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ブログ:アニメの話

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私の個人ブログの中から、アニメに関する話題のみをピックアップしました。
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記事一覧

映画感想 すずめの戸締まり

 あの時の心残りを辿って。  2022年は大作アニメが次々に公開された年だった。2月に『鹿の王 ユナと約束の旅』、4月にヒットシリーズ『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、8月に『ONE PIECE FILM RED』、そして12月に『THE FIRST SLAM DUNK』。そんな年の11月に劇場公開されたのが本作『すずめの戸締まり』だ。他にもアニメ映画は多く、ほぼ毎月1本以上公開されていたほどだった。果たしてこの年のアニメ映画を全部見たという人はどれだけいるのやら。  2

映画感想 アリスとテレスのまぼろし工場

 「臭い」は生きていることの証。  岡田麿里監督第2回作品『アリスとテレスのまぼろし工場』。2013年9月に劇場公開。制作は前作『さよならの朝に約束の花をおくろう』に惚れ込んだ制作会社MAAPAが岡田麿里を監督として招聘。岡田麿里はその当時執筆中だった小説をそのまま企画として提出し、映画制作が始まった。  副監督は前作ではコア・ディレクターとして関わった平松禎史。平松禎史が絵コンテから作画までを担当した。  制作会社がPAWORKSからMAPPAに変わったのでスタッフは基本

映画感想 さよならの朝に約束の花をかざろう

 アニメ史上もっとも美しいエンディング。  『さよならの朝に約束の花をかざろう』はPAWORKS制作による2018年の作品。監督・脚本・原案は岡田麿里。岡田麿里といえば、アニメ界隈では知らぬ者はいない大ベテランの脚本家。『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』『凪のあすから』『キズナイーバー』など岡田麿里脚本のヒット作は数知れず。その岡田麿里による原案による初の監督作品が本作。  副監督としてサポートに回ったのが篠原俊哉。『色づく世界のあすから』『凪のあすから』『RDG

映画感想 ゆるキャン△

 もう一度自分を見つめ直すために。  『ゆるキャン△』は2015年から『まんがタイムきららフォワード』で連載がスタートし、2019年からは『COMIC FUZ』に移籍して現在も連載が継続。現時点で600万部を超える大人気漫画である。『ゆるキャン△』がアニメになったのは2018年。アニメーション制作C-Station、京極義昭監督によるアニメシリーズは高い評価を獲得し、制作会社を変更しながら現在第3シーズンが放送されている。実在のキャンプ場をロケハンして丁寧に再現しただけでは

映画感想 スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

 アメリカのアニメーター達の意地!  マイルス・スパイダーマンがニューヨークへ戻ってきた! 2018年に第91回アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編。2023年に劇場公開された本作は、アメリカが制作したアニメーション史上最長の140分。制作費は1億ドルに対し、現在のところ6億ドルを稼ぎ出している。まだ劇場公開が終了していない国もあるはずなので、この記録はまだまだ伸びるはずだし、これからホームエンタメでも収益を伸ばしていくはずだ。  

2月5日 コナミがアニメスタジオを作るそうです。その話を聞いて思ったこと。

 えー…コナミが独自にアニメーション会社を作りました……という話です。  私がアニメーターだった頃の話、コナミは業界の全アニメーターの「リスト」を作っていた……という話を聞いたことがある。私の先輩はそのリストを直接見て、自分の名前もあった……と話していた。  ……私の名前もあったのだろうか?  この話も十数年前の話になるから、今もリストがあるのかどうかわからない。とにかくも、コナミは実は意外とアニメ業界を見ていた、ということがわかるエピソードだ。  今回の話は、「表」の面

1月13日 孤独な天才。『ジブリと宮崎駿の2399日』の感想

 NHKの『ジブリと宮崎駿の2399日』を視聴した。いやぁ、録画してたの、すっかり忘れてた。  内容はすごく良かった。編集に凝ったドキュメンタリーで、現在の映像とアニメの映像、過去映像がパッチワークのように組み合わせて宮崎駿の現在地を表現している。この表現が現実とアニメの境界が崩れかけようとしている人……という印象をうまく表現できている。  ドキュメンタリーの大テーマは、2018年にこの世を去った高畑勲との関係。宮崎駿と高畑勲。ともに東映動画出身で、高畑勲のほうが6つ上の

11月1日 なぜアニメはブラックになるのか? それは儲からないから

 アニメの労働環境に関する興味深い記事が出てきたの紹介。  10月28日の講演だから、このブログ記事が載る頃にはまるまる1ヶ月が過ぎていることになる。  詳しい内容は、リンク元を読んでいただくとして……。  徳島県で開催されている大規模アニメイベント・マチ★アソビのなかで開催された舛本和也さんの講演会リポート。TRIGGERの現取締役の桝本和也の著書は、以前私のブログでも紹介した。こちらではアニメーション制作のなかの「制作進行」について解説されている。興味のある方はぜひ著

映画感想 長靴をはいた猫と9つの命

アメリカのアニメーションがアップデートされた瞬間。  『長靴をはいた猫と9つの命』はドリームワークス・アニメーション製作の『シュレック』シリーズのスピンオフ作品。実は2011年に『長靴をはいた猫』を主役にしたスピンオフ映画は制作されていた……知らなかった(いや、知っていたけど忘れてたのか?)。今作は11年ぶりに描かれた続編。「長靴を履いた猫」であるプスを主人公にした映画の2作目である。  監督はジョエル・クロフォード。絵コンテアーティストとしてキャリアをスタートし、2017

8月1日 YouTube見たらなんかやってた 『響け!ユーフォニアム《総集編》』

 7月の終わり頃、YouTubeを見たら京アニチャンネルから『響けユーフォニアム』が特別配信されていた。8月1日現在は……あ、もう配信終了しているのか。  配信されていたのは第1期の総集編『響け! ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ』、第2期の総集編『届けたいメロディ』、黄前久美子2年生編『誓いのフィナーレ』の3作品。いい機会だから、仕事終わりに一気視聴した。  まず1作目『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』。第1シーズンがテレビ放送されていたのは2015年の春から。

映画感想 鹿の王 ユナと約束の旅

 日本最高アニメーター・安藤雅司第1回監督作品!  『鹿の王 ユナと約束の旅』は2022年公開のアニメーション映画だ。原作は上橋菜穂子による小説『鹿の王』。監督はジブリきっての実力アニメーター安藤雅司。『もののけ姫』をはじめとして『千と千尋の神隠し』『思い出のマーニー』などのジブリ作品で作画監督を務め、他にも今敏監督『東京ゴッドファーザー』『パプリカ』で作画監督、新海誠監督『君の名は。』で作画監督……我が国を代表する大ヒットアニメーション映画にはだいたい関わっているだけでは

映画感想 犬王

 室町時代にいたかもしれないロックスター。その名は犬王!  『犬王』は室町時代を舞台とした湯浅政明監督による5本目の劇場アニメーション作品だ。タイトルにもなっている「犬王」は15世紀頃、世阿弥と同時代に実在した猿楽の名手であるが、奇妙なことにほとんど記録に残されていない。Wikipediaで「犬王」を見ても、書かれているのはほんの数行。この謎めいた人物を題材にした作品が、古川日出男による小説『平家物語 犬王の巻』だ。湯浅政明監督のもとにオファーが来たとき、企画にロックアーテ

2023年春アニメ感想 水星の魔女 後編

 今シーズンアニメの中でも突出した存在感を発揮した『水星の魔女』。『ガンダム』シリーズがこんなふうに話題の中心になるのはいつぶりの話だろうか……。カジュアルなアニメファンの人気を獲得しつつ、『ガンダム』らしい奥行き感をしっかり備える。よくもこんな複雑な仕事をこなしたな……と素直に感心する。  私としてもテレビシリーズの『ガンダム』を見たのは実は十年ぶりくらい。ガンダムはなんだかよくわからない。むやみに複雑で、情緒でわかるようなシーンが少ない。要するにドラマが弱い。40年前に生

2023年春アニメ感想 鬼滅の刃 刀鍛冶の里編

 本編の感想文に入る前に、ちょっとその周辺の話。  『無限列車編』から気になっていたことだけど、予告編の編集……あまりにも下手すぎないか?  予告編動画を見ても、テロップと回想シーンばかり。テロップはワンフレーズ出てくるたびに「バーン! バーン!」と派手な音の繰り返し。そういう回想シーンとテロップだけの映像が数分続いて、やっと数秒の新規映像が出てくる……。  なに、この素人編集……。でもufotableの優秀な編集スタッフがあんな素人編集するわけがない(ufotableの他の