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I LOVE YOU と言ってくれ

『「愛してる」「好き」「恋」などの直接的な単語を使わずに、「I Love you」を短歌言ってみる』という文車雨さんのネットプリント「I LOVE YOUと言ってくれ」に参加させて頂きました。 
たくさんの「I LOVE YOU」に囲まれて時に切なく、時にあたたかな気持ちになれるよいネプリでした。
いいなぁと思った短歌がたくさんありましたが、10首引いて拙い感想を書かせて頂きました。

カーテンをすこし開いてああこれはきみに見せたい月だと思ふ / 有村桔梗
すこし開いただけでも分かるくらい美しく大きく輝いている月を想像した。感情が揺れるような出来事があった時、それを真っ先に伝えたい相手というのはやはり愛してる人だなぁ。

まだ色になれないけれどお味噌汁お腹いっぱい食べてください / 鳩麦
”色になれない”というのは「(地域差によるお味噌の色そのものに)慣れない」と「(あなたの色に)成れない」を掛けているという風に読んだ。シチュエーション自体はありふれているんだけど、お味噌汁と同じようにあたたかい空気が歌に溢れていて好き。

赤色のパーカーを着て赤ずきんちゃんみたいでしょ 来なよ、オオカミ / 西淳子
こういうちょっと挑発的な感じ、めちゃ好みなんだよなぁ。「返り討ちにしてくれるわっ」て言いながら返り討ちにされたい。

どこへでも行けるし行って 葬式はかならず呼んで まだ行かないで / なつくら
結句が本音なんだろうけど、四句までも決して嘘ではないんだよね。人は矛盾だらけで、またそれが愛おしい。

順番に死ぬでせうからそれまでは毛布のなかに一緒にゐてね / 小泉夜雨
からだを温めるのに毛布って少し心もとないけど、一緒にいることでそのあたたかさを保持できるのだろう。布団ではなく毛布っていう選択がいい。

梨穂子ってあなたが書いただけのメモ手帳に挟みどこまでも行く / たかはしりおこ
大切な人からもらった凝ったプレゼントも勿論嬉しいんだけれど、日常でおそらく何気なく書かれた自分の名前のメモみたいな他の人にとっては特に何の価値もないものがとても大切なものという感覚、凄く好き。それが自分の名前というところも。

哀しみに触れさせてくれ手袋をして触るから傷つけないよ / 屋上エデン
手袋自体があたたかさや柔らかさの象徴みたいなものだけど、直に触れないというところが優しさに加えて切なさを醸し出してる。触れるというのは愛だよ。

君とおなじ名を持つ花の切手買い口づけをしてゆっくりと貼る / ただよう
美しい情景がゆっくりと流れているのが目に浮かぶ。何もかもが丁寧で特別なのだろう。はがきか手紙かは分からないけど、相手が目にするもの、手にするもの、そして見えないところまでにも愛を感じる。

今日のこの素敵な寝癖を見てほしい ひとりで起きる朝にかぎって / 中武 萌
「馬鹿だなぁ」とか「ひでぇなぁ」とか言って笑いあいたい。それは他人ではない特別な人のみに許されたシチュエーションなんですよね。

月、月は遠いねなにも望めない きみが近くに居てくれたらいい / 文車雨
物理的に届かないってのは、愛が何かを感じさせるのにとても効果的で、近くに居てくれるだけで解決してしまう事が沢山あることを思い知らされるんですよね。

いま空に真白の月が出てるだろ きみに言いたいことがあるんだ / 髙木一由

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