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緊急対応にもお伺い?

私が初任教員として赴任した学校の校長は何かにつけて教育委員会に「お伺い」を立てる人でした。相談があって校長室に行くと「委員会に聞いてみないとわからない」と言います。「あなた自身が判断できないのですか?」とつい聞きたくなりました。

校長の姿勢は教頭にも影響していました。ある日の放課後、学校に爆発物を仕掛けたという電話がありました。生徒は部活や委員会等でまだたくさん残っています。生徒をすぐに避難させなければなりません。職員室は大騒ぎになりました。校長が出張で不在だったので教頭が指揮を執る立場にいましたが、当時は危機管理がまだ不十分な時代です。授業中や休み時間の訓練はしていましたが、放課後の訓練はしたことがありません。さらに火災や地震を想定した訓練はしていましたが、爆発物に対する訓練はしていませんでした。

その時も生徒をどこにどうやって避難させたらよいか教職員もわからない状態でした。爆発物がどこに仕掛けられたかもわかりません。そんな中で教頭が「委員会に聞け」と言っているのが聞こえました。私は驚きました。「緊急事態なのに教育委員会に聞く?」そんなことが不合理であることぐらい新米教師の私にもわかります。幸い「そんなことよりすぐに生徒を避難させるべきだ」という教務主任の発言に教頭も同意し、教職員全員で生徒をグランドに避難させました。警察にも通報しました。結果的に何事も起こらず、不審物も発見されませんでした。

教師になって間もない頃のその体験は今も記憶に鮮明に残っています。避難方法は正しかったのか、グランドに避難させることが賢明だったのか、教職員の動きはあれでよかったのか疑問も残っています。現在はしっかりとしたマニュアルがつくられていると思いますが、マニュアル通りに行動することが賢明とは言えない場合もあります。現に東日本大震災のときににはマニュアルに沿って行動したために生徒が犠牲になったということもありました。避難訓練の大切さや安全教育の重要性は理解されていても、とっさに正しい判断ができるとは限りません。教員一人一人の危機意識や管理職の危機管理能力、学校長のリーダーシップなど生徒の安全を守るために教師が取り組まなければならない課題はたくさんあると感じます。少なくとも緊急事態に際して教育委員会の判断を仰がなければ決断できないということはあってはならないと思います。

ちなみに教頭は翌年他校の校長になりました。

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