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本から 憧れを手にする

読書家の人に憧れる。
水を飲むように本を読む人。

私は本をあまり読まない。読めない。
スイッチが入るまで時間がかかる。

読んだ後の余韻は残っていても、それをどう思ったのか、何が好きだったのか、結局よく覚えていない。

先日も図書館で数冊借りて満足し、期限前に慌てて流し読み、間に合わず返却した。
いつも中途半端。


その帰り道、本屋でふと目があった。
季刊誌「スピン」

スピ」に反応してしまったのと
全体の佇まいがいいなあと思った。

表紙には、こうある。

言葉は、私に到来するものではない。
書くことは、自分からの出発である。
私を背にして他者へと向かい、
その人の眼前に立つ時、
はじめて言葉が生まれる。

ことば・柳美里


どきっとする。

中は短編で読みやすそう。
いしいしんじさん好きだし。
恩田陸さんも。

ざらっとした紙の質感が好きだった。
裏表紙には「かみばなし」。
株式会社 竹尾が関わっている。
(紙の専門商社さん)

いちいちキュンとしちゃう。

しかもお値段330円ですと?
えっこんなに素敵なのに?
これください!


連れてきたよ



改めて表紙を触る。
うーん、やはり好み。

次は本を後ろからめくる。
(自分でも理由不明の癖)

編集者さんの日常や、本に対する愛情たっぷりの言葉たち。
そしてこう続く。 

雑誌名「スピン/spin」の名付け親は恩田陸さん。
「スピン」は「回転」を意味しますが、書籍の専門用語で本に付いている「栞」の紐も「スピン」と呼びます。
忙しなく流れる日常に「栞」のように挟まり、読者の日々に少しの「回転・変化」をもたらす雑誌を目指します。

スキ



再び表紙をよく見ると、

スのしっぽが栞に!

宝物を見つけた気分。
まだ作家さんの作品を読んでないのに
きゃっきゃしてしまった。
いやもう全てが作品。

言葉を奏でる人、言葉を編集する人。
紙を愛する人、印刷を極める人。

色んな感性が集まって本という作品になっている。それに直に触れられることは、なんて特別な体験なんだろう。


ああそうか、
私は読書家に憧れるというよりも
読み解くことのできる感性に憧れるんだ。
すみずみまで吸収し、真摯に向き合って、表現している人。

もちろん手にしただけでは何も変わらないし、読んだだけでその人の感性が手に入るわけじゃない。

でも、憧れる。触れたくなる。
私の心がどう反応するか、気になる。



たぶんnoteを始めていなかったら
この本の前では立ち止まらなかった。

noteのおかげで
ちょっぴりアンテナが増えたのかな。

そして、私の向こう側に居る人に
「伝えたい」って気持ちが芽生えた、
のかもしれない。ほんの、ちょっぴり。


ちょっぴり



スピン。
心に栞をするように。

返却期限があるでもなし、
ゆっくりと、好きな時に味わおう。






河出書房新社 スピン(公式サイト
年4回、全16号限定発行

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