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有安杏果の本格的再始動見せたライブ 楽器演奏と一体感、楽曲を立体的に展開 有安杏果 弾き語りツアー "A Little Harmony Live”@東京・ヒューリックホール

 ソロとしての再始動を図ろうと歩み出したところでコロナ禍により3年ほどの停滞を余儀なくされた有安杏果。このライブでの後半では夏のツアーに続いて、全国10カ所以上での本格的な弾き語りツアーを展開し、バンドによるライブも会場やバンドメンバーのスケジュールの調整などをすでに開始していることを明らかにし、ソロアーティストとしての有安が本格的に再始動したことを見せてくれるライブとなった。
 2021年9月に開催した弾き語りソロライブの名古屋公演と比較するとその時にパフォーマンスを披露した20曲中、15曲が同じ楽曲なのだ。だから、セットリスト自体は大きく変更されたわけではなく、従来の楽曲が中心になっているわけだし、このうちのかなりの楽曲はまだももクロに在籍していた時代に製作された楽曲であるということもあり、有安杏果のライブが大きく変容しているわけではないけれど、もはや以前のライブとはまったく別物だという印象を受けた。
 有安はももクロ時代から歌のうまさには定評がある人ではあったが、当時はまだ荒さもあったのが、今は技術的な限界があってこうなっているようなところはほとんど見て取ることはできなくて、どこを切り取っても「有安のやりたい表現」になっている。特に素晴らしいのは本人による楽器演奏との一体感。それによって、どの楽曲も伴奏とボーカルが立体的に展開しているように感じられ、「いわゆる弾き語り」の域を超えたものとなっているように感じられた。
 有安杏果のオリジナル楽曲ではジャズアレンジのピアノ楽曲が多かった。「愛されたくて」「遠吠え」「TRAVEL FANTASISTA」などがそれに当たるのだが、自らのピアノ演奏でこうした楽曲を弾きこなして、ボーカルにも抜群のグルーブ感を見せたことには舌を巻かされた。
 弾き語りライブの場合、演者がひとりだけなので演出的に平板になりがちだが、今回は照明もいつも以上に工夫されたものとなっていた。以前から有安の照明への強いこだわりは「有安杏果の世界」を成立させるための重要な要素のひとつだと感じていたが、今回のMCでいつもならバンドメンバーを紹介するようなノリで照明家のことも紹介し名前こそ言わなかったが、最初のソロコンから担当してくれている人と紹介し感謝の念を述べた。楽曲のアレンジもそうだが、有安杏果という人は細部まで妥協することなく、こだわりを見せる人で、この日の楽曲や演奏に寄り添うような細かく変化を見せる照明は演者と照明家が以前に徹底的に打ち合わせをして、作り上げたものか、もはやそういう打ち合わせをする必要もないほどの阿吽の呼吸が二人の間にできているのか、どちらなのだろうと思いながらライブを見ていた。
 セッションを思わせるようなライブ感を感じたことからすると後者ではないかと思うが、有安はこの日は参加していないバンドメンバーともそういう関係性を築いており、それが真に発揮されるのはこれからだろう。コロナ禍の時期におそらく新曲は山ほど作っていたはずと思っているが、有安の美学からいえば弾き語りアレンジのような形ではなく、バンドアレンジで新曲は披露し、同時に音源収録も行いたいとの強い意思があるため、あえて温存しているのではないかと思う*1

日程:2023年7月30日(日)
開場・開演  16:00 / 17:00
会場:東京・ヒューリックホール

simokitazawa.hatenablog.com

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*1:ひょっとしたら、そこでセカンドアルバムの制作もありうるかもしれない。

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