マガジンのカバー画像

探究 - PUBLIC DESIGN LAB.

5
公共とサービスデザインに関する調査、研究、論考を紹介します。
運営しているクリエイター

記事一覧

デザインを「道具観」から考える

ここ最近は「庭師としてのデザイナー」のあり方をずっと考えているわけだが(詳しくはこちらの記事参照)、先日ある議論をしていてふと、そのカギは「道具」にあるのでは? と思い至った。正確に言うと、道具に対するスタンスや価値観みたいなもの(ここでは「道具観」と呼ぶことにする)である。 デザイン思考には、さまざまなメソッドを集めた「ツールボックス」という概念が根底にある。私が初期にデザイン思考を学んだ書籍の一つに、奥出直人さんの「デザイン思考の道具箱」があるが、思えばこの頃から、「デ

「庭師としてのデザイナー」を深読みする

突然だが、ブライアン・イーノがこんなことを言っている。 これは、スウェーデンのイノベーションラボであるVinnovaのダン・ヒル氏(当時)が、ブライアン・イーノ氏とのコラボレーションによってまとめた「Design Principles for the street(ストリートのためのデザイン原則)」の1つめの項目として書かれているものだ(久しぶりに見たら有料記事になってた。前は無料で見れたんだけどな…)。 この言葉がけっこう印象的で、1年ほど前からちょくちょくいろんな人に

「シビックサービスデザイン」のすゝめ

6月から、豊岡市で「シビックサービスデザインゼミ」という活動を始めました。地元の中間支援組織や行政職員、大学生などの有志が集まって、サービスデザインをともに学び、実践する活動です。今回は、この活動に至る背景をご紹介し、「シビックサービスデザイン」が持つ可能性について考察します。 きっかけは豊岡の中間支援組織「ちいきのて」ことのきっかけは、豊岡で地域コミュニティの活動を支援する「ちいきのて」の青柳さんからいただいた相談でした。青柳さんとは昨年から豊岡のプロジェクトでご一緒して

あたらしい公共をつくる、あたらしいつながりをつくる

2014年のある日、少し気分を変えたくなり、当時住んでいた高田馬場のマンション近くの公園へ行った。小さな滑り台やブランコ、公衆トイレ、ちょっとした広場、コンクリート製の一人がけのスツールがいくつか、あと桜の樹が一本あるだけで、ボール遊びや花火を禁止する立て看板が立っている。ふと「ここでぼくはどう過ごせばよいのだろう」と感じた。子どものためのもの? でもぼくも一人の納税者だ。ぼくのための居場所はどこにある? 見回すと何人かの男がコンクリート製の一人がけのスツールに座り静かに前を

ぼくらがPUBLIC DESIGN LAB.に取り組む理由

2014年に、公共におけるサービスデザインの可能性を探究する【PUBLIC DESIGN LAB.(PUB. LAB.)】というチームを、同僚である小山田那由他さんと一緒に立ち上げ、以来、いくつもの調査研究やプロジェクトを実践してきた。当時と比べると、サービスデザインに対する世間の注目度はかなり高まってきている。現在、サービスデザインは、行政のDX推進において、公共サービスの体験を利用者視点で改善し、それに伴う業務改革(BPR)を実現するためのアプローチとして、その重要性が認