きゅーぎょーしゃ

京都の宿で”借りぐらし”していました。 休業者、あるいは旧・業者、いまとなっては旧・休…

きゅーぎょーしゃ

京都の宿で”借りぐらし”していました。 休業者、あるいは旧・業者、いまとなっては旧・休業者。

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8/23、トランクと各駅停車。

闇をたたえた空、静けさがまとわりつく夜を、キャスターの走行音が裂いていく。オーストラリアに2週間滞在して以来、クローゼットでホコリをかぶるのと場所を占拠するほかに仕事のなかった巨大なトランクが、久々の外気を浴びてガラガラと鳴いた。 貧乏な大学生には、移動手段に新幹線や飛行機といった”ぶるじょあ~”なものを選ぶ余裕がない。旅行といえば青春18きっぷか深夜バスでの移動が基本だ。ましてやひとり暮らしをはじめるとなれば、節約にはより一層のチカラを入れねばなるまい。 一方、のっけから

    • ギャクバリストを照らせ 20230213

      それは異様な空間だった。 後楽園駅で下車し、人波に乗ってペデストリアンデッキを渡ると、ドームをぐるりと取り囲む通路の至るところで人々が滞留していた。そのほとんどが親愛を示す”証”を身につけ、交流し、同じ御旗の元で愛を確かめあっている。見渡せば見渡すだけ、誰かに愛を注ぐ者の熱を帯びた姿が目に入る。個々の”証”から、一張羅から、そして表情から立ち上がる感情のパワーが重なり合ったがゆえの、異様な空気をまとった空間がそこには広がっていた。 2023\2\12、東京ドームではこれのD

      • すぐ忘れちゃうからな 20230206

        高校では芸術科目が選択式だった。美術や書道には目もくれず選んだ「音楽」の授業では、オリジナル曲を作って披露しようという課題があった。自分で作る曲には内面がヒトカケラでも反映されてしまって、さらにその内面を誇るかのように他人サマにお見せすることができようか、いやできまい、と自意識との不必要な戦いで時間を浪費しながら、なんとか曲を作った。 最初は「存在しない発車メロディメドレー」を作ってお茶を濁そうと思っていたものの、発表順のクジで先頭を引き当ててしまったからさあ困った。発車メ

        • ありがとうJanetter 20230131

          1週間をめどに投稿しようと思っていたが、さっそくその誓いを破ってしまった。知らん知らん。 ||| twitterがサードパーティ製クライアントの多くを締め出す中で、私が長年愛用していたアプリ・Janetterもあおりを食らってついに使えなくなってしまった。一度目のアプリ一斉規制時には難を逃れており、このまま使い続けることができるかも‥‥とぬか喜びしたのもつかの間で、数日後の再規制により401エラーを吐くように。 明確な予告があるならまだしも、なんとなく使えなくなる寂しさは

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        8/23、トランクと各駅停車。

          言わなくてもいいこと 20230123

          それなりの量の文章を、誰に見てもらうためでもなく生成してインターネット上に公開するという行動になんらかの価値を見出すとすれば、つまるところ自分がやりたいかどうか、に尽きる。 何らかの調査を伴った実のある内容を多少の正義感とともに開陳するならともかく、個人の矮小な生活とその延長にある思考を言葉に起こしたところで誰かのカテになるとは思ったこともないし、逆に自分以外のなにかのためにわざわざ・しぶしぶ書いているわけでもない。ましてや強制されてもいないのだから、書きたくないときにムリ

          言わなくてもいいこと 20230123

          パソコンの灯火

          目下、部屋には稼働しているパソコンが2台ある。モニターにつないでモバイル性を殺したメインのノートパソコン(hp製)に加え、以前使っていた古めのノートパソコン(Dell製)を、深夜ラジオの録音用に常に電源の入った状態にしてある。中学生の時は1台しかない自分のパソコンを昼に夜にと酷使してあっという間にお陀仏となってしまったため、hp氏を常時動かすのは気が引ける。もっさり反応とはいえ使用年数の割に元気なDell氏はファンの音もうるさくなく、少々変則的とはいえこの編成で数年を過ごして

          パソコンの灯火

          隣の隣のお姉さん

          仮住まいの地である京都から帰ってきたのは、今年2月のことだった。この章に「半年にわたる長い充電期間」という聞こえのいいタイトルを与えて締めくくるべく、寝泊まりした2畳半の部屋を念入りに掃除している頃、宿では海外客のキャンセルが目立ちはじめ、近くの薬局には品に代えて品薄の文字が並びはじめていた。スーツケースの発送手続きをしたコンビニの前で、「また会おう」という言葉とともに宿主と交わした握手をよく覚えている。次はアジサイが花開く梅雨どきにでも、この町に帰ってくるつもりでいた。

          隣の隣のお姉さん

          アラガイヤー

          会話をするとき、なんとなく「コロナ某々」という語を使わないようにしている自分がいる。罹患せずとも程度こそあれ精神的鬱屈から逃れられない中で、口にするといっそう気が滅入る。 それに、これは自分でもよくわからないのだが、現在の生活形態をもたらした原因をソヤツだけに押し付けたくない思いもある。「ソヤツのせい」と断じることはとても容易で、それは数々の頓挫に対して生まれた悲しみや怒りといった感情のはけ口として、なんとかその矛先を人間社会に向けないようにするひとつの解決策でもあるけど、も

          5/15 ジープ

          小学校は、まず坂を下って、そののち坂を上ったところにあった。 家を出て右を向くと交差点があって、そこを右に曲がるとはじめの坂がつながっている。坂の上で視線をまっすぐにすると、坂の下の街並みの上に、小学校で一番高くて大きな針葉樹のてっぺんが顔を出しているのが見える。坂を下りていくと針葉樹がだんだんと家の後ろに隠れていく、それが不思議でわざと歩く速さを変えてみることもあった。 坂の根っこはもうひとつ別の坂の根っこに接していて、2つの坂から流れてきた水は交わったのち、もう一本の

          年越しという感覚

          「申し申し」が「もしもし」になって定着したなら、「あけましておめでとう」も「あけおめ」になって定着するのだろうか。 *** 年末年始は”家”を空け、小旅行をハシゴしていた。数日の間をおいて帰ってみると、仮住まいも拠点として家の雰囲気をまといはじめていて、ここにいる時間の長さに改めて思いを馳せた。 「年が終わる気がしない」とか「年が明けた気がしない」といった会話はこの時期の定番ともいえようが、考えてみればそりゃそうだろという話で、”年”なんてそもそも存在していないからだ。

          年越しという感覚

          セカイが語りかけてくる感覚に襲われる

          セカイのすべてがコトバに「見える」‥‥そんなトキが、いくどかあった。 それは小説を読みふけったあと。作家のつむぐ別の世界へといざなわれ、自分を取り囲むセカイから指一本分浮いているような時間を過ごしたのち、ふと本から顔をあげたとき。 もとのセカイに降り立ったのに、別の世界を覗くのに使っていたゴーグルが外れなくて、セカイと世界が入り混じる。世界の筆致で、セカイのあらゆるものが染められていく。 夏目漱石を読んだあとは、漢語混じりの重々しげな文体で。 I.W.G.P.を読んだあと

          セカイが語りかけてくる感覚に襲われる

          突然ですが、毎日投稿を当面停止します。1ヶ月あまり、自分でもよく続いたほうだと思います。ご覧くださった皆さま、誠にありがとうございました。 今後は不定期での更新を予定しています。

          突然ですが、毎日投稿を当面停止します。1ヶ月あまり、自分でもよく続いたほうだと思います。ご覧くださった皆さま、誠にありがとうございました。 今後は不定期での更新を予定しています。

          ただ無事を祈るばかり

          宿泊客の予定帳を見たら、12日の欄に「TOKYO:TYPHOOOOOOOOON」と書いてあって、本当に気の毒。 台風の危険に毎年さらされる日本人ですら未曾有(みぞうゆう)の事態にオロオロしているというのに、訪日のタイミングが本当に悪かったとしかいえない。 首都圏の方々、どうか安全第一で生き抜いてくださいますよう。

          ただ無事を祈るばかり

          10/8、にぎやかな一人部屋。

          ホステルは、ホテルと比べて他人の存在を感じやすい。 町家を改装して作られているこの宿は音が響きやすいこともあり、ひとつ屋根の下で共同生活をしている他人の物音だったり話し声だったりがしばしば耳に入ってくる。 ドミトリーの二段ベッドが林立する部屋の中で他人の寝息を耳に刺しながら寝ていた自分は、そんな環境にももう慣れっこなのだが、ホステルタイプに泊まった経験の浅い宿泊客は戸惑いの色を見せることがある。 トイレも手洗い場も部屋の外にあるから、どの宿泊客も部屋との出入りがどうしても多

          10/8、にぎやかな一人部屋。

          10/7、読書のための喫茶店。

          烏丸丸太町の交差点で、近くにひと息つける場所がないかと検索したら、ある喫茶店が出てきた。「読書を楽しむおひとりさまにオススメ!」と言われたら、白羽の矢も自ら立たせるというものだ。 自転車を漕ぐこと5分、地図で指定された場所には年季の入った雑居ビルがあるだけ。よく目を凝らすと、その喫茶店が置いたとおぼしき駐輪場の案内が。 1階は車庫なので、喫茶店に入るには薄暗い階段を登って行かなければならない。しかし、どうみてもただの雑居ビル。こんな怪しいところに入っていっていいのか? そも

          10/7、読書のための喫茶店。

          10/6、冷蔵庫開けて。

          宿備えつけの冷蔵庫は、宿泊客ならだれでも使ってよいことになっている。 冷蔵庫に入っているモノで、個人の嗜好が見える。他人の家の冷蔵庫を開けてみて、自分の家との違いに驚くことも多いだろう。 宿の冷蔵庫は、そういう他人の冷蔵庫をいくつもまとめて開けたようなものなので、面白さもひとしおである。 コンビニで買ってきた飲み物や観光地で手に入れた京土産などが思い思いに詰め込まれているのを見ると、ホステルという場所の「縮図」だなあと思ったりする。 同じスペースの中に違うモノがあり、(望

          10/6、冷蔵庫開けて。