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10/6、冷蔵庫開けて。

宿備えつけの冷蔵庫は、宿泊客ならだれでも使ってよいことになっている。

冷蔵庫に入っているモノで、個人の嗜好が見える。他人の家の冷蔵庫を開けてみて、自分の家との違いに驚くことも多いだろう。
宿の冷蔵庫は、そういう他人の冷蔵庫をいくつもまとめて開けたようなものなので、面白さもひとしおである。

コンビニで買ってきた飲み物や観光地で手に入れた京土産などが思い思いに詰め込まれているのを見ると、ホステルという場所の「縮図」だなあと思ったりする。
同じスペースの中に違うモノがあり、(望む望まざるに関わらず)お互いに少しずつ存在を主張しつつ、共存している。

冷蔵庫に"保冷"を求めるように、宿には”快適”を求める者が集う。
多種多様なヒトビトが織りなす空間は、毎日違った趣になる。

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多いのは、やはりというべきか飲料。お茶よりはいろはすのような水(または水に近いもの)のほうが目につく。味が自国と違うことを警戒して、買い控えたのだろうか。
シンガポールを訪れた際、その辺で売っているお茶がことごとく甘くてヘキエキしたのを思い出す。日本のペットボトル飲料の主力たる緑茶などは、逆に苦味が強いと思われているのかもしれない。

加えて、お酒の類も多い。グリーンラベルやほろよいなど、見慣れたラベルが並ぶ。日本で買っているのだから当たり前なんだけど、外国人もこういうお酒飲むんだね、と頭の悪いことを考える。

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なぜかよく見かけるのはブルガリアヨーグルト。みんな朝に食べている。
とんとお金のない僕も、ヨーグルトだけは「やっぱりこれでしょ」と値の張る明治の製品を選んでしまう。だから、ブルガリアヨーグルトを食べている宿泊客には親近感が湧いてついつい話しちゃう。

あと、最近気になったのは「Matcha Republic」の包み。外から見る分には飲み物なのかお菓子なのか判別がつかないが、美しいデザインと確かな味で人気を誇るお店だけに、興味が増す。

別の意味で気になったのは、食べかけのプリン。スプーン付き。
食べきっちゃいなよと思うが、ホステルに余計な詮索は無用なのだ。

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と、ここまで宿泊客の食品を見てきたが、実はこれらは氷山の一角に過ぎない。なにがそんなに冷蔵庫を占拠しているのか?

僕のご飯である。

冷蔵庫を開けるとポケットには調味料類が並び、中も野菜や肉やらで半分ほど埋まっている状態。張り出すセロリ。主張する青魚。鎮座する納豆パック。
宿泊客への申し訳なさは大いに感じているのだが、こちらの生活の都合もあるので致し方ないのである。
冷凍保存に切り替えるなどして、どうにかやりくりせねば。

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【夕食のコーナー】

そんなこの日は冷蔵庫一掃キャンペーン料理。冷蔵庫にあったもの全てを具材にしたスパゲッティである。

‥‥スパゲッティ?
焼きそばの間違いでは?

使っている麺はスパゲッティだから、間違いはないはずなのだが、見れば見るほど焼きそばに見えてくる。
味はちゃんと洋風でした。

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こうして冷蔵庫が空いたのもつかの間、翌日はスーパーの特売日とあって、またも大量の野菜が運び込まれたのであった。

宿泊客の人たちは、まごうことなき他人の家の冷蔵庫を開けた気分になっていることだろう。家代わりとしてここに住んでいる身として、少々申し訳ない。

ホステルに住み込むのも、決して楽ではない。


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