「地獄に落ちるな、右大臣は」と憎々しげに呟き、道兼を為時と同様に扱うことにしてしまったのでした。

この時「地獄に落ちる」と言った花山天皇の頭の中にあったのは、八大地獄十六小地獄のうち、「多苦処(たくしょ)」かもしれません。
人を縄で縛ったり杖で打ったりし、子供を恐れさせたり、拷問で人々に大きな苦痛を与えた者が落ちる地獄です。
花山天皇から見たら、子どもを折檻する親ということになるので多苦処落ち。
しかし視聴者側としては、嘘をでっち上げて目上の人を陥れた者が落ちる「受苦無有数量処(じゅくむうすうりょうしょ)」に落ちるのではないかと予想します。

右大臣家の謀略に巻き込まれたとはいえ、今後起こる事件のきっかけを作ってしまった為時。
おそらく自分がしでかしてしまった事に後悔することになるのでしょう。
そしていずれ、まひろも「源氏物語」をきっかけに政治のど真ん中に巻き込まれていく事になります。
この親子はどうやら下級貴族ながら、周りからどんどん政治の中心に巻き込まれていく運命にあるようです。

『地獄草紙』,平安~鎌倉時代・12世紀,奈良国立博物館所蔵,出典:ColBase

■ 直秀、正体がバレる

突然見つかった弟として東三条殿にまんまと入り込むことに成功した直秀。
道長は腕にあるのが矢傷だと見抜くし、邸内をくまなく見ようとするのを怪しむしで、直秀が盗賊ではないかと気づき始めました。
けど、キャッチボールをする間柄の直秀が盗賊であって欲しくないと思っていた事でしょう。
しかしやはり直秀は東三条殿に盗みに入り、しかも捕まってしまいました。
道長は思い違いであってほしかっただろうし、捕まってほしくなかっただろうし、複雑な心境だったでしょう。
そんな複雑な思いを、表情にして表現する柄本佑さんがすごかった。
悲しいよね。
身分が違っても信頼できる友だと思っていたのに、本当は貴族の家を荒らす盗賊だった。
散楽で貴族を笑い物にするに留まらず、盗賊するほど憎んでいたのかもしれません。


今週は特に政治的画策や裏切りの濃い回で、ちょっと気持ちが落ちることが多かったです。
けど来週はこんなもんじゃない気がする。



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