夏みかんをもらった

息子の幼友達で、地元生まれの地元育ち、地主のまっちゃんが、ゴロゴロと大きな夏みかんを持ってきてくれた。2年前に両親とも亡くなってからは、たった1人で広い家屋敷と敷地を管理している。近くの小さな神社や神様を中心に、季節ごとの行事、お祭り、地主同士の昔ながらのしきたりなどなど、よそ者には想像もできないお付き合いがたくさんあって、なかなか大変らしい。
家作も何軒か持っていて、畑も貸しているけれど、彼自身に農業経験はない。40半ばの独身男、彼の本業はいまどきのIT関連で、半分以上はリモートだと。こういう独身男女、息子の同級生には案外多いのだ。
「今年の夏みかんはいつも以上に豊作で、獲ってもとっても、まだ半分も獲りきれていない」と笑いながら、まっちゃんは玄関に一袋、どんと置いた。「姿は悪いけれど、冷蔵庫に入れずにしばらくこのままにしておいて、少し皮肌が柔らかくなったら食べ頃…」だと。
夏みかんや柿など、木になる果物の収穫は、かなりの重労働に違いない。駅までの通り道に、庭に「なる実」を植えているお宅は何軒もある。背の高いところにたわわに実っている夏みかんを、私と同世代の旦那さんが苦労して収穫しているのを目撃することも多い。何日もかけて獲り終えた夏みかんをカゴに積んで、「ご自由にお持ち下さい」と通りに出すお宅もある。柿もみかんも、獲れすぎても困るのだ。
一年前の膝負傷の後も、帯状疱疹の後も、特に息子に頼まれたわけでもないのに、まっちゃんは時々様子を見に寄ってくれる。頼もしい存在だ。
「また痩せたじゃん、ちゃんと食べてるの?」
私はお母さんらしい口調で門の外まで見送った。ありがとう。


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