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リュウジが教えてくれたこと

街を歩いていると、時々「何食べたらこんなにおしゃれになれるんだ?」という素敵な人を見かける。
きっと百貨店やセレクトショップじゃなくて、下町の商店街にあるミセス向けのお店に入ったとしても、自分に似合う一枚を見つけてしまうような人。
そういう人に出会うと、「素敵!」と興奮した後、圧倒的な自分との差に絶望しそうになる。
でも、ある時から「私ももっとおしゃれになれる!」と、今度はドキドキわくわくが止まらなくなるようになった。
そして、なりたい自分に近づいていけるファッションの楽しさを、改めて噛みしめるのだ。

私がそう思えるようになったのは、料理研究家のリュウジさんがきっかけ。
ファッションのことなのに料理研究家??なんで???と思うかもしれないが、リュウジさん、いや敬意を込めていつもの呼び方で呼ばせていただこう、リュウジはすごい。

私は元々料理が全くできなかった。
初めて一人暮らしの新居に遊びに来た母に良いところを見せたくて豚汁を作った時は、なぜか4時間かかったし、
お弁当を作って、「これなに?野菜炒め…?階段の隅に溜まってるゴミじゃなくて…?」と言われたこともあったし、
友人が来るから!と張り切ってスコーンを焼いたら「えっ!唐揚げ揚げてくれたん!?美味しそ~~!!!」と喜ばれたこともあった。

結婚していた時期はどうしていたかというと、元夫が「趣味:料理」だったため私が台所に立つことはほとんどなかったし、「見ていてハラハラする」という理由であまり台所に立つことも喜ばれなかった。
だから、離婚して一人暮らしを始める際も、食器や調理器具はそのまま元夫に残して、暫くは紙皿と紙コップでスーパーのお惣菜や冷凍食品を食べていた。
食器や調理器具が一切なく、冷蔵庫にはプロテインだけが入っている私の家を見て、友人たちは「お前らしいな」と笑ってくれた。
実際は、当時30歳を目前に控え、料理ができないコンプレックスを「料理下手くそキャラ」を定着させて笑いにすることでしか心を保てなかっただけなのだ。

そもそも自炊ってコスパが悪すぎる。
まず買い出しに時間がかかるし、料理に慣れていないから何を買ったらいいかわからないし、なんか自炊の方が高くつくし、皿洗いはめんどくさいし、何より美味しくない。なんなんだ?
あとレシピに「適量」「少々」「ひとつまみ」って当たり前に出てくるけどこいつらのせいで料理が台無しになったこと数知れず。
私の手とあなたの手は違うのでひとつまみも当然量が違うのだが?とできない自分と向き合いたくなくて、ひたすら自炊に難癖をつけていた。
一番ダサいムーブである。

だから、友人にすすめられてリュウジのYouTubeを見た時は本当に驚いた。
「適量」「少々」「ひとつまみ」をリュウジははっきり言語化して教えてくれたのだ。
「適量」は自分が美味しいと感じるまで味見をしながら入れること、「少々」は別になくてもそこまで味に影響ないけどとりあえず気持ちいれること、 「ひとつまみ」はこれくらい入れたら流石に味変わるやろと思うくらい指三本でつまんで入れること。
動画でも、塩を指三本でつまんだ様子をカメラに近付けて見せてくれるので、自分の「ひとつまみ」があっているかの確認ができる。
しかも、フライパン一つでできて、調味料もよくわからないものは使わず、基本的なものだけ。
何より、リュウジは自分で作った料理を「うまい!うまい!」と食べる。
スタッフに「食ってみろ!!!」と食べさせ、皆で「うまい!」とキャッキャしながら食べる。
その様子を見ていると、「めんどくさい」よりも「楽しそう」が勝ち、不思議と「作ってみようかな」という気持ちになってくる。
そして実際に、本当に美味しくできるのだ。
だから私も、離婚したばかりの一人きりの部屋で、自分で作った料理を「うまい!うまい!!」と食べた。

「全くできない」が「できる」になるには、きっとこの「適量」「少々」「ひとつまみ」の匙加減が大切なのだと思う。

全く料理ができなかった私が、自らの手料理を「うまい!うまい!!」と食べるまでになったように、なんだか上手くいかないコーディネートも、なんなら人生だって、ちょっとした匙加減で変わるのかもしれない。
そして何より、「楽しい」に勝るものはない。

リュウジが私に教えてくれたこと。







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