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階層膨張、役職インフレ

働く上で評価されているのかは気になるものだし、「よく頑張ったね」って言葉以上に、昇進とか昇給とか外部と比較可能な物差しで実績を作って外部にも高く買ってもらえるようになりたいのは当然のこと。そんな外部からも見えやすい評価である昇進とか役職ってどうなっているかを振り返ってみるのが今回のお話。

役職階層を定義するもの

日本法人の組織階層は、カントリーマネージャ>機能別組織長>一般社員の3階層から始まって、だいたいだけど5の階乗で階層が増えていく感じ。

5の2乗=25 / 5の3乗=125 / 5の4乗=625…5のn乗
って感じで社員数1-25あたりまでは3階層、25-625あたりは4階層、625-3125あたりは5階層…と(n+1)で階層が増えていくイメージ

経験則です

これには理由があって、3階層から始まるのは人数が少ない状態でも、会社対会社のお付き合いは原則Level to Levelのコミュニケーション階層を作って、役員クラス、管理職クラス、一般社員クラスがそれぞれコミュニケーションをとる仕組みが必要なんですが、作らないと何が起きるかって言うと単純に「交渉毎でより上位の役職者をテーブルにつかせた方が有利」な判断に走って、下っ端が相手方の上位者と交渉する“階層マウント”したがるのでそれを封じる意図があると思うんだわ。

もうちょっと具体的に言うと「ヒラ対ヒラ」で交渉条件が膠着しちゃった場合、より裁量権があるであろう上位のものを席に付かせる上で先方にも上位のものをつかせることで、より柔軟な裁量のもとで交渉できる感じになるんだけど、その階層が人数が少なくてトップとヒラの2階層じゃあ、ヒラが呼び出したそのすぐ上がトップだと脚元見られちゃうしってところが大きい。

なもんで人数は少なくても3階層、場合によっては担当先への見せ方で必要ってことで同じチーム内の別のメンバーを上司って見せながら、担当兼チームの別メンバーの上司役を相互にやりながら、メンバーが増えるまで頑張ってるところもあって立ち上げ期の初期メンバーに「この時期ってどうでした?」ってお題をふると、嬉しそうに「あの頃はさぁ。ホント大変でそれと比べれば…」って昔話で気持ちよくなって仲良く慣れるのでおすすめですよ。(立ち上げ期についてはこの記事を参照)

Span of Control

そんでもって社員数が増えれば階層が増えるのは、マネージャが管理する適切なメンバー数(Span of Control)が約5-7名ってことで部下が8人くらいになると、1人マネージャにして2チームに分け、その上司も配下のチーム長が5-7名くらいになるともう1階層上のマネージャと同階層のマネージャを任命して1階層増やして…を繰り返す。

なもんで基本的には、会社の拡大フェーズにはズンズン階層が増え、それに合わせて昇格者だったり新上位役職みたいなものが増えていくわけですよ。

階層登山エスカレーション

で階層が増えると、やっと「弊社のような大企業の要請は吹けば飛ぶような貴社に受け切れるわけなかろう。要望を聞き入れるキャパがあるのなら話くらい聞いてやるぞ」とは言わないもののそんな雰囲気でシステムも下請け部品と同じように毎年原価低減できるように契約金額を下げる交渉をするような大企業さんと提案できる状態になるんですわ。

いやあなんと言うかそんな会社さんって、ビッチリ社内の階層競争で勝ち上がって来たと言うか、リスクを取らず失点せずに生き残った方々が多いからなんですかね。自社が変えるとか自社のユーザ部門に要請するとかってホント嫌がるんですよ。そりゃあDXなんて無理だわなと。

でもって無理難題はベンダーに如何に呑ませるか、そのための言質を如何にとるか、その言質を如何にベンダーの上位階層に担保させるか、ってことに全集中なわけですよ。

なもんでカードゲームじゃないけれど、より下の階層のメンバーが直接Level to Levelを超えたベンダーの役職者とかトップを呼びつけて、自社の上位階層カードは温存して交渉しようとしたりして、担当者には「御社の上位役職者からはこのようにお約束いただいたはずですが」なんて感じの階層マウントに励む。

いや、だから営業系の役職者にそもそもない機能を追加しろって言っても無理だし、それ上位階層にエスカレーションしても開発部門からすると「事情は分かった。でそれいつまでに作ればどれくらいのビジネスになるんだい?えっビジネス規模は膨らまないけど困っているから今月中に?ハハハ面白い冗談だね。日本法人のトップが言っている?アメリカでもNYCエリアの営業部長が追加で1Mのビジネスになる要望上げてるんだけど、どう考えてもコッチが優先でしょ。まあ要望は理解したから期待せず気長に待ってもらうしかないかな。なにか状況に変化があればまたアップデートしてくれよな。じゃあな。」って感じにしかならんのですけどね。

執行役員インフレーション

階層が増えて5-6階層くらいになると日本法人でも、グローバルの階層に準じて色んな役職が増えるんですが実態としては3階層くらいでしょうか

  • エグゼクティブ層(EVP/SVP)

    • 社員数によるけれど日本のトップがEVPかSVP。和風な役職名だと代表取締役、専務執行役員、常務執行役員

    • グローバルも社員数やM&Aなんかでこの階層も膨らんで、EVPとCEOの間にPresidentとかCxOとかChief hogehogeみたいな役職が増えていたり

  • 執行役員層(VP/Snr. Director)

    • イメージ的には本部長。会社によってはここに常務執行役員とか業務執行役員とかあるけど、少なくとも部下は管理職でいわゆる2nd Line以上のマネージャ

  • 現場管理職層(Director/Snr. Manager/Manager)

    • 部長とか課長。基本的に部下が一般社員の1st Line マネージャが多いけど、2nd Lineの場合もある。

なもんで伸びてる会社や成熟期に突入している会社って、意外と執行役員とか部長は多いんですよ。もちろん本人の努力もあってのお話なんですが、成長する会社に入ったからこその時流に乗れた部分がかなりの比重を占めるので、たまにみかける「GAFAMで最年少ホゲホゲ」とか「外資系IT部長のナンタラ」とか、ほんのチョッピリ「うんキャッチーなフレーズだよね。でも過去の栄光なんて賞味期限もそんな長くないから頑張ってね」って応援してあげるくらいが程よい反応じゃないかと、近所のマックでJKが言ってました。

昇進速度は上司で決まる

業績が良い外資系ITに入社して社員数も拡大して、自分より少し前に入社した人達が昇進しているような幸運な環境で働けることは何より幸運なのかもしれませんが、昇進できるかどうかや部署は別だけど中途同期に先駆けて昇進できるかはほぼ上司で決まります。

もちろん日本法人であるが故に営業として数字を上げ続ける事は、非営業部門と比較して圧倒的に昇進や昇給が速くなります。(だって日本法人は営業が生命線ですから)

そして営業部門でも非営業部門でもビジビリティ。アレオレ詐欺だろうが

リスクが高そうなタイミングでは距離を取りつつ成功が見えてきた時に案件に絡むポンコツ部長だろうが

全ては深い階層の中で時として実際にやった以上のことを成果のようにアピールして偉い人達から「あっお前良い仕事したじゃん」と認知してもらえるかどうかであって、縁の下の力持ちは縁の下でなにかすごい頑張っているような気がするけれど、どう評価したら良いかわからない、ちょっとした「あいつ良い奴なんだよね。誰かに評価してもらえると良いねー(評価するのはワタシじゃない)」で放置されちゃうのもよくある話。

話は外れちゃうけど、ビジビリティに関しては、日本以上に米国人は上司やその上の上層部にアピールするための努力だったり、機会を逃さない積極性が凄いから、ここぞってプレゼン機会の前とか普通に徹夜で資料改定とかやっちゃってますからね。

そんな営業部門でビジビリティが高いハイスペさんでも、上司の役職が同列の部門長より低いと昇進しにくいんですよ。昇進って同列の部門で定期的に推薦者をリストで出して同列の部門長とその上司で評価会議するんだけど、役職が相対的に低いと昇格枠が決まっていると力負けしちゃうし、その上司以上の役職への昇格ってまあないんですよ。

なもんで、昇進の速い上司や相対的に役職が上の上司の下でお仕事できるように、うまく部門異動できるように画策してみたりするのも大事。

異動を望まれる実力と実績を持つのは勿論のこと、異動先の出来る上司はサイコパスの可能性が高いってあたりの向き不向きが気になるところだけど、昇進昇格を目指す時点で貴方自身がサイコパスかもしれないのでまあ問題はないと思いますよ。知らんけど。

(今回のイラストは、Stable Diffusionさんによる「高層ビルに向かってハシゴを登る競争をしているサラリーマン」でした)


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