姫乃たまさんと海猫沢めろんさん

宣伝多めで申し訳ないのですが、2月4日(日)、阿佐ヶ谷ロフトAさんでトークイベントを開催します。

ご登壇者は姫乃たまさん&海猫沢めろんさん。お二人とも、『鬱の本』にエッセイを寄稿してくれています。


姫乃たまさんは、ライター、歌手として活動されています。著作では、2022年に晶文社さんから刊行された「永遠なるものたち」が個人的にすごくおすすめです。手に届かないものたちへの様々な思いが、やさしく丁寧な文体で綴られています。

もうひとつのおすすめはこちら。姫乃さんによるインタビュー本です。

いましろたかしさん、新井英樹さん、しりあがり寿さん、丸尾末広さんなど、錚々たるメンバー。特にいましろたかしさんの章は、今でも心に残っているぐらいよかった。『漫画選集ザジ』が好きな方にぜひ読んでみてほしいです。


自分のいない世界というものに対して、ずっと強い憧れがあります。
どういうことかよく人に訊かれますが、そこはうんと素晴らしい場所だと思うのです。
私なんかがいない世界。
それは遠く離れたところにあると思っていたのですが、
意外なことに漫画の世界が、身近に存在している私のいない世界でした。

姫乃たま『 周縁漫画界 漫画の世界で生きる14人のインタビュー集』

姫乃さんの文章が持っている魅力のひとつとして、言葉が悪いかもしれないのですが、「消滅願望」があると思います。私なんかがいない世界への憧れ。そういった、エッセイの節々から感じられる願望に惹かれて、ぼくは『鬱の本』への原稿執筆をご依頼しました。


海猫沢めろんさんは、作家として活動されています。Wikipediaやインタビューなどを読めばわかるのですが、かなり波乱万丈な人生を送ってきている方です。直接お会いしたことはないのですが、外野からでもはっきりとわかるぐらい行動力があり、作家にとどまらず、様々な活動を行っていらっしゃいます。

海猫沢さんの作品でのおすすめは『もういない君と話したかった7つのこと』。

文庫化される前は『頑張って生きるのが嫌な人のための本』というタイトルでした。「不自由さ」や「生きづらさ」を感じている人は、一体どうすればゆるく自由に生きていけるのか?がテーマです。

 心には「逃避力」があります。
 なにか嫌なことから逃げるために、他のことをしてしまう。
 試験前日だというのに、なぜか夜の10時から部屋の掃除をしてしまうという、だれもが体験するアレです。
 僕の友人で、卒論を書くのが嫌すぎて、その反動から気づいたらウルトラマンの研究書を書いていたという人がいます。おまけに、その論文がとてもよく出来ていて、本当に出版されてしまいました。
 逃げまくってもこういう結果が生まれることもあるんですよ。

海猫沢めろん『もういない君と話したかった7つのこと』「「やらなきゃいけないこと」から逃げまくれ」より

 結婚出産引っ越し、はたから見るとぼくの人生は前進していることでしょうが、そのぶん日本という国の嫌な部分を見ることも多くて、相変わらず未来にまったく希望を持てません。最近は「人生一〇〇年時代」なんて言われていますが、はっきり言って地獄です。何の罰ゲームなのかと思います。むしろ、一〇〇年生きるよりも「楽に死なせろ!」ということばかりを考えています。

海猫沢めろん『もういない君と話したかった7つのこと』文庫版あとがき

ぼくは20歳ぐらいの頃にこの本を読んで、とても影響を受けました。心がすこし楽になりました。


『鬱の本』で、海猫沢さんは次のように書いています。

憂鬱で苦しくとも、幸福を拒否してはいけない。真面目に生きることとユーモアが両立するように、憂鬱であることと幸福は両立するのだから。

『鬱の本』

今回のトークイベントでは、これがひとつのテーマになるのかな、という気がしています。憂鬱と幸福の両立、それは地獄のような毎日をなんとか乗り越えていくために重要なことだと思うのです。個人的にも興味深いテーマなので、とても楽しみにしています。


『鬱の本』刊行記念トークイベント
姫乃たま×海猫沢めろん

※配信もありますので、ご興味のある方はぜひです。よろしくお願いします。

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