花火P1020804

詩 『夜 風』

作:悠冴紀

涼やかな夜風がカーテンを揺らし
祭りに賑わう人々の声を運んでくる
遠いどこかから微笑ましげに

夢を抱きしめる子供たちの声
夢を思い出した大人たちの声
遠くに灯る屋台の明かり

やがて街は眠りに就き
夜風が余韻を運んでくる
微かに残る声の木霊を吸収して

涼やかな夜風が流れ込む
街を見下ろす窓から窓へ


通り抜けていく夜風に吹かれ
囁くような声の余韻に
私はそっと微笑んだ

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※ 2005年の作品。

ニヒルな作品が多いPHASEシリーズの著者、私こと小説家 悠冴紀の詩作品の中では、例外的と言って過言でないほど素直に楽しげな一作です(笑) 当時28歳でした。

最近はすっかりオクトーバーフェストやベルギービールウィークエンドといったビアフェスの常連で、公園植物園で開催されている季節の花々のフェスなどにも好んで参加している私ですが、元々は(幼少時代は特に)、大勢の集まる騒がしい場所が苦手で、イベントの類いがあると、大抵は背中を向けて人とは逆方向に去っていくタイプでした。ただし、そんなときでも、何故だかお祭りどきの賑わいを、中心部から外れたひっそりとした場所で遠目に眺めやるのは、風情があって好きだったのです。

地元で夏祭りが開催される度に、私と同じく人混みを避けがちだった幼馴染の親友と二人で、人気のない穴場的な場所を見つけてきては、よく夜店や花火を遠目に眺めて過ごしたものです。満点の星空の下で、静かに夜風を感じながら。

この詩は、そんな子供時代の懐かしい記憶を、故郷の田舎(兵庫内陸の町)とはまるで違うはずの大阪暮らしの中で、ふと耳に入ってきた近所の祭りの賑わいと、それをノスタルジックに包み込む涼やかな夜風に 呼び覚まされる形で思い付いた一作です。

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