広瀬和生の「この落語を観た!」@S亭 産経落語ガイド

産経新聞社の落語情報アカウントです。音楽雑誌 BURRN! 編集長で、落語評論家として…

広瀬和生の「この落語を観た!」@S亭 産経落語ガイド

産経新聞社の落語情報アカウントです。音楽雑誌 BURRN! 編集長で、落語評論家としても活躍している広瀬和生さんの鑑賞記「この落語を観た!」を投稿しています。Twitterでは産経新聞社の落語事業に関するさまざまな情報を発信しています。ぜひチェックしてくだざい!

最近の記事

広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.170

5月4日(土)「擬古典落語の夕べ7 ナツノカモ江戸噺2)」 <演目はこちら>  入船亭辰ぢろ『手紙無筆』  柳亭こみち『絵道楽女房』  立川談笑『妻幽霊』     ~仲入り~  三笑亭夢丸『明晰夢』  入船亭扇辰『梅香の犬』 「擬古典落語の夕べ」の第7回は落語作家ナツノカモが創作した擬古典作品特集。4月11日に日本橋社会教育会館で行なわれた会をアーカイブ配信で視聴した。 こみちが演じた『絵道楽女房』は、外に出て何かを見るとあれこれ想像を巡らしてしまい時間が経つのを忘れ

    • 広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.169

      4月27日(土)芸歴40周年記念興行   立川談春独演会(昼の部)@有楽町朝日ホール <演目はこちら>   立川談春『かぼちゃや』   立川談春『三方一両損』     ~仲入り~   立川談春『紺屋高尾』 ◇ 与太郎噺の『かぼちゃや』を談春がさかんにやり始めたのは2012年のこと。大ネタ系が多い談春の独演会で聴ける滑稽噺というと『おしくら』『粗忽の使者』『棒鱈』『替り目』あたりが定番だったが、この年から談春の滑稽噺の定番に『かぼちゃや』が加わった。 僕が最初に聴いたの

      • 広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.168

        4月13日(土) 「芸歴40周年記念興行 立川談春独演会(昼の部)」  @有楽町朝日ホール 4月13日(土)昼の演目はこちら 立川談春『子ほめ』 立川談春『除夜の雪』 ~仲入り~ 立川談春『百年目』 ◇ 放送作家の永滝五郎氏が書いた「通夜経」という長い原作を桂米朝が再構築し、独自のサゲも創作して20分程度の新作落語にブラッシュアップした『除夜の雪』。談春は2006年の「談春七夜」でネタおろしするため米朝にこの噺を教わった。 談春は「御寮さんが首を吊った」と寺に伝えに

        • 広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.167

          3月23日(土) 「芸歴40周年記念興行 立川談春独演会(昼の部)」                  @有楽町朝日ホール 3月23日(土)昼の演目はこちら 立川談春『たらちね』 立川談春『宿屋の仇討』   ~仲入り~ 立川談春『たちきり』 ◇ 上方落語の『宿屋仇』を東京に移した『宿屋の仇討』には三系統あり、筋立てはすべて同じだが宿屋や仇を狙う武士の名前などの固有名詞が異なる。ひとつは三代目小さんによる移植で、五代目小さんに受け継がれた。もうひとつは大阪の二代目桂三木

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.166

          3月14日(木)「立川談笑月例独演会」@内幸町ホールの演目はこちら 立川談笑『猫と金魚』 立川談笑『井戸の茶碗』 ~仲入り~ 立川談笑『四ツ谷ファイトクラブ』 ◇ 談笑の『井戸の茶碗』では、五十両を受け取れないと意地を張る千代田に対して屑屋が「この五十両を子孫のために残したご先祖の気持ちはどうなるんですか !? 遊んでて作った五十両じゃないと思いますよ! ご先祖に成り代わって言います。受け取れ!」と説教するが、千代田は「なるほど、もっともだ」と納得しながらも「それを受け

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.165

          3月3日(火)「鈴々舎馬るこ勉強会“まるらくご爆裂ドーン!”#66」(2/27の会アーカイブ視聴)の演目はこちら 瀧川はち水鯉『恋愛小説家』 鈴々舎馬るこ『いぼめい』 鈴々舎馬るこ『本の実る木』 ~仲入り~ ホンキートンク(漫才) 鈴々舎馬るこ『五人廻し』 ネタおろしの『本の実る木』は昨年度の落語協会新作台本コンクールの優秀作品。もうひとつの優秀作品『鬼斬丸』も馬るこは持ちネタにしている。今回の「爆裂ドーン!」1席目に馬るこが演じた『いぼめい』は一昨年の優秀賞作品で、今や

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.164

          2月24日(土)「芸歴40周年記念興行 立川談春独演会」                    @有楽町朝日ホール <演目はこちら>  立川談春『松竹梅』  立川談春『よかちょろ』    ~仲入り~  立川談春『文七元結』           ◇ 談春の『文七元結』は演るたびに吾妻橋の場面での長兵衛の台詞が変わるが、今回は別次元の変化があった。佐野槌の女将とのやり取りまでは、「再来年の大晦日まで待ってあげる」も含め、ほぼ従来どおり。ただ、五十両を借りた長兵衛がお久に礼

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.163

          2月23日(金・祝)「鈴本演芸場・下席(夜)」 柳家小ふね『牛ほめ』 ストレート松浦(ジャグリング) 桂扇生『寄合酒』 春風亭百栄『トンビの夫婦』 ダーク広和(奇術) 柳家さん喬『替り目』 入船亭扇橋『高砂や』 ~仲入り~ 立花家あまね(民謡) 三遊亭歌奴『片棒』 林家きく麿『ねぇ、あなた』                ◇ 鈴本の下席夜の部は桂文雀が『鬼の面』『清正公酒屋』『搗屋無間』『鉄拐』『派手彦』『帯久』『胴乱幸助』『朝顔宿』といった珍しい演

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.162

          2月8日(木)「立川談笑月例独演会」@内幸町ホール 2月8日(木)夜の演目はこちら。 立川談笑『金星人裁き』 立川談笑『ジーンズ屋ようこたん』 ~仲入り~ 立川談笑『警視庁隠密捜査課 弥次喜多☆事件ファイル~第一話 六本木ウィドウ~』 昨年の談笑はこの「談笑月例」で「慶安太平記」全九話のネタおろしを行ない、12月の『大事、露見す』で完結した。ネタおろしは「月例」での9ヵ月連続口演だったが、今度はぜひ「通し公演」を(例えば3回連続公演とかで)やってほしいものだ。 そして今

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.161

          2月3日(土)夜「双面四景」@日本橋劇場 2月3日(土)夜の演目はこちら。 柳亭市助『道灌』 柳家さん喬『転宅』 柳家権太楼『井戸の茶碗』 ~仲入り~ 柳家福多楼『反対車』 柳家権太楼『天狗裁き』 柳家さん喬『ちきり伊勢屋』 さん喬・権太楼の二人会。さん喬の一席目『転宅』では、お菊は「高橋お伝の孫」云々という定番のくだりは抜きで、普通に「私、菊っていうの」と名乗る。さん喬の演じる色っぽくてしたたかなお菊にはこの演出が似合う。泥棒の財布から札を抜き取って自分のものにする場

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.160

          1月28日(日)「志の輔らくご in PARCO」@パルコ劇場 1月28日(日)の演目はこちら。 立川志の輔『送別会』 立川志の輔『モモリン』 ~仲入り~ 立川志の輔『しじみ売り』 ◇ 恒例の正月1ヵ月公演「志の輔らくご in PARCO」。今年は6日、21日、28日の3回、足を運んだ。もちろん同一演目。 1席目は今年ネタおろしの新作『送別会』。定年退職を迎えた同期の会社員2人が、かつて初任給で呑もうと立ち寄った蕎麦屋を43年ぶりに訪れ、2人だけの送別会を行なう。「

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.159

          1月24日(水)「代官山落語夜咄 三遊亭兼好『紺屋高尾』 produced by 広瀬和生」@晴れたら空に豆まいて 1月24日(水)の演目はこちら。 三遊亭兼好『紺屋高尾』 ~仲入り~ 三遊亭兼好×広瀬和生(トーク) 職人が高嶺の花の花魁に恋をして、その真心が通じて夫婦になるというストーリーの落語には『紺屋高尾』と『幾代餅』がある。『幾代餅』は五代目古今亭志ん生が講談の『幾代餅の由来』を翻案したもので、倅の十代目金原亭馬生と古今亭志ん朝が手掛けたことでポピュラーになり、

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.158

          1月13日(土)「立川談春独演会」@有楽町朝日ホール 広瀬和生「この落語を観た!」 1月13日(土)の演目はこちら。 立川談春『道灌』 立川談春『明烏』 ~仲入り~ 立川談春『鼠穴』 談春は2024年、芸歴40周年記念興行を有楽町朝日ホールで1月から10月まで毎月2回の昼夜公演を行なう。同日の昼夜は同一演目で、毎回談春が三席を披露、うち二席はネタ出しで、他一席「おたのしみ」となっている。その第1回が1月13日に行なわれ、僕は昼公演に足を運んだ。ネタ出しは『鼠穴』『明烏』

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.157

          2023年12月29日(金)「師走の萬橘」@アトリエ第Q藝術 広瀬和生「この落語を観た!」 12月29日(金)の演目はこちら。 三遊亭楽太『子ほめ』 三遊亭萬橘『文七元結』 ~仲入り~ 萬橘×和田尚久(トーク) 毎年恒例の「師走の萬橘」で、5日前に初めて聴いた萬橘の『文七元結』を再び聴けた。本人曰く、「まんきつの森スペシャル」での出来に忸怩たるものがあったため、ここでリヴェンジしておきたかったそうだ。そして、そのリヴェンジは見事に果たされた。 萬橘は冒頭、帰宅した長兵

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.156

          12月12日(火)「2023今年最後の立川志らく独演会」@日経ホール 広瀬和生「この落語を観た!」 12月12日(火)の演目はこちら。 立川らく兵『洒落小町』 立川志らく『文七元結』 ~仲入り~ 立川志らく『芝浜』 2011年によみうりホールで(1回目は談志のピンチヒッターとして)始まって毎年恒例となった志らく“今年最後の”独演会。談志がほぼ毎年よみうりホールで12月に『芝浜』をやっていたのを引き継ぐ形とはいえ必ずしも毎年『芝浜』を高座に掛けてきたわけではなく、去年もや

          広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.155

          11月30日(木)「俺のコガネモチ」@イイノホール 広瀬和生「この落語を観た!」 11月30日(木)の演目はこちら。 三遊亭東村山『平林』 柳家三三『藁人形』 桃月庵白酒『黄金餅』 ~仲入り~ 三遊亭白鳥『黄金餅池袋編2023』 ひとつの噺をテーマに古典と新作で競演する「俺の」シリーズ、『黄金餅』編。何故ここに『藁人形』が入っているかというと、「願人坊主の西念」が出てくるからだろう。もっとも、この西念が後に貯め込んだ金を餅で包んで飲んで死ぬ……という設定で演じている例は