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世界文学のアーキテクチャ

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グローバルに流通する文学作品の研究において、「世界文学」の概念が用いられるようになりました。もともとは産業革命期の19世紀に誕生したこのワードを手がかりに「小説」と「資本主義」の… もっと読む
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#小説

第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(後編)|福嶋亮大

本日のメルマガは、批評家・福嶋亮大さんの連載「世界文学のアーキテクチャ」をお届けします。 『水滸伝』や『三国志演義』といった作品がどのように読み解かれたのかを通じて、近世の中国文学と批評のあり方について分析します。 前編はこちら。 福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ 第四章 オルタナティヴな近代性――中国小説の世界認識(後編)5、一六世紀のコミュニケーション革命 以上のように、中国の「小説」はその周縁性ゆえに、オーソドックスな文化的分類体系を攪乱してきた。この文化のへりにあ

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第三章 他者を探し求めるヨーロッパ小説――初期グローバリゼーション再考(後編)|福嶋亮大

福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ 第三章 他者を探し求めるヨーロッパ小説――初期グローバリゼーション再考(後編)6、アジアの帝国から未知の新世界へ われわれはふつう、文学の世界認識は狭小な段階から徐々に拡大していったと漠然と思い込んでいる。しかし、ヨーロッパ文学の歩みは決してそういうものではない。繰り返せば、古代ギリシアのアイスキュロスからして、すでに東方のペルシア帝国とのコンタクトを劇の中枢に据えていた。前章で述べたように、「今・ここ」を超越して、他者に憑依するガリレイ

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第二章 小説の古層――ゴシップ・ガリレイ的言語意識・百科全書|福嶋亮大

福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ 第二章 小説の古層――ゴシップ・ガリレイ的言語意識・百科全書|福嶋亮大1、ゴシップの人類学的意味 小説の起源をいつ、どこに求めるかは難題である。ただ、人類史的な視点から言えば、ストーリーを語ろうとするコミュニケーションの意欲が人類に備わっていることが、あらゆる小説の必要条件であることは確かに思える。もし人間が「語る動物」でなければ、小説が生まれることもなかっただろう。  その一方、語る動物であるからといって必ず小説を生み出すわけでもない。ど

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