「マグロの漬け丼」vs「おひたし」!~ツケルとヒタスは、どう違う?
”マグロの漬け丼”が好きだ。
しっかりと味が染み込んだマグロは、酢飯に合う。
一方、”ホウレンソウのおひたし”も好んで食べている。
ほとんどの主菜と相性が良い、名脇役といえる副菜だろう。
あるとき、「マグロの漬け丼」と「ホウレンソウのおひたし」が同じテーブルに並んだ。
そこで私は思う――
「つける」と「ひたす」って、何が違うんだろう?
どちらも、『液体の中に入れる』という意味だと思うのだが・・・・・・。
というわけで、今回のお題。
❶液体量の比較
まず、マグロの漬けについて。
寿司に関する本を片っ端から調べてみる。
すると、マグロの「漬け方」は下記の写真の様子でほぼ一致していた。
液体(タレ)は、材料が完全に隠れない程度のようである。
次は、おひたしだ。
『材料別野菜で満足おかず―栄養も満点400品(別冊NHK きょうの料理)』に、「ほうれんそうのおひたし」の作り方が書いてある。
レシピによると、ほうれんそう300グラムに対し、大さじ1のしょうゆで”ひたす”らしい。
せっかくなので作ってみた。
小松菜は、根元を切ると150グラムだった。
しょうゆの量も半分の大さじ0.5杯に調整した。
液体量は、どうだろうか。
あくまで主観だが、マグロの漬けに比べかなり少なめである。
「漬けマグロ」がプールのように器全体に液体が広がっているのに対し、「おひたし」は器に液体が到達すらしていない。
つまり、液体が多いのが「つける」、少ないのが「ひたす」と言えるのかもしれない。
あ、違う。
”焼きびたし”は、「ひたす」なのに水分量が多い!!
さきほどのマグロの漬けと比較しても、水分量は変わらないような気がする。
と、いうわけでさきほどの表を修正したい。
つまり、
ということだ。
ただ、「つける」と「ひたす」の違いはこれだけなのだろうか?
他の観点でも考えたい。
❷時間の比較
触れる液体の量についてはわかった。
次は、食材が液体に触れている時間について追究する。
私の感覚では、
だと捉えているが、はたして――
【つける】
『調理科学でもっとおいしく定番料理 (1)』に、マグロの漬け丼の作り方が載っている。
抜粋し、以下に引用する。
漬ける時間は、「2~3分」とある。
思ったより短いなΣ(゚ロ゚;)
マグロの漬け以外も調べてみる。
『み〜んな大好き。元気おかず。 から揚げっ! 照り焼きっ! ハンバーグッ!』の9ページに、から揚げの作り方が書かれていた。
そこには、
とある。
さらに、
とあり、「20分漬ける」ことが推奨されている。
他のレシピ本で他の料理を見ても、漬ける時間は、「15分~5時間程度」というものが多かった。
ただ、漬物は別格。
など、非常に長い時間をかけるのだ。
【ひたす】
一方、ひたすの方は、明確に時間が書かれているものを見つけることができなかった。(私のリサーチ不足の可能性もあるが)
レシピには、
といったことが書かれており、時間については記載されていないのだ。
ただ、どのレシピにも共通しているのが「食材全体に調味料を行き渡らせる」という意識だ。
それもそのはず。
「ホウレンソウのおひたし」を作るとき、味のしない部分(=調味料が行き渡っていない部分)があってはよろしくない。
したがって、”時間”については、次のようにまとめることができるのではないだろうか。
寿司屋で判明!
「つける」と「ひたす」の違いは、液体量の違いや液体に触れさせる時間の違いである。
私はそう結論を出した。
そして、
と強く思った。
レシピ本で、美しい漬けマグロや漬け丼を見ているうちに、そのような欲求に駆られたのだ。
ケンタッキーのCMを見ると、無性にケンタッキーのフライドチキンが食べたくなるのと同じ現象だろうか――。
そして、普段行く回転寿司とは違う、回らない寿司屋へ・・・・・・。
高級寿司店に不慣れで緊張する私であったが、職人さんは気さくに話しかけてくれた。
私が来店した経緯(「つける」と「ひたす」の違いを考えることを通してマグロの漬けが食べたくなった)を伝える。
すると、職人さんはマグロに関する話をたくさんしてくれた。
聞いたことのある話だったが、「知ってます」なんて無粋なことは言わない。
そこまで詳しいことは知らなかった。
エッ!!
そうなの?!
翌日、私は図書館に走った。
無論、「漬け」について調べるためである。
数々の書籍に、「漬けマグロ」ができた経緯が載っていた。
「漬ける」という行為は、本来、食材を保存する目的があるのだ。
「マグロの漬け」も、当初は保存目的で作られていた。
冷凍技術や輸送手段が発達した現代において、「保存」の意味は薄れたが、名前の由来として残っている。
漬物も、その目的の第一は長期間にわたって保存するためである。
(冷蔵庫のない時代、春夏に収穫した食品を冬まで保存しなければならなかった)
他に「漬け」という言葉がつく料理はなかったか・・・・・・。
あっ!
”魚の南蛮漬け”だ!
南蛮漬けは、酢(甘酢)に漬け込んで作る料理だ。
酢の効果により、通常より長く保存することができる。
「漬ける」と「ひたす」の違いはいくつかあるが、「『漬ける』には長期保存という目的がある」というのが一番わかりやすいのではないだろうか。
というわけで、答え。
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