Hey Maria
ナザレは時が前世紀で止まったかのような漁村だ。海岸では日に焼けて真っ黒な顔のおばあさんが魚を干しているし、未亡人は黒い服を着るという習わしがある。
小さいケーブルカーに乗って展望台から町を見下ろす。いいなぁ、この感じ。田舎町より断然都会が好きな私でもなんだか落ち着く。たまにはのどかな漁村もいいものだ。などとつぶやいてみる。
12世紀に騎士がこの断崖絶壁から落ちそうになったそのとき、聖母マリアが現れて馬が後ずさりをして命拾いをしたそうだ。それに感謝して
sixteen again
今日はポルトを発つ。朝食後にまた小雨の降る石畳の道を歩くーーいつかまたこの街に帰ろう。名残惜しいが部屋に戻ってスーツケースに洗面用具や干した下着を詰め込んで出発の準備完了。
さよなら、アデウス、ポルト。次はいつになるだろうか。そう思うと妙に寂しくて、切ない。赤いスーツケースを転がしドアの1メートル手前で私は固まってしまった。もうここには二度と私は存在することはないのだろうという喪失感。1メートルがまるで1.000キロのように感じる。ドアを開けて