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中本速さんの「砂時計の挑戦」について

彼とは何度かリアルで会った事があり、この連作の感想を述べるに当たってその背景が少しだけ見えているが故に最初に思ったのが「良かったなー、良かったなー、おめでとー」だったのは許してほしい。

わたしの見る限り、彼の短歌はどこか俯瞰したようなそれでいてユーモアのある作風が多い。今回の連作でも

転職はゴールではなくスタートだ すみません交番はどこですか

あるけれど「あすがあるさ」はゴキブリが逃げ出すときの音に似ている

それはそれで彼の真骨頂であり好きなのだが、もっとゴリゴリのエゴというか自分をこの連作に盛込んでもよかったんじゃないかなとは思う。

アパートを借りに来ました内定を証明できる紙もあります

支給日の布団のなかでいくたびも光らせてみる電子明細

この二首は誇らしげでかわいい中本速が見えて、とても好感がもてる。

それから、同時掲載となった「死んだらよろしく」。詩人・中本速の本領発揮の作であり、これが好きなら彼の著書「照らす」を買うといい。幸せになれる。

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