焔猫 戒音-kainé-

ぽつりぽつりと物語ります。 種族名:焔猫 えんまお 個体名:戒音 かいね 人外の魔…

焔猫 戒音-kainé-

ぽつりぽつりと物語ります。 種族名:焔猫 えんまお 個体名:戒音 かいね 人外の魔性です。

最近の記事

ひとりしばい

行く手になにが待っているのかを 知るすべがあったとして 知らぬままに歩むことと 知ったうえで歩むことと 「歩む」ことの意味が変わるわけでは ないよね。 「普通なら、そこは、歩まぬことを 対比させるのではない?」 そうかもしれないけれど 歩むこと一択しかないのが、生き るということじゃないのかな。 「誰かが言ってたね。」 足もとが不安定な沼地で全力疾走 しているようなものだって? 「そうそう、それそれ」 お気に入りの喫茶店。 耳の奥に、さりげなく流れ込んで くるの

    • 頑張れました(^-^)

      • 波濤

        ゆっくり深く 胸の奥の奥に沈み込むように 深呼吸する 激しく明滅する光 身体の奥まで揺るがすような轟音 私の立つ場所は ここ まっすぐにそらにてをのばして 私の背を押す音の波を導く 共鳴するままに 空気が揺らぐ 私の立つ場所は ここ 眼を閉じていても ミエル 耳を塞いでも キコエル 轟音とさざめきと狂乱と静寂 それは 波濤 私はいなくなる それでも 私の立つ場所は ここ 迷いながら でも 確かなものを 胸の奥底から 届かない その先へ 私の中を通り

        • ひかり

          光をわけてと微笑む君が そのまま光だと 照れて言えないボクを君は笑う 意地悪で 気紛れ 我儘で 素直 今も胸の内に灯るほのかな温もり それがボクの指標になる 言えるだろうか まっすぐに君を見つめて 君こそが光だと 笑ってくれるだろうか うそばっかり と

          微笑みのわけ

          そんな約束などした覚えはないと 振り捨てればいいだけのことだ 闇に漂うその翼に託した願いを、 知らぬ、と そっぽを向けばよかっただけの 話だ どうしてそうできなかったのか 何故 言葉も無く 見つめ返したのか それこそが 問うべき 解くべき たったひとつの謎であったはず …それなのに 沈思黙考しているふりさえも もう出来ない、この刹那に どうして お前は 微笑むのだ それは 永劫の謎であり 赦されることのない絶望の化身で あったはずだろう と 眠ることを忘れたこの

          微笑みのわけ

          Burn

          ほんの少し掠れた声で 呼ぶ者がある 優しげに響くその声の底の底に なにが秘められているのか それを誰が知ろう ほんの少しだけ掠れた声で 呼ぶ者がある 胸の内に響くものは 切なる願いか それとも 諦めか 誰が知ろう 静謐のその先にあるものを 求め続ける果ての無い徒労 それでもなお 呼ぶものが たしかに ある 決して独りではないのだ、と

          眠りの果て

          この眠りの果てになにが待とうと 清々粛々 瞳を逸らさずにあることを 君は約束できるか 強くある必要も 孤高であることも 出来ないとして それでも 君は凜と立つことができるか

          うたうものたちへ

          呼吸を整えてゆっくり眼を閉じる 集中と解放を繰り返して もう一度眼を開けたときに 降りてくるなにかがあれば わたしは また歌えるだろう 痛みも哀しみも怒りも 喜びも 安らぎさえも 刹那と永遠の狭間にあって それだけで充分だと ようやくわかったよ 呼吸を整えて 抱きしめるように両手を伸ばして 触れた鍵盤の冷たさと愛おしさを この声に乗せることが いま たったひとつ できることだから わたしは 愛を奏でない わたしは 哀しみを 歌わない わたしは歌う

          うたうものたちへ

          名画「幽世の藤棚」に寄せて

          その気配は、この場所に至る前に すでに感じていたものだった。 邪まなものではない。 だが、聖なるものとも判じがたい。 強いていうのならば、異なった貌が 「同時に存在」しているかのようだ った。 誘い香を追って辿り着いた場所に あったものは… 薄紫と純白の花弁が見事に咲き競 う藤棚だった。 私は眼を見張った。 これほどの規模の藤棚はついぞ眼 にしたことはなかった。 「見事であろ?」 あまりの見事さに、心を奪われて いたものか、その声は油断してい た私を驚かせた。 「

          名画「幽世の藤棚」に寄せて

          百鬼夜行

          その手の温もりを覚えていた。 記憶のどこを探しても面影ひとつ なかったのに。 胸の内から湧き上がるこの感情は たまらないほどの懐かしさ。 大きな手のひらに触れられたとき 伸び上がるようにして、自分から 撫でられようとしていた。 魂魄は、永い永い永い旅を続けて いると誰かが言っていた。 その永い 永い 永い旅路のどこかで、私はこの 手の温もりを知り、その手の主 の「器」に触れた… そういうことなのかもしれない。 底知れぬほど深く、静かな眼差し を持つこの「主」はその背に

          百鬼の日常の一幕

          週末毎に、その街角にはいくつか の占い師の「館」が建つのだとい う話だ。 多くもない観光客を引くための姑 息な手の類いだろうと思っていた。 気紛れに任せて覗き込んでみれば 人相見、手相見、水晶玉、カード …少しでも信用を勝ち取ろうと、 様々な趣向を懲らした占い師たち が手ぐすね引いて待っている… 「相手に悪いからおやめな」 「え?」 「あれでも真剣なんだからさ」 「…あれでも」 「いいから、覗いてあるくな」 仔猫の首を押さえるような勢いで ぐいと引き戻された先には金眼銀

          百鬼の日常の一幕

          語り部の願うこと

          幾つもの海を渡った先にその場所 はあると聞いた。 宵闇と薄暮の狭間を掻い潜った その先に その場所は確かに在るのだと。 夢物語の中で聞いたのかもしれな いほど不安定で もしかしたら聞き間違いであった のかもしれないけれど 光のように 涙のように 星々が降る場所があるのだと。 「そうなんだ」 君は微笑むと、僕の肩に頭をのせ 「すこし眠るね」 と、囁いた。 君の温もりを僕は覚えていよう。 数多くの諍いがあって、僕たちの 日々は、そのすきまを埋める小さ な欠片に過ぎなかっ

          語り部の願うこと

          猫魈の独白

          いつからここにいたのか どうしてここにいたのか 自分でもわからない でも、ここに いる この瞳は闇を見通し この耳はどれほど小さな音さえも 逃さない 私は 狩人 生まれながらの 狩人 だから 護る術を知らない この 壊れそうなほど不確かで 透きとおった結晶を 護りたい そう思うのに 私は傷だらけになる 私は血まみれになる それでもいい、と笑う誰かが いつか そばに そんな果てない夢物語を 今も独りで

          探索者の目覚め

          目覚めたときに最初に見えたのは 果ての無い蒼空だった。 これが幾度目の目覚めであるのか それはわからない。 私は幾度も眠りに落ち そうして幾度も目覚める 何故なのかは、もう覚えていない 私は立ち上がり、そうして… そうして、探すのだ。 …なにを、探しているのかさえも もう覚えていない。 「探せ」という言葉が、強い願いが 私を動かす。 私は眠り、そうして目覚める。 その繰り返しが、徒労であろうと この身体が いつか 朽ち果てるとき 答えは見つかるのだろうか この

          探索者の目覚め

          とある会話

          「純粋ってなんだろうね」 不意に君はそういうと、カップを 置いた。 「子供って残酷だよね」 「…そうだね」 「あれって、純粋だから?」 「…どうだろう」 誰かの作品で読んだような気がし ていた。 創聖の天使たちは無垢そのもので それ故に堕天したのだと。 「あ。それ、読んだ気がする」 君は歌うようにその物語の続きを 呟いた。 神聖なる者は、無垢すぎるが故に 罪を犯した天使たちを罰すること がどうしても出来なかったから、 狭間の世界を産み出して、そこに 狩るモノを置いたの

          幽霊水晶

          そっと その輝きに触れてみる 幻ではないはずだと 確かめたくて 君の刺々しい  そのかなしい瞳に 隠されているはずの 優しい想いに 世界は見世物だらけで ぬくもりなどはうそっぱちで いまも この瞬間に 取り返しの付かないことばかり 起きているけれど それでも この輝きだけは 幻ではないはずだと そっと触れてみる ひんやりと指先を受け止める 硬質の痛みは たしかに ここにある だから そのずっとずっと奥には そうでもしなければ護れないような 優しい君が隠れているは