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詩ことばの森(162)「懐かしい庭」

懐かしい庭

自分は見たらしい
点滅する幻影の街を
そこでは何も生まれず
繁栄もなければ衰退もない
ただ匂いのほかには

僕は庭に出てみた
灰色の木肌を剥き出しにして
無言の空気が留まるだけ
そこでは僕自身も虚無だった
時間さえ幻なのだから

時折吹く風の匂いは
懐かしい面影を連れてきて
ただ無言の香りが庭一面に
立ち込めるばかり

(森雪拾)





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