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有能なキミたちをどう活用するか?

先週、衝撃的な出来事があった。
山あいのゴルフ場でいつものようにグリーン上を右往左往した後、カートに戻ろうとした時のこと、
「あ、カラス!」
同行者が叫んだ。
黒い影がカートから飛び去って行く。
「何かくわえていった!」
急いで戻ると、カートに置いたバッグがひっくり返されている。
そのバッグはファスナーがついていたが、端の部分が3センチほど開いており、そこから嘴を入れたらしい。
── それはわかる。
驚くのは、そのバッグの中にあったポーチ、これはきっちりとファスナーが閉まるタイプだったが、それが見事に開けられ、中にいくつか入れていた飴が盗まれていたことだ。
「ヤツがくわえていったのは飴だ!」
ご存じのように日本の飴はひとつひとつプラスチックの包装に入っている。
「ファスナーを開けたくらいだから、あの袋を破るくらいお茶の子さいさいだろうね」
それにしても……

なんて頭のいいヤツだ!

まんまと飴を盗まれて地団駄踏んでいるニンゲンを見て、
(……ひょっとしたら、こいつよりもいいかもしれない)
とそこまで思ったが、相手に気取られないよう注意して話を続けた。
「あのカラスの知能を、なんとか使えないものだろうか?」
「それ、ニンゲンのためにってこと?」
「そりゃあ……そうでしょ。自分のためには既にしっかり使ってるんだから」

うーん……どうかなあ?

「イルカをスパイとして使っている国があるそうだけど、カメラを付けて敵国に飛ばすのはどう? ドローンの代りに安く使えるんじゃない?」
「でも、賢いし、警戒感が強いからねえ。危険を察知して国境を越える前に戻って来るんじゃないかなあ」

いろいろ考えるが……なかなか使えない連中である。
ヤツらの『警戒心』、これを使うしかない。

「警備員として活用するのはどうだろうか? テロや強盗から守ってもらうんだよ! 例えば原発や重要な変電所、いや、それこそ宝石店や銀行の周りに巣になりそうな木を植える ── カラス一家を誘致して、住み込みの駐在所のようにするんだよ! これはいいぞう、給料は辺りに生ゴミを置いておくだけでいいわけだし……。あ、そうだ、金融機関にカラーボールってのが常備してあるけど、その代わりに『生ゴミボール』を用意しておいて、犯人が逃走したらぶつけるんだ! それをカラスが追っていく……いい考えだろ? ……あれ? どうしたの?」

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