マガジンのカバー画像

副業にあたって役立つ裁判例

10
運営しているクリエイター

記事一覧

副業にあたって役立つ裁判例⑫ 国際タクシー事件(福岡地裁S59.1.20判決)

副業にあたって役立つ裁判例⑫ 国際タクシー事件(福岡地裁S59.1.20判決)

https://docs.google.com/presentation/d/1mzJ5N3MPoWJVtJZFaxPwK59j8_desBT2lijRyPCe7lg/edit?usp=sharing

タクシーの事例ですが、かなり限界事例だったのではないでしょうか。

15万円がかせげるほどの副業ですから、副業にかけた時間は多いです。タクシーの運転手は安全運転ができるようコンディションを整えるべ

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例⑬ ピアス事件(大阪地裁H21.3.30判決)

副業にあたって役立つ裁判例⑬ ピアス事件(大阪地裁H21.3.30判決)

https://docs.google.com/presentation/d/1h9-Zd___xtM1RH1aAWUgpv2ZGuosdnICVxvm_2orvO0/edit?usp=sharing

今回は、ピアス事件を紹介します。年末に出されたんですね。
解雇有効なので、とてもいやな思いで4月1日を迎えたかと思うと、すこしかわいそうです。

しかし、競業の会社で取締役となり、本業の会社の秘密

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例⑩ リンクスタッフ事件(大阪地裁H27.8.3判決)

副業にあたって役立つ裁判例⑩ リンクスタッフ事件(大阪地裁H27.8.3判決)

10個目の裁判例は、すでに退職済みだったこともあり、副業を行ったこと等を理由に損害賠償をした事件です。

損害賠償と一言にいっても、その内容は少し複雑。

賠償してほしいとした損害は、①情報の不正取得、②調査費用、③引き抜き、④有給中の賃金分のお金は返すべきお金、⑤信用棄損と5つに分かれています。

結果、認められたのは②(30万円)のみ。
①については不正取得が証拠上明らかでなかった。
③につい

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例⑦ 東京地裁H31.3.8判決

副業にあたって役立つ裁判例⑦ 東京地裁H31.3.8判決

著名裁判例ではありませんが、新しめの裁判例を紹介します。裁判例の名前は特についていないと思います。

平成30年1月に厚労省のモデル就業規則が副業につき、届出制(実質許可制)となったりしたこともあり、副業を取り巻く状況は大きく変化した(もしくは変化しつつある)といわれています。

そのような中で、どのような裁判例があるかも検討したいと思い、取り上げました。

もっとも、本件はさすがに競業避止義務違

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例⑥ マンナ運輸事件(東京地裁H24.7.13判決)

副業にあたって役立つ裁判例⑥ マンナ運輸事件(東京地裁H24.7.13判決)

これまでの裁判例①-⑤は、副業がばれて解雇されたケースでした。

今回のマンナ運輸事件は違います。

副業をちゃんとしようとしたものの、不許可になり続けた従業員が、それじゃあ困るといって稼げたはずのお金を賠償しろ、と求めた事案です。

この事件では、給与の減額が大事な背景としてあります。仕事時間が減り、給料も減る。しかし、支出の削減には限界がある。そうすると副業で稼がないといけない。こういったこと

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例⑤ 十和田運輸事件(東京地裁H13.6.5判決)

副業にあたって役立つ裁判例⑤ 十和田運輸事件(東京地裁H13.6.5判決)

本件は、就業規則が周知されていないという大きな失策があった会社です。

そのため、懲戒解雇については、簡単に無効とされてしまいます。

一方で、普通解雇については、僕としてはかなりギリギリな事案だと思います。会社の顧客との取引ですから、信頼を害したりするリスクが高いと考えられるからです。会社が副業を黙認してこなかったことの証拠が会社の人の尋問くらいしかなさそうだったので、そのあたりが重く見られた(

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例④ 平仙レース事件(浦和地裁S40.12.16判決)

副業にあたって役立つ裁判例④ 平仙レース事件(浦和地裁S40.12.16判決)

4番目に紹介するのは平仙レース事件です。

こちらは③の事件とことなり、懲戒解雇が無効とされました。
大きな違いは、副業にかけていた労力と目的でしょう。

副業にあたって役立つ裁判例① 小川建設事件(東京地裁S57.11.19判決)

副業にあたって役立つ裁判例① 小川建設事件(東京地裁S57.11.19判決)

このコロナの中、副業を始める方も多いのではないでしょうか。

僕個人としては、副業には大賛成。しかし、副業には落し穴も。

その落し穴にはまることのないよう、裁判例を紹介していきたいと思います。

最初に紹介するのは、小川建設事件。

こちらから教訓にすべきこととして、①副業が許可制の場合、無断で副業をするのは裁判上不利になること②副業で長時間の労働をすると、そのことを重視して、解雇されるおそれが

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例② 都タクシー事件(広島地裁S59.12.18判決)

副業にあたって役立つ裁判例② 都タクシー事件(広島地裁S59.12.18判決)

副業するにあたって労働時間の管理は頭の痛い問題です。

頭が痛いだけではなく、それが理由で解雇が認められる可能性があるのは、先に紹介した裁判例①小川建設事件のとおりです。

こちらも限界事例と思ったほうがよいでしょうが、具体的な指導注意がなかったことを重視され、懲戒事由該当性までは認められたものの、解雇は無効とされた裁判例です。

具体的な注意がなされるまでは解雇されないと考えるのは危険です。

もっとみる
副業にあたって役立つ裁判例③ ジャムコ立川工場事件(東京地裁八王子支部H17.3.16判決)

副業にあたって役立つ裁判例③ ジャムコ立川工場事件(東京地裁八王子支部H17.3.16判決)

3つ目はジャムコ立川工場事件(東京地裁八王子支部H17.3.16判決)。

こちらは①、②と異なり「懲戒」解雇が争われています。

懲戒解雇の場合、懲戒解雇事由の該当性と懲戒解雇の相当性の2段階で判断されますが、図ではそこは簡略化しています。

本業と全く両立できない形で副業をしてしまうと、解雇を有効とする方向に強く傾きますね。