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美しい思い出

僕が高校生だったときに、友人Aが
「神様っていると思う?俺はいると思う。何故なら、俺、昨日見ちゃったんだ、神様。」
僕は、馬鹿馬鹿しいなと思いながらそいつの顔面にそっとつばを飛ばして(勢いよく飛ばしたら怒られるかなって思ったから)帰った。しかし、10メートルほど歩いてから彼の様子が気になり、振り返ると友人Aが何やら分厚い本を読んでいて、よく見るとそれは「広辞苑」だった。次の瞬間、彼は1枚のページを破りとって丸めて投げた。彼はこちらを向いて微笑み、優しく手を振って反対方向へ帰って行った。彼の姿が見えなくなったところで彼が丸めたページを拾い、広げてみると、それはちょうど「科学」という言葉の意味が書かれていたページだった。僕は、すこし笑った。

次の日、彼は即身仏になった。

即身仏になった理由は未だわからないが、ただ一つ言えることは彼がヤバめの宗教に入っていたということ。

その宗教は、分厚い本2つのそれぞれのページを互い違いに重ね合わして引っ張ると現れる強力な摩擦力を「神の力」だと信じてやまない、やばいところだった。

僕は少し笑った。

友人Aが彼の人生最後に起こした「クセの強い」出来事は、即身仏という結果で終わった。同時に、それは僕が最後に体験したクセの強いことでもあった。だから、友人Aがいなくなってからの毎日は退屈そのものだった。

ネタバレすると、この話はフィクションである。

この通りだごめん。