にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮った…

にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮ったやつ。 金周りの悪さにPV屋から遠ざかり、最果タヒで詩を諦めた元詩人。

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  • 波打ち際ブンガク

    波打ち際ブンガク1年目が500円で読み放題! 360本くらいのオリジナル短編小説(1000字前後)がいっぱい。しかも読みきりばかり。 扉絵はAI出力!これはお得だ!

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【小説】さよなら、チャタロウ

 ブゥゥーーン、と鈍く低い音が鳴って、チャタロウは目を覚ました。  血の匂いとその温度がチャタロウの中で広がっていく。  その中でチャタロウは思い出していた。  チャタロウは世界の形を知らない。だからキリコの輪郭も曖昧なままだ。  チャタロウがキリコの為にできるのはキリコが飽きるまで一緒に生きる事とか、もしくは今すぐにキリコと別れて死ぬことくらいだ。……または殺すとか。その他の全てがエゴでしかない。全てがチャタロウの個人的なエゴだ。  チャタロウは笑った。  チャタロウは思

    • Re: 【短編小説】魚卵ねがい魚卵

       ある日のことでございます。  おれがスマホを見ながら自分を慰めてるいたところ、はたと気づいたのであります。  その画面の中で気持ちが良いのは、男優の逸物であります。しかし、男優のそれは労働としての射精でありますので、果たして快楽と呼べるのか?と。  そうであるならば、おれは何とリンクしようとしているのか。  とりあえずスマホを置いてティッシュに手を伸ばすところから始めなければなりません。    水平に時間は過ぎていきます。  水平に明日はやって参ります。  結局は昨日の続

      • 【小説】ちひろちゃん、

         起立!気をつけ!  礼!  着席!  新しい、朝がきました!  これは、希望の朝かな?  それとも、どんな朝だろう!  椅子を引いて座ると、自分自身がピタリと学習机に収まり、その隙の無さはとても気持ち良い、なんとも素敵な感覚でした!  先生が出席をとります!  窓際から順番?  それとも出席番号?  どちらにしても、わたしは真ん中です! 「ちひろちゃん、はい!」  背筋と腕を、まっすぐ上に伸ばして、元気に答えます!  白いレースのカーテンが膨らんで、大きく開けた窓から、

        • Re: 【短編小説】勝UMA投票 MySweetHome独歩シャドー

           人生はクソだし、死ぬまでの暇つぶしにも飽きてきた。  そしてその日のおれは、人生に対して残り少ない希望みたいなものを、いくばくかの絶望に替えようとしていた。 「お宮さんのひとかい」  後楽園のウインズで煙草を吸っていると、傍にいた見知らぬジジイが話しかけてきた。 「いいや、全く関係が無い」  おれは笑って返す。  おれの耳にぶら下がっているピアスは、確かに仏具の様なピアスで、丸い飾りの下に赤い紐が幾筋も垂れ下がっている。  仏具に見えなくもない。  だがそんなものは何の証

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        【小説】さよなら、チャタロウ

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        • 波打ち際ブンガク
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          Re: 【短編小説】伊勢丹桃ジュースBOXヤクザ

           その日、Qちゃんはとても疲れていた。  地下の倉庫から箱に入ったジュースを持ってエレベーターに乗り込む。  旧式のエレベーターは酷く揺れた。  天井に付いた換気扇は軸が歪んでいるのか酷い騒音を立てている。  客用のエレベーターとは違い、なにかをぶつけた傷やテープの剥がし忘れなどで薄汚れた壁と、それこそ何の汚れか分からない縞鋼板の床。  そんなボロボロのエレベーターは酷く揺れながら、七階の催事場まで上がっていった。  やはりQちゃんはとても疲れていた。  急停止したエレベー

          Re: 【短編小説】伊勢丹桃ジュースBOXヤクザ

          【超短編小説】カップ麺がのびた

             目を開けると卓上のカップ麺が伸びているのが見えた。スチロールの器を飛び出した黄色いうねりは、転げた割り箸にまで伸びている。  食べながら寝てしまった。  こんなのは大学生以来だ。いい歳をして恥ずかしい。  何となく老いを感じる居心地の悪さを苦笑いで誤魔化したが──とにかく疲れていた。  それに厭な夢も見た。  出来心とは言え、寝言なんかで妻にバレると面倒だ。──やれやれ、身体も痛い。  いまは何時だろうか?  どれくらい寝ていたか分からないが、リビングの硬い椅子に座った

          【超短編小説】カップ麺がのびた

          Re: 【小説】ユナイテッド ステイツ オブ オニギリ

           ぼくはまるで緊張のカクテルみたいになっていた。  サスペンションの伸びきったバスに揺られて、どうにかリトルトーキョーに着いたのは昼前である。  横柄な態度の運転手はぼくが降りるなり、乱雑にドアを閉めると、やたらに煙を撒き散らしながらガタガタと揺れるバスを走らせていく。  その後ろ姿を見送ってから街の中へと入っていくが、今までにこんなにも緊張した事はあっただろうかと思う。ジャパンでは、これを「サムライシェイク」と言うんだって習った気がする。  アメリカは戦争に負けた。  大

          Re: 【小説】ユナイテッド ステイツ オブ オニギリ

          Re: 【短編小説】ダイヤルアップ脳天砕

           グラスの中の氷はとっくに溶けてなくなっていた。  それでも最後のひと口を飲めずに手の中で弄んでいる。  昔話が途切れたあたりで、遠慮の塊を見ながら訊いた。 「そう言えばさ、次の仕事って決まってるの」  元同僚は笑いながら 「芸能人のツイッターをバズらせる仕事」  と言って、皿の上で畏まっていた唐揚げを口に放り込んだ。 「そんな仕事あんの?」 「往年のプロレスラーが誤変換ツイートで万バズを稼いでたの覚えてる?そう言うコンサルだよ」 「あぁ……」  咄嗟になにも言えず中途半端な

          Re: 【短編小説】ダイヤルアップ脳天砕

          Re: 【短編小説】Luckプラック№1人生

           眠れない夜がある。  あるだろ?あるんだよ。  俺には必殺技が無い事を考えると眠れない。  そう言う時は眠れないだろ?  眠れないんだよ。  そうだ、俺には必殺技が無いからな。  世間にはまだバレていないがこれは由々しき事態だ。  バトルを仕掛けられたら俺に勝ち目はない。  走って逃げる事で一時的にどうにかする事は出来ても、一度バレたら永遠に逃げ続ける事になる。  負け犬だ。  必殺技はなんでもいい。  痰壺を飲むとか電車を止めるとか、バス停を武器にして闘うんでもいい。

          Re: 【短編小説】Luckプラック№1人生

          Re: 【短編小説】極彩色ヒューマン

          「ちっ、つまんねぇな」  ショートが鼻を鳴らして、親指くらいのサイズがある怪獣型ゴム人形を節くれだった指で弾いた。  コトン、と倒れた怪獣人形は底の部分にある穴に本棚の余ったダボが詰められていた。 「オレたちも次のシノギ考えねぇとな」  エースが鼻くそをほじり、獲得したものをゴム怪獣の穴に詰めた。 「お、おれがトチったから……」  サードはオドオドしながら言ったが、遅かれ早かれダボを詰めるイカサマは見破られてたよ……と言われるのを待ってるのがミエミエなので誰もフォローしなかっ

          Re: 【短編小説】極彩色ヒューマン

          Re: 【超短編小説】夜 ボンバイエ

          「どうしたの?」 「勃たねぇ」  ベッドを降りると汗ばんだ足がフローリングに張りついた。  女はなにも言わない。  嘲笑えば殴れるし、慰めても追い出されるのを知っている。別にお前のせいじゃない。 「おれがどうかしてるだけだよ」  またはコイツのせいだ。  煙草に火をつける。換気扇に煙が吸い込まれていく。煙草なんて吸うもんじゃねぇな。だが煙草をやめるほど意志が弱くもねぇ。 「必要なのは教養だ」  勃起にしてもそうだ。脳みそじゃ勃起できねぇ。 「嫌なことでもあった?」  女が優

          Re: 【超短編小説】夜 ボンバイエ

          Re: 【短編小説】niboshi

          「落ちましたよ」  労働者風の男がおれに声をかけた。  手には棘をひとつ持っている。 「ありがとう、助かるよ」  礼を言って受け取ると、男は軽い会釈をして去っていった。  靴についていた棘がひとつ取れていた。  高級ブランドにしては作りが甘く、これで棘が落ちるのは3度目になる。  だがおれの靴に限った話ではない。  おれの他にもこうした靴を履いている人間を見た事があるし、彼らの靴も大抵は棘がいくつか落ちていた。  逆に考えれば、こうして落ちた棘を集めて革靴に取り付けておれた

          Re: 【短編小説】niboshi

          Re: 【短編小説】DIE HARD サウナ

          「サウナに、行きませんか」  不用意に言ったが最後、それは覆されることはない。  サウナは戦場だ。つまり闘争領域だ。  サウナは我慢大会などと言う生易しいものでは無い。  それはれっきとした闘争なのだ。  サウナに男たちは流れる汗をものともせずに座り続ける。 「それでも構わないか?」  お前のような育ちの良い人間が指し示すサウナと、おれたちのサウナは認識が一致しているのか?  男は頷く。  こちらも黙って頷き返す。  服を脱ぎ、汚れを落とす。  そして湯船に浸かって毛穴を拡

          Re: 【短編小説】DIE HARD サウナ

          Re: 【短編小説】FUCK袋どうでしょう

           煙草を吸い終えて座敷に戻ると、同僚(ぴえんして転勤を断れる方の性別)の後ろに詰まれた福袋に目がいった。 「なぁ、その福袋は何買ったの」  今でも給料日前になると学生時代の写真を使って下着を売れる方の性別をした同僚は、袋をバシバシと叩きながら笑った。 「これは24年度新卒の詰め合わせ、こっちは外資系金融勤め、こっちは」 「待った待った、24年度新卒の詰め合わせってまだ内定出てない奴らだろ」  思わず真顔になって訊いてまった。  同僚(穴がひとつ多い故に遊び金に困らないはずが

          Re: 【短編小説】FUCK袋どうでしょう

          【Mの奇妙な物語杯】『募集 : 名前(未出産)』

          「それでなまえ、どうする?」 「死んではじめて価値がでる方ならカミカゼ、にんげんの次に賢い方ならメンクイだろう」 「あら、わたしがにんげんを産む前提なの?」 「それもそうだ」  じゃあ、こんな名前はどうだい?  そう言おうとしてぼくはまだ母の子宮から顔も出していないことを思い出した。

          【Mの奇妙な物語杯】『募集 : 名前(未出産)』

          Re: 【短編小説】天網ドロップ

           鳥は飛んだ高さが高ければ高いほど、落ちた時には酷いことになるのを知っていると言う。  燕が低く飛ぶのはそのせいだろうか。  とにかく暇でこんなことばかり考えていたし、落ちていく最中に気を失うと言うのが嘘だと気づいた。  つまりおれはいま絶賛落下中なのだ。  もしかしたら不眠症の人間みたいにどこかで一瞬くらいは気を失っているのかも知れないが、少なくともいまはこうして覚醒している。  これが覚醒している夢だとしたらそれはそれで仕方ないと思うが、取り敢えずは覚醒している前提で話を

          Re: 【短編小説】天網ドロップ