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6球目を見送った佐藤輝明を、僕は責める気にならない【5/7 対カープ戦●】

勝負の分け目は8回裏にやってきた。
4番の大山悠輔が四球を選ぶ。2点ビハインドながら1アウト満塁のチャンス。これ以上ないチャンスで佐藤輝明に打席が回ってきた。満塁になったところで、カープのピッチャーは島内颯太郞に交代した。

佐藤輝は初球からスイングをかける。高めのストレートはファウルになって甲子園はどよめいた。2球目、インハイに外れてボール。3球目、4球目もボールになった。打つべき球を見極められているように見える。甲子園のざわめきは一際大きくなった。5球目はストレートが再びファウルになってフルカウント。

勝負の6球目。佐藤輝はアウトコースの直球を見送った。
判定は……ストライク。佐藤輝は最後まで納得いってなさそうだった。結局タイガースは無得点で8回の攻撃を終えた。

何とも言いがたいボールだった。確かにこの日はアウトコースの球が多めにストライク判定されていた。最後の球も審判によってはボールと宣告するコースに見えた(ホントは日によってストライクゾーンが変わってしまうことのほうがどうなんだろうと思うけど)。
佐藤輝も闇雲に振るのではなく、打てる球を見極めた上で見送ったように見えた。少しでも自信がなかったら、諦めてすぐにベンチに戻っているはずだ。

正直、審判の判定はどうしようもない。
けれど、あの場面でボールを見送った佐藤輝が悪者扱いされるのだけは嫌だ。

責任感の強い選手なのだろう。佐藤輝は時折スイングが強引になりすぎることがある。きっとそこには「自分が決めなきゃ」という意識があるはず。でもこの日は次の打者につなぐ意識が感じられた。

確かに、振らないと何も起こらないという見方もある。
だがあの場面は満塁のフルカウント。押し出しなら1点が入っていた。しかも続く打者は6番の森下。もし押し出しなら満塁を継続したまま森下につながっていた。フルカウントでストレートを見送ったのも、きっと後ろに森下がいたから。佐藤輝なりに、今の自分にできることをやり通した。そして、「今日は」それがストライク判定された。あの見送りは決して消極的な姿勢の現れじゃない。僕はそう思うのだ。

日々の試合で、佐藤輝がなんとかしようと模索しているのは伝わってくる。
僕は、彼の努力が実を結ぶ日が来る瞬間を信じている。
ただ、それは今日ではなかった。それだけのこと。

次はやってくれるさ。見てろよ。

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