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多様性の科学(著:マシュー・サイド)

”多様性” よく耳にします。
さすがにこれだけ登場すると知ってる気になっている。
いや知ってる気になっているだけのような気がしてきた・・・。

そんな2021年に書店で見つけた本書は、多様性を深掘りする糸口になればと思い読み進めた一冊です。

それでは、すこし読書記録を書き留めておきます。

CIAは危険を察知できませんでした。当初から彼らの視点にはブラックホールのような盲点があったのです。

出典:多様性の科学(著 マシュー・サイド)

なんの話から始まるのかと思えば、「9・11テロ」 意表をつかれました。テロと対峙するCIA組織の構成について、多様性の観点から考察されています。多様性のモヤモヤポイントがいきなり少し解消されることとなりました。

CIAはとても優秀な組織ですが人材の偏りが失敗を助長していると本書は書いています。厳しい試験を通過して組織に入るのですが、そこに同類性選好といった偏りがテロ組織の動きを見抜けきれなかったとあります。

企業でも同じことがあると思っています。わが社にとって優秀人材を確保しようとすればするほど、偏りが生まれます。同時に一体感やチーム意識、同一性が芽生えることが偏りを覆い隠しているのかもしれません。
求める人材像をどのレイヤーで設定するのか、人材配置の柔軟性など、多様性は企業にとって大きな役割があることを再認識するスタートでした。

冒頭同様に、本書中盤で私の心にグサリとくる一文がありましたのでご紹介します。

銀行がせっかく雇った素晴らしい新卒の行員たち-それぞれ違った背景を持ち、さまざまなアイデアに溢れた若者たち-は、組織文化に「適応」しようと次第に型にはまっていったという。そんな変化を見るのはつらい。と彼女は肩を落とした。みんなはじめは独自の視点や意見を持っていたのに、彼らの声は少しずつ聞こえなくなっていった。組織に「認められた考え方」に合わない声はかき消されていったのだ。

出典:多様性の科学(著 マシュー・サイド)

心に刺さりました。何度も読み返しました。
長く人事として新入社員研修に携わっていた当時の研修風景が、リアルによみがえってきました。
私はほんとうに彼・彼女たちの色とりどりのスキルや考えを多様性としてとらえ、成長支援ができていたのでしょうか。企業カラーに染めすぎていなかったでしょうか。当時、個性を尊重するという姿勢は持ち続けていたつもりでしたが、改めて考えさせられる一文でした。

また私にとって多様性のヒントになる話も出てきました。こちらの章です。

Ⅳ ウサイン・ボルトが6人いても勝てない

出典:多様性の科学(著 マシュー・サイド)

わかりますよね、この章の展開。
リレーをするのにボルトを6人集めて勝てるのか!?
勝てるそうです。
タスクの単純さが大きな要素だということです。正解と不正解の二極しか答えがない、とにかく足が速い人を集めるといったものであればそれでいいと。しかし複雑性のあるような問題に取り組むときには、多様性が必要。例えばアイデア創出会議のようなものがそうなると書かれています。

求めている答えやアプローチ、その複雑さなどを見極めながら多様性を組み込む必要を感じました。

複数のアイデアの中間をとるようなことをすると矛盾が生じるからだ。「委員会が馬をデザインするとラクダになる」(みんなの意見を取り入れようとするとおかしなことになるという意味の慣用句)

出典:多様性の科学(著 マシュー・サイド)

せっかくの多様性も平均をとってしまっては残念なことになるという話も書かれていました。

企業が採用、教育、配置など多様性を組み込んだ運営をしていても、組織内の判断や運営でその多様性を活かさないと無になることを改めて学びました。組織全体でその有用性を認知して、行動まで落とし込むことはなかなか難しいですね。

他にも様々事例を使って”多様性”を分解し、説明してくれています。少し厚め(350ページ)の一冊ですが、楽しめる一冊でした。

感謝。


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