コイン
2024/4/9
朝、チェックアウトするキムを見送る。
ベッドの下にコインが落ちていたので教えてあげると、彼はそれを含めたジョージアとアルメニアのコインを私にくれた。
「もうしばらく使わないから」と。
そして
「北海道で再会しよう」
と挨拶をして別れた。
出会った当初、彼が言った印象的な一言を私は今でも覚えている。
韓国では
ある年齢になると兵役があるんだけど
その日の訓練が終わると
皆でクレヨンしんちゃんを見て和むんだ
クリスもこの日チェックアウト予定なのだが
「今日タイに行くか、まだ考えている」
彼はそう言っていた。
時刻は既に14:00過ぎ。
私も前日に出国を決める事はあるが、さすがに当日チケットを買って出国をした事はない。
なので私は
「ここに残るなら、もちろん歓迎するよ」
そう彼に伝えて宿を出た。
クリスは少しだけ笑顔を見せながら、無言で応えた。
この日はフーゴと会う約束があったので、再び彼の宿まで迎えに行く。
合流した私達はいつもの様に、ただ勘に任せて裏路地を歩き、そして見つけた一軒のカフェでコーヒーを頼んだ。
そこの店員は19歳の若者だったのだが、日本好きで、今年9月に来日予定なのだという。
なんと、初めて会う日本人が私との事。
嬉しくなった私は50円硬貨を彼にあげた。
すると彼も喜んでくれて、一旦店の奥に行ったかと思うと、すぐに戻って来て私にコインをくれた。
ジョージアのオールドコインらしい。
こんな何気無いやり取りも思い出の一つだ。
この日も5時間歩いた私達は、ジョージア料理を提供する小さなレストランへ。
と思った矢先
停電です
ジョージアではよくあるみたいだ。
店員もせっせとロウソクに火を点け、他の客も動じること無く食事を楽しんでいる。
「じゃあ、また明日」
お互いに挨拶して、宿に戻った24時。
音を立てまいと静かにドアを開けた部屋に、クリスの姿はなかった。
『そうか…タイに行ったんだな』
彼の新たな出発を応援する気持ちと
延泊を期待していた気持ち
複雑な心境のまま自分のベッドに向かう
そこには
10数枚のジョージアコインが積まれていた
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。