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詩集B(20代の頃に書いた作品群)

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社会派ミステリー小説、PHASEシリーズの著者 悠冴紀が、大学時代から20代の終わり頃にかけて書いた(今へと繋がるターニングポイントに当たる)詩作品の数々を、このマガジン内で無料… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

詩 『蛹』

作:悠冴紀 君は蛹 君は君自身から逃げ去る者 そして蛹は眠るもの 君の努力は繭の中 いつも行動を伴わない 主体性ある行動を評価されるのが怖くて 受け身の姿勢で隠れている 空気さえ動かすまいと 自らを封印して固まっている 関係はいつも一方通行 他との交わりのない小さな殻の中で 君はただ独り 考えるだけ 誰かが働きかけてくれるのを 君はただひたすら 待つだけ やがて皆が去り 君は独り 取り残された 流れやまない時間と 変化の絶えない世界の中で 他との関係一つ築け

詩 『蝶』

作:悠冴紀 私は羽ばたく者 変化を拒まず受け容れる者 飛び出す勇気を持てない君の分まで 高く舞おうと 大きく羽を広げ 出し得る力を 出し尽くす ほかならぬ君がそう求めた 私はいつも 君の生の代役だった 私は共に飛びたかったのに ジレンマが二人を裂き とうとう私は飛びたった 二人分の重みを背に 二人分の羽ばたきで 二人分のエネルギーを消耗して 私は今 甕覗き色の空を舞う 君と私 二人分の願望を胸に この命を削りながら いつの日か 私の鱗粉が君の繭に降りかかり 君