横浜中華街 2024

持続可能な開発、社会学、文化人類学、民族学、環境問題、BOP、貧困問題、平和構築、戦略…

横浜中華街 2024

持続可能な開発、社会学、文化人類学、民族学、環境問題、BOP、貧困問題、平和構築、戦略論、明治維新、日本近代史、太平洋戦争、中国、インテリジェンス、エネルギー問題、沖縄、基地問題、原発問題、核拡散、軍事、地政学、難民問題、途上国開発などに興味があります。宜しくお願い致します。

最近の記事

【読書ノート】『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く』森川すいめい

精神科医でありホームレス支援団体「てのはし」の創設者でもある著者が、日本の「自殺希少地域」五か所を巡ったフィールドワークの記録。(この五か所は徳島県旧海部町(現・海陽町)・青森県風間浦村・青森県旧平舘村・広島県下蒲刈島・東京都神津島)これらの地域に共通していることをまとめたものだが、「困った人を放っておかないこと」などはじめ、著者の「気づき」は多くの示唆に富んだ内容になっており興味深い。多くの人が読むべき内容。 序章 支援の現場で 第1章 助かるまで助ける 第2章 組織で助

    • 【読書ノート】 66 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 富野由悠季

      時代背景は「シャアの反乱」(映画「逆襲のシャア」)の時に10代だったハサウェイが20代になった宇宙世紀103~5年ころ。(「ガンダムユニコーン」より少し後の時代)上巻は1989年に出版され、その当時読んだ記憶があるので、今回35年ぶりに再読することになる。その当時は「テロリストの主人公」「老人のパトロンのいるヒロイン」などガンダムであってもアニメ化は絶対に無理であろうと感じたのを覚えているが、時代は変わり30年以上経ってアニメ化された(まだ1部のみ)。アニメによりこの小説も再

      • 【読書ノート】65『DV・虐待・性暴力』特集

        1.「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」上間陽子 2.「海をあげる」上間陽子 著者は沖縄で若い女性の実態調査を行っている琉球大学教授。本書は本屋大賞2021ノンフィクション大賞受賞作品。前作「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」は被害者少女たちの話だったが、このエッセイ集は著者自身を含む沖縄に住む女性・少女たちのことが綴られており、著者の細やかな感性とやさしや思いやり、そして弱者を生み出す土壌としての沖縄の風景が溶け合って独自の色合いを醸し出している。特に女性はぜ

        • 【読書ノート】『エネルギー危機の深層 ――ロシア・ウクライナ戦争と石油ガス資源の未来』原田大輔(著)

          著者はJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の調査部課長で、長年ロシアのエネルギー問題を研究している専門家。本著はウクライナ侵攻を機に「前例なき対露制裁」を受けているロシアをエネルギーの視点から徹底的に読み解く試み。石油・天然ガスをめぐる最新地図の膨大な情報が記載されており、ロシアのエネルギー問題の現在とその「深層」が良く理解出来る内容。 ● ダニエル・ヤーギンが「新しい世界の資源地図」で述べていたのと同様、著者も「化石燃料需要は減少するにしても、少なくと中長期にわたっ

        【読書ノート】『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く』森川すいめい

          【読書ノート】63『情報分析官が見た陸軍中野学校』

          陸軍中野学校については多くの書籍が出版されており何冊か読んだことがあるが、著者も主張するように誇張されたものが多い。この本は客観的に分析されたバランスが取れた内容になっており、中野学校に実情に迫ったものと言える。 目次 第1章 秘密戦と陸軍中野学校 第2章 第一次大戦以降の秘密戦 第3章 陸軍の秘密戦活動 第4章 中野学校と学生 第5章 中野学校の教育 第6章 なぜ精神教育を重視したか 第7章 中野出身者の秘密戦活動 第8章 中野学校を等身大に評価する 以下、気になった個

          【読書ノート】63『情報分析官が見た陸軍中野学校』

          【読書ノート】62「絶望を希望に変える経済学: 社会の重大問題をどう解決するか」アビジット・V・バナジー・エステル・デュフロ

          原題は「困難な時代のための優れた経済学」。2019年ノーベル経済学賞を受賞したバナジーとデュフロ2人の経済学者による、格差や貧困などの現代社会が抱える問題に、経済学と社会政策はどのような役割を果たすことが出来るか述べた本。条件付き現金給付(CCT)や卒業アプローチなど、開発学で有名な手法についても検証している。国際協力に関心がある方は必読と言える一冊。 【目次】 序文 第1章 経済学が信頼を取り戻すために 第2章 鮫の口から逃げて 第3章 自由貿易はいいことか? 第4章 好

          【読書ノート】62「絶望を希望に変える経済学: 社会の重大問題をどう解決するか」アビジット・V・バナジー・エステル・デュフロ

          【読書ノート】「武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別」 藤田早苗 (著)

          著者は国際人権法の専門家。以前から言われているように日本は人権後進国であり、女性差別や入管問題などその現状とそれを変えていくためにはどのようにしたらよいかについて書かれた示唆に富んだ内容。先進国でありながら日本の人権感覚は国際的なそれと大きくずれており、国際的な人権基準と照らし合わせてみると日本で人権が守られていないことが多々ある。大きな原因の一つが政府が人権を保障する義務を守っていないことである(特別報告者の勧告無視など)。特に国連人権理事会の特別報告者らが「国際人権基準を

          【読書ノート】「武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別」 藤田早苗 (著)

          【読書ノート】60 「インド―グローバル・サウスの超大国」

          著者は長くインドを研究する経済学者で、近年「グローバル・サウス」と呼ばれる世界1位の人口と世界5位の経済力であるインドの入門書。インドの経済、社会、内政、国際関係などについて読みやすい文章でバランスよく網羅している。インドについては知らなかったことが多々あったので学ぶことが多い1冊。やはり20年ほど前の貧困大国のイメージとは大き変貌しており、国内の貧困や格差は残っているものの、様々な方面で世界に影響を及ぼしている姿が良く理解出来る。中国、ロシア、米国との外交の検証によると、中

          【読書ノート】60 「インド―グローバル・サウスの超大国」

          【読書ノート】59「勇気ある女性たち: 性暴力サバイバーの回復する力」デニ・ムクウェゲ

          原題は「女性の力:ある医師の希望と癒しの旅」。著者はコンゴ人医師でノーベル平和賞受賞者。本著を読み進めることで、コンゴ東部で恒常的に起きている性暴力と女性に対するあらゆる暴力の凄惨さを良く理解出来る。著者は紛争下において性暴力は必ず起きるためそのためのケアは必ず必要だという。そしてナチのホロコースト下での性暴力、また大戦中の日本の慰安婦問題にも言及している。性暴力を起こさないために何をするべきかの著者の提言も最後に述べられている。悲惨な内容も含まれているが、現実を知るために多

          【読書ノート】59「勇気ある女性たち: 性暴力サバイバーの回復する力」デニ・ムクウェゲ

          【読書ノート】58「天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊」山崎良兵 (著)

          世界を代表する大富豪で読書家でもあるテスラのイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツの読んだ本を100冊選んで紹介するという内容。紹介された本をどれも有名かつ優れた内容のものばかりで、今まで自分が読んだことがある本も何冊か含まれていた。 著者はジャーナリストでこの本を書くために多くの本に目を通さなくてはならなかったため、完成まで3年ほどかかったと言う。この本を読めば、紹介されたいくつもの本のあらすじが理解出来るようになっており、非常にすぐれた

          【読書ノート】58「天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊」山崎良兵 (著)

          【読書ノート】57 「情報生産者になる」 上野千鶴子(著)

          著者は社会学者で東京大学名誉教授。フェミニズムの第一人者で多くの著書がある。本書は大学・大学院における論文の書き方を指南したもので、情報生産技術、知的生産の教科書とも言えるもので内容は濃い。「問いを立てる」「研究計画」「収集」「分析」「アウトプット」までの一連の過程を順を追って説明しており、どのように研究を進め「情報生産者」になるかを理解することが出来る良書。彼女の大学での講義が質の高いものであるかが窺い知れる内容。文系の大学生大学院生だけでなくアウトプットを行う全ての人にお

          【読書ノート】57 「情報生産者になる」 上野千鶴子(著)

          【読書ノート】56 「Anthro Vision(アンソロ・ビジョン) 人類学的思考で視るビジネスと世界」

          著者は英国人でケンブリッジ大学で社会人類学を専攻し博士号を取得し、その後フィナンシャル・タイムズのジャーナリストになった異色の経歴の持ち主。(東京支局長として日本に滞在したこともある。)本書の原題は「人類学的視野」で2022年に出版。現在、グーグルなど始めとする欧米のハイテク企業は積極的に文化人類学者を採用しているが、これは人類学者は他者の心の中に入り込むことを学び、異文化を理解するだけでなく、インサイダー・アウトサイダーとして新鮮な視点で自らの環境を評価し、別の視野を得るの

          【読書ノート】56 「Anthro Vision(アンソロ・ビジョン) 人類学的思考で視るビジネスと世界」

          【読書ノート】「入門 開発経済学 グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション」山形辰史 (著)

          著者は立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授。題名が示すように開発経済学の入門書。大学の教科書のように開発経済学の重要な項目が一通り網羅されている教科書的な内容になっている。しかしながら、近年の国際開発やODAの在り方に対して鋭い批判的な目を向けており、特に国連のSDGsと日本政府の開発協力大綱に対しては極めて懐疑的な立場を取っている。貧困で苦しむ途上国の人々を支援するために本当に必要なことは何であるかを問い詰め吟味すること、これが本来の学者・研究者の行う仕事ではないかと

          【読書ノート】「入門 開発経済学 グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション」山形辰史 (著)

          【読書ノート】54 「復興〈災害〉――阪神・淡路大震災と東日本大震災 」(2014)

          10年ほど前に書かれたものだが、今回の能登半島地震を期に読んでみた。阪神淡路大震災(1995)と東日本大震災(2011)のケースをもとに日本の復興政策の弊害を述べている。残念ながら記載された内容は古くなっていない印象で、これは日本の災害・復興政策が進化していない証とも言える。 (2024年2月18日)

          【読書ノート】54 「復興〈災害〉――阪神・淡路大震災と東日本大震災 」(2014)

          【読書ノート】53 「家を失う人々」 マシュー・デスモンド

          本書は2016年に出版されピューリッツア賞をはじめ数々の賞を受賞した。原題は「強制退去:アメリカ都市における貧困と利益」。著者はプリンストン大学の社会学者で、アメリカの貧困層の住環境を調査するために、自ら貧困層のトレーラーハウスパークで生活して、家主と犯罪や様々なトラブルを恒常的に引き起こしている貧困層の借家人たち(ほどんどは有色人種)たちと交友を結びそれを記録したノンフィクション。借家人たちは常にお金がなくトラブルを起こしているために、頻繁に家主から強制退去をさせられ生活が

          【読書ノート】53 「家を失う人々」 マシュー・デスモンド

          【読書ノート】52「中村哲特集」

          私が今まで読んだり観たりしてきて中村哲医師に関する書籍やドキュメンタリー作品を簡単にまとめてみました。どれも中村氏の活動を理解する手助けになる素晴らしい内容なのでお勧め致します。 1.「アフガニスタンの診療所から」 (2005年) もともと1993年に出版されたもので、題名とは異なり全体の3分の2ほどはパキスタンのペシャワールを拠点したアフガニスタン難民に対する医療活動の話で、その後国境を越えて移動して、アフガン内のダラエ・ヌールに医療拠点を立ち上げる過程が描かれている

          【読書ノート】52「中村哲特集」