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詩集B(20代の頃に書いた作品群)

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社会派ミステリー小説、PHASEシリーズの著者 悠冴紀が、大学時代から20代の終わり頃にかけて書いた(今へと繋がるターニングポイントに当たる)詩作品の数々を、このマガジン内で無料… もっと読む
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2019年11月の記事一覧

詩『ひとり』

作:悠冴紀 私はやっぱり 「ひとり」が好きなんだなあ 今日もこのときを待っていた 街が 人々が 寝静まり 紺瑠璃の宇宙と 向き合う時間 静けさの中で 私は独り 果てしない自由を手に入れる 宇宙にそっと囁きかける 歌のような 詩のような 秘密の声を 時間の生まれる歪みを見つめ 惑星の生まれる揺らぎを知る 「ひとり」の時間そのものに酔いしれて 背筋に沿う清流の音を聴く これ以上の贅沢があるだろうか 夜の紺瑠璃 静寂のコンツェルト 宇宙との一体化 私の好きな 「ひ

詩 『北へ 北へ』

作:悠冴紀 数年前まで 南の国に憧れていた どこかの無人島で 潮の香りに包まれて 独り 日暮れを眺めたかった 今は 北へ向かっている なぜなんだろう 北へ 北へ 魅かれていく なぜなんだろう 快感だった暑い日差しが 今は苦痛 苦痛だった冷たい風が 今は快感 元居た場所からは大勢が去り 迫害者たちが待ち構えている 居場所にしたかった街は 大地に揺られて変わり果てた 今は 行き場だけを求めている すべてに理由が必要だろうか 北へ 北へ 魅かれていく 帰る場所も

詩 『救 済』 (20代前半の作品)

作:悠冴紀 私が最も救いを期待したとき 求めた救いは私に背を向けた たぶんそれで良かったんだ おかげで私は立ち方を覚えた 自分で考える機会を得た 私に最も救いが必要なとき 私はもう救いを期待しなくなっていた たぶんそれで良かったんだ おかげで私は歩き方を覚えた 一人で闘う機会を得た 私を救おうと言う者が現れたとき 私はその救いに偽善の陰を見出し拒絶した たぶんそれで良かったんだ おかげで私は生き方を覚えた 自分をダメにする存在を見抜く機会を得た 救われない