見出し画像

「虎に翼」と物語のチカラ

人間が想像できることは、人間が必ず実現できる。ジュール・ベルヌの言葉。朝ドラ「虎に翼」を見ていると、そんな言葉を思い出す。

100年前の女性達の物語。100年後の僕らは主人公を応援する。頑張れ。色々な壁はあるけれど、あなたの夢はきっと実現するから。

僕らは主人公のモデルとなった人物が初の女性弁護士となる「未来」を知っているから、彼女たちの勇気を、安心して応援できる。アメリカの大学生のデモをコスパっぽく語った人もいるけれど、もしそれが勝利するだとわかっていたら、デモのコスパは悪くないのだろうか。

まだ来ていない未来を、まだ勝利していない正義を、どうやって想像できるか。物語の役割は、きっとそこら辺にある。勝利した人の栄光の物語もいいけれど、敗北から立ち上がる人の物語の方がもっといい。

今朝の放送で、主人公の寅子は現在の司法試験に合格し、弁護士への道を歩く。
でも実在の人物ではない男装のヨネは試験に受からない。彼女がこれからどんな人生を歩むかは、誰にもわからない。そんな無数の「敗者」の姿を忘れるなとこのドラマは言っている。彼女たちは負けたとしても、負けてはいないのだと。

朝7時15分。
BSでは過去の朝ドラが再放送されて、その後の7時半から「虎に翼」の先行放送が始まる。
3月までは再放送の「まんぷく」を見ていた。
古くならないドラマ。それどころか貧困が身近に迫り、大企業に不正が相次ぐ今だからこそ、仕事で社会に役立とうとする主人公の起業家精神は輝いて見えた。

「虎に翼」もきっと10年後くらいに再放送されるだろう。その時に僕らはどんな社会の中で今を見つめ返すだろうか。

きっと今よりいい世の中になっているはず。僕はそう想像する。想像しないと実現しないから。そして、振り返る「あの時の自分」が、傍観者じゃなく、みっともなくでも戦っていたと振り返りたい。

良いドラマは「そうである」現実ではなく、「そうあるべき」世界を見せてくれる。
それは、理想を目指す気持ちを勇気づけてくれるし、諦めかけていた青くさい志を思い出させてくれる。

それならドキュメンタリーは、どんな物語を伝えられるだろう。そして今日も米津玄師が歌う。

100年先も憶えてるかな
知らねぇけれど
さよなら またいつか!

何度聞いても、不思議な歌詞
だけど何故かわかる気がする
歌も物語も、時を越えることができる

この記事が参加している募集

ドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?