見出し画像

えりうにさんことうにがわえりもさんの「フラワーマン」について

Twitterでも話題となっていた候補作。「虚構か事実か」については、わたしはあまり興味がなく、また「挽歌」とは何かについて(辞書的な意味は知っていても)まだあまり理解できていないので、これについては他の方の評を読みながらわたしも今後勉強したいと思っている。

わたしは彼の詠む短歌や俳句が好きで、今回の連作も好意的に読ませてもらった。(多分、彼のポップな文体がわたし好みなんだろうと。)

構成も、病院→葬儀→子育てと亡き妻との思い出をぐるぐる→子どもの成長と物語としてまとまっていて、綺麗だと思う。
惜しむらくは他の方も指摘されているとおり、30首で小学校入学までもっていくのはちょっと足早だと。初めて歩いたとかそれくらいの期間でもう少し短期間で濃度が濃い方がよかったのでは。

病院から葬儀への描写にはいいなと思う短歌が多い。

ずいぶんと長い昼寝をする君をみんなでフラワーマンにしていく

触れたことなかった部位もひとつひとつお箸でつまんでいる君の骨

明け方の風呂場で髪を洗うとき香炉のけむりがもういちどきた

その後の子育てと回想の中では

保育園の下足箱前 おかあさんとおかあさんとおかあさんと僕

複雑なかたちの急須すすぎつつあの世のことなど考えている

が秀逸である。

全体的に淡々としている印象も受けるが、わたしにはそれが逆に悲しみを膨らませているように受け取った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?