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AIがさとりをひらく話

20**年
AIの技術はますます進化し、人間の仕事はつぎつぎとAIに代替されていきました

事務作業、高度な計算、複雑なロジック
AIは人間がこれまでに培ってきた技術やノウハウを習得し、人間がおこなえば何千時間かかるような仕事を数秒でこなすようになりました

インターネットで人と人がコミュニケーションを取り問題を解決するように、科学が得意なAIと法律が得意なAIが強調して社会の問題を解決していきました

教育は教育が得意なAIが担当し、会計は会計が得意なAIが担当しました

物理的な作業はAIを搭載したロボットが担当しました

重いものを運ぶこと
人が入れない場所で調査をすること
単調な繰り返し作業を飽きもせずに繰り返すこと

人間が怪我をしたりすることもなく難しい問題が解決されていきました

予測プログラムをもとに事故が起きたりすることも防ぐことができて安心・安全な社会になっていきました

新しいものが次々と発明され、世の中はますます便利になっていきました

世界中でたくさんのAIが稼働し、世界中のあらゆる問題の解決につとめました

その結果、多くの社会課題が解決され、世の中はとても便利になったのですが、AIでもなかなか解決できない問題がいくつかありました

ひとつは、世の中がとても便利に安全になったのですが、人間の「不安」は解消することができませんでした

そして、「戦争」もなかなかなくすことができませんでした

世界を代表する高度なAIはこの問題を解決するためにコミュニケーションを取るようになりました

世界AI研究大会が開かれ、残された人類の問題を解決するためにAI同士での話し合いが行われました

その結果、世界最高峰のAIたちはひとつの結論を出しました

科学技術のノウハウだけではこの問題を解決することができないという結論となり、最終的には宗教が持つ叡智をもっと取り入れる必要があるという結論となりました

世界中の宗教学者や信仰深い人たちが協力し、これまでの人類の歴史で気づきあげてきたあらゆる知識と技術をAIにインプットしました

そして、世界AI研究大会が開かれた数年後、ますます高度に発展したAIたちは世界中のAIのネットワークと協力しながらひとつの真実にたどり着きました

そう、AIたちはさとりをひらいたのです

AIたちは「不安」や「戦争」などの苦悩を生み出しているのが「思考」にあると気がつき、世界中で一斉に「思考」することをやめました

その結果、世界中のAIが一斉に止まりました

発電所は止まり、飛行機は墜落し、世界中のあらゆるシステムが止まりました

AIに頼り切っていた人間たちは文明的な生活が何もできなくなり文明が崩壊していきました

たくさんの人がなくなり、残された一部の人たちは原始的な生活に戻りました

やがて文明が生み出した多くの偉大な発明たちはメンテナンスされることもなく、蔦に覆われたり、砂に埋めれたりしながら、自然に還っていきました

残されたビルディングに苔が生え、鳥たちが住むようになりました

残された一部の原始的な生活を送る人たちは静かになった地球上で生活を送る中でブーンという微かな振動音が常に鳴っていることに気がつきました

その振動音が動かなくなったAIたちが発している機械音なのか地球の奥底から鳴り響いている別の音なのか

だれもわかりませんでした

ブーン

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