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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)

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電子書籍『無数の銃弾』にて連載中!異常世界で異常能力を持つ、少年少女の恋愛譚。
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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「一、血塗れのボーイミーツガール。」

死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「一、血塗れのボーイミーツガール。」

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誰が何を論じようとも。
これは、愛の物語だ。

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 深夜二時。
 東京スカイツリー――東京都墨田区に聳え立つ日本国のランドマークにして電波塔。ショッピング街や水族館、展望台にレストランといった商業施設が塔の下に設えられ、更にはライトアップとデートには事欠かない。今やスカイツリー本体を除いて電灯は消され、沈黙と漆黒が寂しく商業施設を埋め尽くす。
 誰も居ない筈のその場所に、十代前半

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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム) 「零、最悪な景色。」

死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム) 「零、最悪な景色。」

 かつ、こつ。かつ、こつ――靴で鉄を叩く音が、麗かな春の深夜に鳴る。
 東京都墨田区。そこに聳え立つ日本国のランドマークにして電波塔――東京スカイツリーを、1人の少女がリズミカルに登っていた。純白のブラウスに桜色のカーディガン、薄緑色のスカートという装いの清廉な印象の少女だ。
「よっ、ほっ」
 金属音とセッションを奏でる様に可愛らしいかけ声をテンポよく発しつつ徐々に登っていく。目指すは、地上450

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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「二、歩く厄災共。」

死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「二、歩く厄災共。」

第一話はこちらからどうぞ↓

障害物競争の攻略法は二つだ。
全て無駄なく避けるか、全て隈なく壊すか。

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 ……現在の状況を整理しよう。
 恋した五人目の少女を殺した少年昏殻拒は、東京スカイツリーから投身自殺をして甦った、同い年位の可愛らしい少女氷空町慕に、一目惚れの告白をされた。
 何を言っているのか分からないと思うが、誰も何が為されたのか分からないだろう。
 異常なる少女を実際に目にし

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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)一・七五章「ゴンドラで観覧車を。」

死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)一・七五章「ゴンドラで観覧車を。」

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 デート中、観覧車でのキスに必要なのは、好意とムードと唇だ。
 いずれか1つが欠けても達成不可能。

 観覧車のゴンドラに乗る、頭が犬の男と全身機械の女のカップルには、その内2つが足りなかった。
 それは、ムードと唇。

「がああああああああああっ!!?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 犬男は剥き出しになった白い前歯を血に染め、機械女は黒い煙を立てながら壊れた様に状況説明

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死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「三、恋の自覚。」

死なずの魔女の恋愛譚(ファンタズム)「三、恋の自覚。」

この世で最も痛烈な報復は、隠し事を暴く事で。
この世で最も鮮烈な幸福は、隠し事を明かせる事だ。

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 ――壊理。
 世界の構成と論理が滅茶苦茶になってからというもの、昏殻拒は様々な崩壊を経験した。
 鯨がビルを食しながら空を飛び、竜人が拳銃自殺をする空は、昼は緑色で夜は橙色。
 少女は自殺してから生き返り、自分に告白し。
 自分は恋人を得る事が至上となって、相手を殺してでも手に入れたくなっ

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