文学トリマー?【毎週ショートショートnote】
「田中の奴、文学トリマーを使いやがったな」
道の向こう側を悠々と歩く田中に、
清水は舌打ちした。
田中が胸に抱えていたのは、
先週書き終えたばかりの原稿ちゃんだ。
田中の原稿ちゃんは
流行りのサマーカットを施されて、
すこぶるご機嫌だった。
原稿ちゃんの短めのセンテンスの隙間を、
風が通り抜けてゆく。
青空のように爽やかな言葉が映える。
田中の筆致を信頼し切った原稿ちゃんは、
腕の中でウトウトし始めた。
「いいよなあ、作者にあんなに懐くなんて」
「俺も文学トリマーに梳いてもら