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世界文学のアーキテクチャ

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グローバルに流通する文学作品の研究において、「世界文学」の概念が用いられるようになりました。もともとは産業革命期の19世紀に誕生したこのワードを手がかりに「小説」と「資本主義」の… もっと読む
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2023年7月の記事一覧

第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(後編)|福嶋亮大

本日のメルマガは、批評家・福嶋亮大さんの連載「世界文学のアーキテクチャ」をお届けします。 『水滸伝』や『三国志演義』といった作品がどのように読み解かれたのかを通じて、近世の中国文学と批評のあり方について分析します。 前編はこちら。 福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ 第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(後編)5、一六世紀のコミュニケーション革命 以上のように、中国の「小説」はその周縁性ゆえに、オーソドックスな文化的分類体系を攪乱してきた。この文化のへりにあ

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第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(前編)|福嶋亮大

福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ 第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(前編)1、二つの文学ウイルス 本章および次章では、主に近世(early modern)の小説を中心として、中国文学および日本文学のあり方に照明を当てるが、それに先立って、中国小説の文化史的な位置づけを検討したい。少し回り道しながら考えていこう。  夏目漱石の『文学論』(一九〇七年)の序は、英文科出身の彼が英語の研究を命ぜられ、二〇世紀初頭のイギリスに留学したときの回想に始まる。彼はそこ

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