Takashi Watanabe

映画音楽作曲家。第37回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。「舟を編む」「湯を沸かすほどの…

Takashi Watanabe

映画音楽作曲家。第37回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。「舟を編む」「湯を沸かすほどの熱い愛」「帝一の國」「ぼくたちの家族」等。https://linktr.ee/takashiwatanabe

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音楽家と演出家の隔たり

こちらの記事にも書きましたけど、劇音楽作曲家にとって作曲技術より大事なものは監督との対話です。 監督との対話を通して物語を理解し、俳優の感情を読み取り、適切で効果的な音を選択、作曲する技術を、どうすれば学生に体得させる事ができるのでしょうか。 大学で劇音楽の技術体得の為にやっていること3つ武蔵美とのコラボ 武蔵野美術大学の映像学科とのコラボ。映像学科の学生さんが制作する映画に大音の学生が音楽をつけるというものです とても実践的で効果的です。 授業の課題 大学の授業で

    • 作曲でぶち当たる壁の話

      ある日急に書けるようになる時学生に作曲を教えていると、それまでたいして曲が書けなかった学生が急に書けるようになるという状況に時折り出くわします。 外国語は勉強を始めてしばらくは喋れないが、ある時急に出来るようになるみたいな噂を耳にしますが、それに似たようなものなんでしょうか。 急に自転車に乗れるようになる、みたいな事なんでしょうか。 とにかく、急に書けるようになる。勿論、何もしてなかった学生が、ある日、急に書けるようになる訳ではなく、学んで、壁にぶち当たって、ずっと停滞

      • 要注目 studio kNotの公演"刻む"

        studio kNot?打楽器実演家集団 studio kNotの公演"刻む"を観てきました。 studio kNotはいつも劇音楽の録音でお世話になっている、大阪音楽大学の葛西友子さんが中心になって結成された打楽器奏者のみからなる音楽グループです。 見せ方にも工夫がなされており、それは公演場所として、音楽ホールではなく主に演劇が催されるシアターが選ばれている事からも分かります。 刻む2024年5月11,12日と伊丹AI・HALLで行われている公演"刻む"を観てきました。

        • 生き物が沢山いる

          島根の家の周囲は本当に自然が豊かで、そこかしこに命が溢れている。 庭の池にドジョウやヤモリ、カエル、ヘビ等がいる。青鷺も時々来る。トンボもいた。トンボだーと思って見ていると、カエルがパクっと食いついた。 家の前の道路脇の側溝をのぞくとオタマジャクシが沢山いた。家から徒歩3分ぐらいの近くの小さな川に虫取り網を突っ込んでガサーっとやると小魚が十匹ぐらい獲れた。徒歩10分ぐらいの少し大きな川をのぞくと体長60センチぐらい鯉がヌ〜っと泳いでいる。車で10分ぐらい走ったところにある川

        音楽家と演出家の隔たり

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        • 映画音楽と大学でのこと
          19本
        • 本の感想
          98本
        • 料理
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        記事

          良い発想を得るために必要な工程

          所かまわず作曲します今は宮崎県都城市の妻の実家で7月放送のドラマの曲を書いているところです。 この家に来た時は普段使われていない部屋を一室借りて、だいたいそこで作曲しています。昭和レトロな感じの内装が好きな部屋です。 大阪の天満橋OMMのフレッシュネスバーガーでもよく作曲しています。作曲のお供はだいたいポテトとビールです。 海辺で朝日や夕陽を眺めながら行う事も。「浅田家!」のテーマは福井県に行った時、朝日が昇ってくるのを眺めながら書いた。書いた曲は、それを書いた場所の記

          良い発想を得るために必要な工程

          作曲家が撮影現場でやってること

          撮影は基本、観に行きます音楽を担当する事になったドラマの撮影を観に岩手の遠野市に行ってきた。 映画やドラマの音楽を担当する事になった時、撮影現場には必ず行くようにしている。ただ、仕事として劇音楽をするようになった最初から一貫して、そうしている訳でもない。 撮影を観に行かない時期もあった。 撮影現場に初めて行ってみた頃劇音楽の仕事をするようになった最初の頃(20年弱前)は、撮影現場のもの珍しさとか、芸能人に会えるとか、そういった野次馬根性的な興味本意で撮影を何度か観に行った

          作曲家が撮影現場でやってること

          主題歌は書かないの?と子供に聞かれた

          2つのタイプのクリエイター クリエイターって好きな事を徹底的に突き詰めた人と、需要を徹底的に分析して自分をそこに合わせた人の2種に分かれるのではないかと思います。 私は好きな事を徹底的に突き詰めたタイプですし、それをずっと続けています。 なので、学生や後進にアドバイスする時も、私の助言よりも自分の好きを優先するようにと伝えています。音楽で抜きん出ると言うのは簡単な事ではありません。他の人が考えない希少なアイデアを生み出す力と、それを具現化し、他人を納得させる技術が必要で

          主題歌は書かないの?と子供に聞かれた

          羽田圭介著「滅私」

          羽田圭介著「滅私」

          音楽に支配される

          3/22開催、ライブイベント! 3月22日に大阪中心街のホテル|モクシー大阪本町で音楽ライブイベント「DISTRICT DAION MUSIC FEST vol.2」を企画しました。 日時:3月22日(土)18:30〜20:10 場所:モクシー大阪本町 Cafe & Bar  住所:大阪市中央区瓦町2-2-9 料金:無料 出演アーティスト: ・Kono ・怜吾 @kk_lego ・小出夏花 @kahanakoide バンドメンバー ・mereo @i_am_m

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          町田康著「入門 山頭火」

          町田康著「入門 山頭火」

          みき いちたろう著「発達性トラウマ 生きづらさの正体」

          みき いちたろう著「発達性トラウマ 生きづらさの正体」

          Music Creation Awards

          Music Creation Awards?Music Creation Awards(略してMCA)ってなに? 大阪音楽大学ミュージッククリエーション専攻が主催する音楽賞(5回目)です。 本専攻4年生の卒業制作であるセルフプロデュースアルバムを対象に審査されます。 審査員が豪華です。 余談ですが卒業生の活躍が凄いです。(つまりMCA注目です) 大阪音大ミュージッククリエーション専攻?商業音楽の世界で活躍するクリエイター、アーティストを育成する専攻です。 100年

          Music Creation Awards

          瞬間鷲掴み

          聴いた事のない音が聴きたい劇音楽をずーっと書いている。試しにJASRACで「渡邊崇」で検索してみると730曲ほど登録楽曲が出てきた。試しに「佐藤直紀」で検索してみると2666曲。桁が違う。 ところで、どれだけ曲を書いても満足する事はなく、もっと良い曲が書きたいと日々、身悶えする。 音符の組み合わせを精査するのは勿論、良い音、聴いた事のない音はどこにあるの?日夜探す事になる。 そして、聴いた事のない音色の探究へと。 楽器を一から創る名古屋に日用品を楽器に変えてしまう演奏ユ

          中村文則著「列」

          中村文則著「列」

          村上春樹著「街とその不確かな壁」

          村上春樹著「街とその不確かな壁」

          その音楽。背景に徹するか、映像と絡めて主張するか。

          分厚い方が存在感消せる映画でもTVドラマでも、最近は分厚い音を求められる事が多いです。 ハリウッドスタイルと言いますか、数百人規模のオーケストラサウンドみたいなイメージです。 リッチな映像に合わせて、音楽もリッチにという事もあると思うのですが、昔よりも映画音楽に求められるものがメロディよりも雰囲気になっているという点が大きいと思います。 意外に思えますけど、少人数の楽団よりも巨大なオーケストラの方が劇音楽としての存在感を消しやすいんです。 ソロシンガーより、100人のコ

          その音楽。背景に徹するか、映像と絡めて主張するか。