中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャ…

中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャーデザイナー 「自分自身とつながる」「自然とつながる」「社会とつながる」 の3つをテーマにした講座を全国で開催 現代農業 2022年から定期的に「自然農」について寄稿 漫画「ザッケン!」監修

最近の記事

河川は龍である

<河川は龍である> 2020年愛知県豊田市で起きたダムの大規模漏水事件から現代日本人の凝り固まった常識が見えてくる。 ずっと昔の日本人は河川を龍に例えた。 もともとは中国で生まれた想像上の生き物で、水神様でもある。 それは現代の科学からすれば、馬鹿げた空想に過ぎないのかもしれない。 しかし、龍が本当にいるかどうかよりももっと大切なことは、 「河川が生き物である」ということなのだ。 本来、河川は動く。 実際に動いているのは確かに水なのだが、河川の形も常に形を変えていく。

    • 水にまつわる行事

      <季節行事の農的暮らしと文化 6月 水にまつわる行事> 六月の行事には水と関係の深いものが多い。もともと水の神を祀る月であったようだ(十二月も同様) 日本における古い行事は六月と十二月の晦日を境にして折半し、その各六ヶ月中に行われる行事も互いに相似していたらしい。 6月1日には出雲大社で通称まこも祭りというものが行われる。正式名は涼殿祭(すずみどののまつり)である。 この祭りは出雲大社向かって右手にある御神木・ムクノキから始まる。御神木の前に用意された祭場に粢団子(しとぎ

      • 野菜を育てる覚悟はあるか?

        <畑の哲学>野菜を育てる覚悟はあるか? 覚悟という言葉を使うのは少し大げさな印象を与えるかもしれない。 しかし、そんなことはないと断言する。 なぜなら野菜はあなたのオモチャでもないし、あなたの趣味のために生まれてきたわけでもないし、 なんなら本来、あなたの食料となるためにこの地球にやってきたわけでもない。 彼らはあなたがどう思おうが、どう扱おうに関わらず この地球においてはあなたと同等の「一つの命」である。 それを決して無視して扱ってはならないと本気で思っている。 しかし

        • 言葉にならない知恵がある

          <畑の哲学>言葉にならない知恵がある 自然農を教えている身として、いつも苦戦しているのがこの部分だ。 植物の知識や自然界の摂理は 今までたくさんの科学者や先人たちが残してくれた研究を 元に説明することができる。 これは言葉にできる知恵や知識といったところか。 言葉にすることができたおかげで私たち人類はこの文明を発展させることができた。 これは他の動物にはできなかった、とてもすごいこと。 しかし、いくら言葉によるコミュニケーションが発達したとしても その背後には膨大な

          補いと自家製液肥

          <補いと自家製液肥> 自然農では肥料の代わりに「補い」といって米ぬかや油粕を利用することがある。しかしあくまでも補いであって、常時するものではない。 補いの考え方は、まだ土ができていない時や野菜の生育が思わしくない時に地力を高めるためだが、初心者はこの見極めが難しく、さらに資材の使い方が分からずに失敗しがちだ。 「自然農は米ぬかを使っても良い」と言って、たくさん撒く人がいるが、そのせいでカビ菌や虫の発生のリスクを高めてしまう。畑に一度入れたものは簡単には抜けない。 米

          補いと自家製液肥

          ビニールマルチを使わない理由と使う理由

          <ビニールマルチを使わない理由と使う理由> 控えめにいって、農業界において最大の革命は化成肥料でも、農薬でも、F1種でも、遺伝子組み換えでもなくて「マルチ」だと思う。 よく畑で見かける黒いビニールマルチは特に優れもので栽培に関しては弱点らしいものは全くない。保温や保湿、泥はね防除などなどその効果は多いが特にありがたいのが雑草防除だろう。このおかげで、農家の仕事量は格段に減り、耕作面積を増やし、収量を増やしてくれた。 私が研修した先ではビニールマルチを使う自然栽培家は多か

          ビニールマルチを使わない理由と使う理由

          家庭菜園家しか食べられない野菜たち~夏~

          <家庭菜園家しか食べられない野菜たち~夏~> あなたが家庭菜園をしたことがないのなら、 おそらく食べたことないであろう野菜たちを紹介します♪ ①オスだって食べれるさ きゅうりやカボチャ、ズッキーニなどウリ科の野菜たちは オスの花とメスの花が分かれている植物。 実がなるメスの花はオスの花に比べて数がとても少ない。 がしかし、このオスの花を食べられるのを知っているだろうか・・・ 味はその野菜たちの味がほんのり香る。 きゅうりの花はきゅうりの味が、 カボチャの花はカボチャの味が

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          陰と陽の世界観、マイナスとプラスの世界観、共依存とお互い様

          <畑の哲学>陰と陽の世界観、マイナスとプラスの世界観、共依存とお互い様 自然農の世界で有名な福岡正信の思想には道教思想が、川口由一は東洋医学や陰陽五行論が、そして江戸時代の百姓たちは儒教思想が色濃く見える。そのため、自然農を理解する上でも江戸時代の百姓の暮らしを理解する上でも陰陽の世界観について少しだけで学んでおくと理解がしやすくなる。 福岡正信は「無」という言葉を好んで使ったが、この無とはゼロではなく、有との対立関係のものでもない。無(道教では道、タオ)とは万物の根源で

          陰と陽の世界観、マイナスとプラスの世界観、共依存とお互い様

          ある思想とお互い様の世界

          <ある思想とお互い様の世界> 「ない」ということが「ある」ということ 「ある」思想は「ない」を無視するわけでも悪いこととするわけでもない。 たとえば、トマトは湿気が苦手だ。 日本の梅雨のように雨がたくさん降る環境ではよく病気になったり、弱った時に虫がついてしまう。 このとき、「ない」思想だとトマトのこの湿気が苦手な特徴は欠点だ。 だから、ビニールマルチを使うし、ビニールで屋根もつける。 さらには病気が発生するようなら、仕方ない仕方ないといって農薬も使う。 極め付けは大き

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          コンパニオンプランツの精神

          <コンパニオンプランツの精神> 各植物の才能を活かせる環境を整えてあげると共に、短所を補い長所を生かす組み合わせを考える。自分自身は演奏しないコンダクターであり、自身はプレイしない監督のようにタクトを振るう。 自給のための農は栄養面や食卓のバラエティ、年間を通しての食のニーズを満たすために多様な作物を栽培する。それは不作や病害虫の発生に対しての保険(重要機能のバックアップ)となる。世界中の小作農が高収量の優良品種と同時に、低収量または劣等品種の栽培を続ける理由がここにある

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          草刈りは技術だ!ひ・ふ・み使い

          <草刈りは技術だ!ひ・ふ・み使い> 自然農がなかなかうまくいかない人たちに共通して勘違いしていることが「不除草」である。畑を見て「これ、草刈りしたら問題なく育つよ」とアドバイスすることも多い。 「不除草」ほど自然農で誤解されていることはないだろう。言葉のイメージが一人歩きしている。実際、自然農の職人たちはこまめに草刈りをするが、ただ草刈りするわけではなく季節や天気、野菜に応じて草刈りを使い分けている。草刈り一つで野菜が成長を早めたり、病気がおさまるところを何度も見てきた。

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          雑草コンポストの事始め

          <雑草コンポストの事始め> 農業について勉強を始めると必ず最初にチッソ・リン・カリという必須・三大栄養素を学ぶことになる。さらに他にも野菜が育つ上で必要な栄養素はカルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素、ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケル・・・「ああ!もう嫌だ!」って頭が痛くなるくらいたくさん出てくる。 理系科目が好きだった人や農業大学校を出た人ならまだしも、多くの人が頭を抱えて本を閉じたくなる。(実は農家も)だから、JAやホームセンターには精確に計算された

          雑草コンポストの事始め

          厄介な雑草の増やし方

          <厄介な雑草の増やし方> これは決して、あなたの嫌いな人の敷地内を雑草だらけにするために教えるわけではない。むしろ、あなたの敷地内に厄介な雑草を増やさないようにするために知ってもらいたい。なぜならあなたの敷地内に厄介な雑草がいる原因はあなた自身にあるからだ。 さぁ、雑草について学ぼう。 ①草を根っこごと抜く いきなり、ビックリする人が多いのではないだろうか? 雑草は根っこごと取り除くのが基本で、そうしなければ文字通り根絶できないと。 しかし、これは雑草のことを全く理解でき

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          野菜、雑草、野草、薬草の進化史と世界観

          <野菜、雑草、野草、薬草の進化史と世界観> ある農家の元で研修を受けているとき、ちょうど春先だったこともあって家のおばあさんとともに雑草摘みにでかけた。おばあさんは次から次へと私に植物を指差し、名前とどう食べたら美味しいのかを教えてくれた。ときどき、おばあさんが無視をする植物があることに気がついた私は「これは何ていう雑草ですか?」と聞くと「それは・・・草だ、草。」とそっけなく答えてくれた。 「雑草という名の植物はない」と日本の植物学の父と謳われる牧野富富太郎は言うのを思い

          野菜、雑草、野草、薬草の進化史と世界観

          雑草は最高のボランティアだ!

          <雑草は最高のボランティアだ!> 自然農の先駆者・川口由一さんは「草を敵としない」と後輩たちを諭した。とはいえ、日本では雑草は敵として考える人が多く 自然農をしている人でも「雑草=厄介なもの」という印象が強いのも確かである。アメリカ雑草協会の雑草の定義はズバリ「雑草とは人類の活動と幸福・繁栄に対してこれに逆らったりこれを妨害したりするすべての植物」だという。 では、雑草はいったい何をしにこの世の生まれてきたのだろうか? 「きみはこの地球に何をしにやってきたの?」 自然農と

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          夏の気候 五月雨と夕立と彩り

          <夏の気候 五月雨と夕立と彩り> 春の終わりと夏の始まりを告げる鐘がなる。 それが春の嵐、またの名をメイストリームと呼ぶ。これは日本だけがそう呼んでいる。 ちょうどゴールデンウィークが始まる4月の終わりから5月の上旬ごろに、強い風と強い雨が日本列島を襲う。 山間部や北日本では時に雪や霜が降りることもあるくらい冷え込むことがあるため、寒がりの人は炬燵をしまわなくて良かったと思うことだろう。農家はこの八十八夜の忘れ霜にヒヤヒヤしている。 ちょうど立春から八十八夜を迎え、立夏を目

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